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道明寺少年の苦悩。 中編



「おいおい。お前、頭でも打ったのか??」

聞いた瞬間、途端にニヤけた表情になった修二郎。さっきまでの、張り詰めた空気は何処かに吹き飛んだようだ。

「打ってねーよ。 頭打ったとしたら親父の方だ。」

「いやいや。ぜってー嘘だ。お前の父ちゃんがそんな事するはずねえって!」

何故か、息子の俺以上に全力で親父を擁護してくれる修二郎。

昔から 家族ぐるみで付き合いのあるコイツは、俺の家族のコトも良く知っていた。

俺の髪が天パな理由も、毎日持たされる弁当のワケも。もちろん、

「あんな、お前の母さんにベタ惚れな司おじさんが浮気なんて、なんかの間違いだろそれ!」

うちの両親の 恥ずかしいくらいの仲の良さも。

「俺も最初はそう思ったんだけど…… 」

昔から、お袋一筋の親父。

何時でも何処でも誰と居ても、暇があればお袋にくっついてはウザがられ、痴話喧嘩してはまたくっついて の繰り返し。

息子の俺から見ても 外見だけは超一流の親父だけど、近寄るクソバ……もとい、女なんて全く眼中に無い。

そんな親父に限ってそんな事あるわけない。コレを見るまでは俺も確かにそう思っていた。

だが、今回ばかりは親父を庇えそうもなくなっている。

「なんだよ、証拠写真でもあんのか!?」

「……。」

煮え切らない俺の態度に、ハッキリ言えと修二郎が迫ってくる。

「……写真じゃないけど、これ、」

結局、俺が家を出る直前までケンカの真っ最中だった両親から無理矢理奪ってきたモノ。それを、制服のポケットから取り出した。

「なんだぁ? コレ?」

不思議そうにソレを受け取った修二郎。

「……コレが、なんなんだ??」

修二郎が そう言うのもムリはない。

それ自体は、ただの安っぽいリングなのだから。

「その中だよ。」

「……なかぁ?」

リングの内側に掘ってある文字。それを胡散臭そうに覗いた修二郎は、見た瞬間 目を丸くした。

「お前、コレって……!」

「それ、お袋は相当ショックだったみたい。」

「……まぁ、そりゃそうだな。」

「だよな。」

「珍しく、つくしさんが妬いてんの?」

いつも、親父がお袋を追っかけてる姿しか見ていない修二郎には 新鮮に感じるようだ。

「うん。お袋は離婚するって言ってた。」

「マジで!? やべぇじゃん!!」

「あっ、つばめちゃんは? あの2人のケンカなら、お前より つばめちゃんに任せた方が……。」


つばめは、俺の2個下の妹。

誰に似たのか、素直で明るくて誰にでも優しくて。おまけに、超絶美少女。

ちょっと天然だけど、それがまた余計に可愛い。

そんな道明寺家のアイドルは、使用人を丸め込む事はもちろん。あの意地っ張りな両親のケンカでさえ、

『パパ、ママ、ケンカしないで……。』

と つばめ がひとこと言えば、大概のことは丸く収まってしまう。

鶴の一声ならぬ、燕の一声。

一見、鶴よりかは見劣りするかもしれないが 威力は絶大。

それを知っていて、修二郎は俺に進めてきたのだ。

ああ、もちろん俺だって、そうしたかったさ。


ーーーー だけど、今回は。


「あいつは今、フランス。類さんのとこに居るよ。」

「……はぁ。打つ手無し、っか。」



頭を垂れた修二郎に はい、と返された例のリング。

それを何度か空中に投げて、また掌におさめる。


「バカ親父め……。」


バカ親父を思い浮かべ、こんな面倒臭いもの ぺしゃんこになって潰れればいいと 掌に精一杯の力を込めた。だが、シルバーがそう簡単に潰れるはずもなく、またポケットに突っ込んで、そのまま机に突っ伏した。



「…………。」



問題の 安っぽいリングに刻まれていたのは、



Tsukasa / Haruna





の文字。

どこをどうみてもペアリング。

コレを見たお袋が怒るのは至極当然の事だ。


「っつーか、一体誰なんだよ? ハルナって……。」


ーーーー 聞くな。俺のが知りてぇよ。


「知り合いに居ないのか?」




「…………居るな。」


ーーーー ガタッ!!


「マジで!?」


驚いて 椅子から飛び上がった修二郎。焦らさずに早く言えと、目が言っている。


だけど、残念。


「ザッと20人くらい。」


「………………。」


「………………。」


「……俺も、そういや居たわ。」

「な、毎年あんだけパーティしてりゃ居るっつーの。」


学生の身分で 毎年パーティに出席させられている俺達は、多分、どの他の学生よりも出会う人数が桁違い。

よっぽど珍しい名前でないと、見つけるのはほぼ困難だ。


「キリがねえっつーの……。」

「あ~あ……。」

「とりあえず、一旦帰るか。」

気づけば午後5時。

他の生徒はとっくに下校していた。

「そだな。取り敢えず帰って、親父たちの様子見てみるわ。案外 コロっと仲直りしてるかもしんねーし。」


結局 その日俺は、ひとつも授業を受けないまま帰宅した。




後編へ続く!
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