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道明寺少年の苦悩。後編



「孟坊ちゃん……?」

「なななっなんだ、タマか……。」

「どうしたんです? そんなコソ泥みたいに、庭から入るような真似をして。」

「い、いや、ちょっとな……。」


仮に、まだ痴話喧嘩していた場合。今朝の様子じゃまた巻き込まれかねないと踏んだ俺は、こっそりとテラスから邸に戻った。

その事をタマに伝えたら、大笑いされてしまった。

「大丈夫ですよ。旦那様はもうとっくにお出かけです。」

「なんだ……。」

それもそうだよな。アレでも一応 道明寺総帥 なんだから、いつまでも邸に居れるわけもないか。

俺は心底ホッとして、自分の部屋に戻った。

すると、何故かお袋が俺の部屋で寛いでいる。

「あら、お帰り。」

「た、ただいま……。 っつか、何で俺の部屋に居んの??」

ソファーに腰を掛け、優雅に1人お茶をすすっていたお袋。

「べ、別にいーでしょっ。 こんなにだだっ広い部屋なんだから、1人位居たって。」

「……まぁ、いーけど。」

にしたって、何時もは俺が帰って来ても気づかないくらい リビングで使用人達とぺちゃくちゃ喋ってるだろ。

一体何を考えてんだ? お袋のやつ……。

そのまま お袋や使用人らに勧められ、俺まで一緒にハイティーをすることになった。

「あんたさ、あたしとアイツ、どっちに付いてく?」

「……何の話し?」

「離婚の話しに決まってんじゃない!」

「離婚? 誰と誰が??」

「だから!!お父さんとお母さんのよっ!!」


ーーーー ぶはっ!


「何、マジなわけ??」

口にしていたコーヒーを、盛大に吐き出してしまった。

確かに 朝はそう言ってはいたけど……。

「あったりまえでしょ!? アイツ、浮気したんだからっ!! いい歳してなに考えてんのよっ!絶対に許してなんかやらないんだからっ!!」

話しているうちに また怒りを思い出したのか、お袋は益々ヒートアップしてきた。

「落ちつけよ。あの親父が浮気なんてあり得ないだろ?」

俺も半信半疑だが、一応言ってみる。

「あり得なくないわよっ! 現にこうやって証拠があるんだから!」

「ツトム。あんたはどうしたい!? そりゃ、お母さんはお父さんより稼ぎも少ないだろうし、ってゆーかアイツに勝てるのなんて誰が居るんだって感じだけど……。」

「今までみたいな暮らしは無理だけど、お母さん 精一杯頑張るから!あんた達が居ればそれでいい!だから、あんたとつばめ、お母さん3人で……!!」








「…………お袋?」

一気に捲くし上げた後、お袋の涙が頬をつたう。


「ごめんね。子供の前で泣くなんて、情けない……。」

「…………。」


なんだかんだ言ったって、お袋だって 親父の事が好きなんだ。

今まで 決定的な証拠がなかったからこそ、俺が思っている以上にお袋は傷ついている。


「親父に、ちゃんと聞いてみろよ。」

「……いやよ。」

「なんで?」

「お父さん モテるもの。きっと、若い子の方が良くなったのよ。だからもう良いの。」

「じゃあ、なんで泣いてんだよ。ちっとも良くないんだろ? だから泣いてんだろ??」

「だって、指輪が……。」

「良く考えてみろって。こんな安そうな指輪、親父が買うか??」

「そ、それは……。」


お袋自身も、疑問に思っていた所ではあったのだろう。お袋の目が揺らぎ始めたころ、静かに 部屋の扉が開いた。




「全くだな。」




「親父っ!!」

「っ……!」


なんて、タイミング良く現れるのか。

っつーか、何処から聞いてたんだ?


「ツトムの言う通りだ。お前な、俺がこんなちゃちな指輪、買うと思うか?? 確かに Tsukasa とは書かれてるけど、それは俺のじゃねえよ。」

「じゃあ、一体誰なのよっ!!」

さっきまで しおらしく泣いていたのが嘘のように、親父をキッと睨みつけた。

「いや、持ち主はココに居ねえ。」

「はぁ~~~??」

「おい、タマ! さっさと出て来て説明しろよっ! お前のせいだからなっ!!」

親父がそう言うと、扉の向こうから杖を持ったタマがのっそりと現れた。

「やれやれ、幾つになっても年寄りの扱い方がなっちゃいないねえ……。坊ちゃんは不法侵入みたいな真似をなさるし、旦那様は早くにご帰宅されたかと思えば、この老体を好き放題。奥様まで息子の前でベソかいて……。一体、どうなってんだい?ココんちは。」


ーーーー オイ。お前らは一体どこから聞いてたんだ。


「「いーから早く誤解を解けッ!!」」


久々に、親父と俺の声がハモった。


「仕方ないねぇ……。」

そう言って、タマはお袋の目の前まで歩いて行く。

「つくし。あたしの名前を知ってるかい?」

「は?」

「た、タマさんは……タマさんでしょ?」

「そう。じゃ、名字は?」

「え、えぇ??」


お袋は直ぐに即答する事が出来ず、なんとか思い出そうとウンウン唸り始めた。

ーーーー マジで知らねえとかアリかよ?

俺も、そういや知らねーけど。






すると、そんなに長い時間は待ち切れなかったのだろう。

我慢を知らない男が代わりに答えた。


「榛名 タマ。」


「「 !! 」」


俺とお袋は、始めて聞くその名前に直ぐにピンと来た。


「んで、タマの旦那が 榛名 阜 (はるな つかさ)。」


「「 !!!! 」」


俺とお袋の 驚いた顔を上から眺めて、面白そうに、皮肉そうに口の端を歪めた。


「分かったか? 馬鹿共め。」

「…………………………。」

「…………………………。」






と ゆ う こ と は ? ?





「も、持ち主は……、」

「さぁ?とっくの昔に天に召されてんだろ?」

「ほら、ツトム。タマにあのちゃちな指輪返してやれ。持ってんだろ。」

「あ、あぁ。うん。」

「失礼な事言うんじゃないよ!」








「……ぅあ。」


ボンッ と音がしそうなくらい、一気に茹で上がったお袋。

もちろん その様子を見逃さない親父は、さらに楽しそうにニヤニヤし始めた。

お袋はコンマ3秒で危険を察すると、すくっと立ち上がり、


「あっ、あたし今日お買い物行く日だった!!」

「きょきょきょ、今日はトイレットペーパーが安いのよ! うん。早く行かないと売り切れちゃう!」

「あ、ツトム今日は朝から色々ごめんね!お詫びに明日のお弁当は、あんたの好きなもの入れたげるからねっ!」


それじゃっ!

と、慌てて部屋を飛び出した。

もちろんコチラも、


「てめっ、待ちやがれっ!!」


と、一瞬遅れて後を追う。










残されたタマと俺は、


「……今日は、厄日か?」

「苦労が耐えませんねえ。」


なんて、お互いに苦笑い。





あの2人の事だから 明日もまたケンカしてるかもしれない。

ウンザリするし呆れもするけど、結局 俺はそんな両親を嫌いにはなれないから。



だから、明日は修二郎に盛大に笑われて来よう。







『お前んち、やっぱ面白いわ。』って。









おわり。
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