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Wish〈2〉完

食後に2人で街中を歩いていると、あたしが目を奪われたショーウィンドウ。

視線を送ったのなんてほんの一瞬なのに、道明寺はそれに気付いていた。

結局、強引にアレやコレやと店ごと購入しそうな道明寺を必死に宥めて、ひとつだけ気に入ったアクセサリーを買おうとしたところでレジ前で掻っ攫われてしまい、あたしは何故だかモヤモヤした気持ちを抱える。

そりゃもちろん、嬉しくない訳じゃないけど……

「…………あのう。」

何か違う。

「なに」

「今日はあんたの誕生日なのに、さっきから、なんであたしが好きなお店ばっか行くの?」

今日だけは、あたしがお祝いしたかったのに。

「今日は俺の言うこと、なんでも言うこと聞くんだろ。」

いや、あたしが渡したのはあくまで ” お手伝い券 ” であって、言う事聞かす券じゃないんですけど……。

でも、この際そんなのどうでもいい。

「っそうだよ?今日はあんたの誕生日だから、あんたの好きなこと…」

「だからだよ。」

「?」

「俺は地位も名誉も美しさも大概のモンは持ってるけど、自分の女のワガママも 普段は聞いてやれねーからな。」

「…………。」

「俺はぶっちゃけ、2人で居れたら家でも外でも何処でもいーけどよ。お前は違うだろ? 俺のせいで我慢させちまうのは嫌なんだよ。」

「だから今日は思いっきり俺に甘えろ。いつもなら遠慮して言えねーこと なんでも言え。お前の我儘を叶えられんのは、俺だけの特権だろ?」

「…………駄目か?」

不安そうな瞳で、だけど真っ直ぐに向けられる視線と愛情に胸が締め付けられる。

なんて愛おしい存在なんだろう。

「……ダメじゃ、ないよ。すごく嬉しい。でもそれじゃ、あんたは誕生日に我儘言えないじゃん。」

「俺?」

司は意外そうに目を見開く。

が。

「心配すんな。今日が終われば俺の番だからよ。」

「は……?」

「だから、今日以外は俺の日。」

「なにそれっ!?」

今度はつくしが目を剥いた。

「だから明日からは俺の番。せーぜー今日1日、1年分精一杯使っとけよ?」

「うぅぅっ、それってすっごい不公平じゃないの!?」

「そりゃ、相手が俺様だから仕方ねえ。世の中は不公平で出来てんだよ。」

「~~~反論出来ないのがムカつくわっ!バカの癖にッ!横暴!このジャイアン!」

「……ジャイアン??」

「じゃあ今日は思いっきり楽しんでやる!!アンタの財布空っぽにしてやるんだからっ!」

「クッ……上等。出来るもんならやってみな。」

「おう、やったるわよ!!」


ーーーー なんて、嘘。

道明寺は今日だけじゃなくて、いつもいつもあたしの事を考えてくれる。

ぶっきらぼうだったり、解りにくかったりもするけど、気付けた時にはその何倍にもなって返って来て、あたしの胸を暖かくさせてくれるんだ。





「牧野? 酔ってんのか?」

「……ん~?」

「ったく、俺のサイフ空っぽにすんじゃなかったのか? まだ全然飲んでねぇし、お前の買い物だってほとんどしてねーのによ……。」

さっきから、何やらぶつぶつと文句を垂れている道明寺。

ってゆうか自分で言っといてなんだけど、一日であんたの財布空っぽに出来る人が居るなら見てみたいよあたしゃ。

「ぜ~んぜん。酔ってな~いよぅ」

「ったく、お前なぁ……。」

その後、夜まで街をブラブラして、夜ご飯食べてお酒も軽く飲んで、あたしの希望により道明寺邸に戻って来た。

明日もお休みだし、軽くシャワーを浴びてまた飲んで。

「ほれ、水。」

とうとうグダグダに酔っ払って、ソファーの上で体育座りするあたしの側で、甲斐甲斐しく世話をしてくれている道明寺の服を引っ張って隣に座らせた。

「んだよ、酔っ払い。」

「ね。ワガママ、言ってい?」

右側に座っている道明寺を見つめて聞いた。

「おう。なんでも言え。」

優しく笑ってくれるのが嬉しくて、腕にしがみついて頭を肩に乗せる。

「あたしだって、道明寺が居るなら何処でもいいんだよ?」

ーーーー あぁ、やばい。

今のあたし、頭のネジが飛んでいっちゃってる。

「お洒落な洋服もアクセサリーも、なぁんにもいらない。道明寺司っていう1人の男が、あたしの隣にずっと居てくれれば それだけで幸せだから。」

「まきの……」

司がソファに片膝を乗り上げ、身を屈めてつくしを抱き寄せる。

「……んんっ、」

顔を傾けて唇を重ね、そのまま体重をかけてつくしの上に覆いかぶさり、角度をかえて何度も啄ばむ。

唇を首筋に移そうとしたところで、つくしが何か呟いた。

「今、タイムセール……」

「はっ??」

いい雰囲気だったのに、突拍子もない言葉が聞こえてきて、司は耳を疑う。

「あれぇ? カードは~」

押し倒された身体を起こし、徐にカードを探し始める。

「……何探してんだ?」

「ん~。だからカード~。」

……だから、なんのカードだよ。

まさか、スーパーの夢でも見ているのかと青筋を立てて、酔っ払いの言動に腹立たしいやら呆れるやら。

今日は諦めて大人しく寝かそう。
そう思うのに、この女はなかなか大人しくならなくて。

「あっ!あったあったー!」

「……てめ。だから寝ぼけてんじゃ」

「道明寺っ!」

ぺシーン!

「ってえ!」

突然頭を叩かれた。

いきなり何しやがるこの酔っ払い…と続けようとしたが、直後につくしが首に抱きついてきて、司は言葉を失う。

「まき……?」

「今日のアンタ、すっごくいい男だった!だから今日は、このカードでなんでも叶えてあげる……」

「!!!!」

司のバスローブからのぞくたくましい胸板に素早くキスを落とし、言外につくしが何を言いたいのか悟った司は、真っ赤な顔で硬直する。

「……ねぇ、聞いてる?タイムセール終わっちゃうよ?」

「!!」

どこかに頭が飛んでいってしまった司を不安そうな表情で見上げるつくし。

いつもと違い、自分が誘われている事実に自然と口角が上がってくる。

「……そりゃ、早くしねーとな。」

不敵に笑い、自身のバスローブをガバッと肌蹴させる。

「……うん、早くして?」

「!!!!」

潤んだ瞳と上気した頬。更には上目遣いというトリプルコンボを不意打ちで喰らってしまい、司は思わず尻込みしてしまう。


ーーーー こっ、こいつマジ犯罪!!


思わぬプレゼント攻撃に 司はつくしのバスローブを生き生きと剥ぎ、美味しそうな獲物を前にしてこう思うのであった。




誕生日、万歳。




《 Fin 》
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