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ライオン #40

「先ずは、その良くも悪くもない平凡なスタイルからだ。」

日本に着いて数時間後、本格的にF3プロデュースの付け焼き刃大作戦が始まっていた。

この忙しい三人を捕まえて指導してもらえるなんて、あたしは本当に恵まれていると思う。思うけど……

「平凡で悪かったわねっ!」

「てめぇら、俺に喧嘩売ってんのかっ!」

「ま、牧野落ちつけっ! 司もっ!」

いきなり不躾な事を宣う総二郎に、つくしと司は食ってかかる。が、いつも通りに仲裁を買ってでるあきらに宥められた。

「いってえな! お前らの為に言ってやってんだろうが!!」

しかしそれでも何発かは食らってしまったようで、少し赤くなった顎を摩りながら ムッとして総二郎は2人を睨みつける。

「まぁまぁ、総二郎。牧野はともかく、司はアバタもえくぼってやつが多分にあるんだからよ。今の牧野が微妙だなんてそんなストレートに言っても不毛な争いになるだけだろ?な?」

「……まぁ、それもそうだな。」

「…………。」

この時、つくしが2人に殺意を覚えたのは言うまでもない。








「ーーで。牧野、司は?」

「うるさいから西田さんに預けた。」

「……ますます尻に敷かれてんな。」

「西田は託児所かよ。」

その真相は、香港に行っていた間の仕事が溜まっていると事前に聞いていたつくしが、これ幸いとばかりに西田に連絡を取り、あえなく司は御用となったというものだったが。

「とにかくだ、牧野!」

「なっ、なによ?」

「出逢った高校生の頃に比べりゃ、今のお前はそこら辺のお嬢に見えなくもない。」

「うんうん。司やお前の小さな努力の積み重ねもあるんだろうが、一流のモンに触れても物怖じしなくなったしな。昔、司の誕生日パーティーで めちゃくちゃなピアノ演奏した奴とは誰も思わねえだろ。」

「……それって、褒めてんの?貶してんの?」

「だがな!本物のお嬢ってやつは更にその上を行く。それは、自分がどう見られているかって事を常に意識して、磨き続けてるからだ。」

「外見ばっかな奴も多いが、そんなのは見る人間が見たらすぐ分かる。」

「……うん、そうだよね。」

たとえばそれは、椿や静やあやののような人物だろうとつくしは頷いた。

「だからとりあえず、お前うちに来い!」

「なっ!? なんで西門さんちにっ!」

「そりゃうちは、躾のプロだからな。」


ーーーー 西門家は、茶道の名門。


他のF3もお坊ちゃまなだけあって非の打ち所がないけど、確かに、日頃から和服着ちゃう西門さんは日本式のマナーについて師事するのにこれ以上ない人選だ。

でも、

「…………下半身の躾もしてもらったらよかったのに。」

つくしの呟きは、総二郎に届く事はなかった。


*****


「ゔぅ。もう、帰りたい……。」


思わずつくしの口から漏れ出た本音。

見渡す限り、人・人・人……

いくら口に飲み込んでも飲み込み切れない数の人が居た。

「ちゃ、ちゃっちゃと終わらせて帰ろうっ!うん!ファイトよ、つくしっ!!」

自分を励ます為に、あえて口に出して自身を振るい立たせる。

「ドレスでなんつーことしてんだよ……。」

「…………。」

「~~~♪」

「……ッ!……ッッ!」

そんな光景は何度も見てきた男達は、ある者は呆れ、ある者は諦め、ある者は他人の振りをし、またある者は腹を抱え呼吸困難に陥っていた。

男達がそう言うのも無理はない。

かれこれ、数十分はこうしているのだから。

「だ、だって! あたしはアンタ達みたいにタワシの心臓じゃないの!これから笑い者にされるかもしれないんだから、心の準備ってやつが……!」

「こんな所でラジオ体操してる今のお前は、既に周囲の笑いものになってるがな。それに、ラジオ体操は精神統一の儀式じゃなくて ただの準備運動だ。」

「お前こそ、タワシの心臓だろ?」

「プッ!」

「もう花沢類っ!いつまでも笑ってんじゃないよっ!」

「……っ! ハ、ハラいてえ!」

「さ、牧野。行って来い。これが出来たら俺等の卒業試験は合格だ。」

「……うん!行って来るね!」

ポンと肩を押されたのをきっかけに、気持ちを切り替える。

今日は、F3に教えて貰った事を最大限に活かせるかどうかの最終確認日だ。

5日間と短い間だったけど、あたしなりに精一杯頑張って覚えた。

3人とも寝る暇ないくらい忙しい筈なのに、時間を割いてあたしにつきあってくれたのだから、その期待に応えたい。

もしこれに合格出来なくても、もう一度同じ事をやる時間はない。

だから、全力でやろう。








「初めまして、牧野つくしと申します。」

「君は……?」

いきなり話し掛けたあたしに戸惑いつつも、紳士に受け答えしてくれる男性。

あたしもこの人が誰だか全く分からない。

けど、これこそがあたしに与えられたミッションなのだ。

『このパーティに参加してる奴と適当に会話してきて、会場全体の人間関係を把握して来い。大体でいーから。』

『えっ!?ひ、ひとりで!?無理無理無理っ!』

ザッと見ただけでも、200人は居そうなパーティなのに!

『最初はビビるのは無理ねーが、いつまでもキョロキョロしてっと不審者扱いで誰にも相手して貰えねーからな?』

『今はまだ司や俺たちが庇ってやれるけど、司と結婚したらお前が司の代理でパーティ出席しなきゃなんねーこともザラにあるんだぜ? 今のうちに味方つけとかねーと。』

『司と一緒に居たいなら、これは避けて通れねえ。一人でどれだけ出来るのか、自分の力を見極めて戦ってこい。』

『牧野、要はハッタリだよ。わからなくても毅然とした態度で対応するんだ。』

『…………うん、わかった!』


三人の想いを無駄にしたくはない。

目の前にある入り口の奥には 満員電車並みの人集りがあって、すごく逃げたくなるけど、これを乗り越えられたら……ううん、乗り越えなきゃ。



いざ!勝負!!


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