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たいせつなもの 6

『司は、貴方と家を出ると言ったそうね?』

『……。』

魔女は何処からそれを聞いたのか、唐突にあたしに告げた。

確かに 道明寺は家を出ると言ってくれた。

家を出なきゃ、あたしを守れないからという理由で。

だけど そこまで知っているのなら、あたしが断わったという事も知っている筈だ。

もちろんそれは、道明寺が嫌いだとかそういう事では無い。

『貴方は司の事をどう思っているのかしら?』

そんな事を言われてもわかる訳がない。

わからないから、期間限定なんていう条件までつけて、なんともぎこちない交際を続けている。

それも 後から考えれば、アイツとの未来を考えることが怖くて、目を逸らしていただけだったけど。

『あたしは、道明寺が……』

自分でも答えがわからないまま、口にしていた。

『……私と勝負をしましょう。』

聞いておいて、あたしに最後まで言わせない魔女は、鋭い視線をあたしに浴びせた。













無理矢理奪われた温もりが静かに離れていく。

心臓の音がうるさい。

抱きすくめられたスーツから、直接懐かしいコロンの匂いがして 胸が苦しくなる。

力が抜けて、身動きの出来ないあたし。道明寺は眉を顰めて、ポツリと呟いた。

「悪りぃ……」

「……?」

「俺まだ、お前がめちゃくちゃ好きだ。」

ーーーー !!

「忘れらんねえよ。お前がいなくちゃ生きてる意味ねえ。金も地位も名誉もなんも要らねえから、ただ、お前だけが欲しい。」


なんで?


「なあ、好きだ。お前じゃなくちゃだめなんだよ……」

「……。」


何でこの男は、いつもこうなんだろう。


「俺が幸せにしてやるから……」

バカみたいに真っ直ぐで、人の気持ちなんかちっとも考えちゃいない。

「俺を、選んでくれ」

真っ直ぐな瞳で見つめないで。

「まきの……」

やめて



「すげえ、会いたかった。」



心が、


震える。














「明日連絡する、今日は帰れ。」

アパートの前に着くと 道明寺は運転手にそう告げた。

「お前の部屋は?」

「え?」

古びた2階建てのアパートの前。

取り残されたあたしと道明寺の手は何故か繋がれていて、怒ったような道明寺の目と目が合う。

「上? 下?」

「え? えと、二階……。」

道明寺、なんか怒ってる?

なんか怖い……

「何号室だよ。」

「に、204号し……」

「上だな。」

あたしが言い切る前に腕を引っ張っり、ところどころ錆びている階段をカンカンカンと二人分の音を立てる。

「ここか?」

あっと言う間に部屋の前まで着くと、早く開けろと口には出さないものの 道明寺の目がそう言っていた。

あたしは道明寺の真剣な瞳がなんだか怖くて、素直にそれに従う。

カチャリと鍵が開いた瞬間、ドアノブを握っていた手の上に大きな手が重なった。

すぐに扉が開かれ、吸い込まれるように閉じられたかと思うと、息つく暇もなく再び唇が塞がれる。

「……っ!?」

ぬるり と。

柔らかい何かが口の中に入って来て、頭がおかしくなりそうなキスにほだされる。

長い、ながいキス。

道明寺の高い体温を直で感じる。

服越しに伝わる体温なんか比べものにならないくらい、アツくて。

「うっ……!」

段々荒くなってきたふたりの吐息に、くちゅっ という水音が奏でられる。

唇から頬、首筋へと伝う道明寺の唇と舌が生き物みたいに這い回る。

ドクドクと、今にも爆発しそうな心臓が苦しくて、 足の力が抜け、忙しなく靴を脱いだ道明寺と一緒に床に倒れこんだ。






「…………?」

押し倒され、あたしに馬乗りになった状態の道明寺の動きが不意に止まった。

「ど、道明寺っ?」

返事はなくて、恐ろしいほど強い眼差しをあたしに向けている。

「なあ、牧野お前……」

「?」

「俺が好きだよな?」

「っへえぇっ!?」

何を言い出すんだコイツッッ!?

「……色気のねぇ声出すな。」

「…………。」

「牧野?」

「…………なによ。」

「好きだろ、俺のこと。」

「そ、そんな訳ないでしょっ。」

「ウソつくな。」

「嘘じゃない! なんであたしが嘘つかなきゃいけないのよ!」

「だから、ウソつくんじゃねえっつってんだろ!」

その後も、ついてるついてないの押し問答。

これじゃキリがないと、溜息をひとつ落としたあたしは

「…………なんで、そう思うの?」

毅然とした態度で、道明寺に問う。

「…………。」

すると道明寺は熱っぽい瞳であたしを見つめ、鼻が触れそうな位に眼前に近づいて来た。




「だってよ、お前の顔さっきから」




吸い込まれそうな程綺麗な瞳から目がそらせない。





「俺が、好きだって言ってる。」







それから、3度目の温もりが奪われた。
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