fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

たいせつなもの 13

「んっ……?」

目が覚めたら、いつもの朝だった。

ただ違うのは、隣には道明寺が居て……

ーーーー ってなんで!?

てか、コイツ!ち、近い!!

なんでくっついて寝てるの!!

目が覚めたあたしが一番最初に見たもの。

それは、向かい合わせで寝ている道明寺の寝顔だった。

「ちょっ、……!……ッ!」

ガッツリ巻きついている腕を何とか引き剥がそうと、あたしが一人でもんどりうっている間に、道明寺も目を覚ましてしまったみたいで、

「………まきの?」

さりげなく距離を取ろうとすると、逆に強く抱き込まれてしまった。

「道明寺、なんでここに……?」

「会いたかった。やっと、会えた。」

肩口に、道明寺の顔が埋められる。

コロンの匂いと、あたしを求めるその声が麻薬の様に甘くて、酔わされてしまいそうな自分がいる。

これじゃ駄目だ。

静かに腕を押すと、意外にも道明寺は解放してくれた。

「牧野? どうした?」

……ゴクッ。

まともに顔を見て喋れそうもない。

「あの、ど……」

” 道明寺、話があるの ”

そう言おうとしたのに、

「また、俺から離れようって?」

「……!!」

驚きで、声が出なかった。

「牧野、お前は一生俺から離れらんねえ。そんな事は許さねえ。」

力の入った指先で顎を捕まえられ、上を向かされて目線が交わると、道明寺が静かに怒っているのがわかった。

なんで、わかってしまったんだろう。

あんたから離れる。

確かにあたしはそう言おうとした。

「牧野、お前は何に怯えてんだ?」

「……。」

「言いたくなきゃ言わなくていいけどよ、俺から逃げられるなんて思うなよ?」

あたしは、道明寺が好きだ。

好きだけど、どうしても好きだけど、

「だって……」

「牧野?」

「またあんたに、迷惑掛けちゃう。」

「あ?」

「あたし、アンタのお母さんと約束したの。二度と道明寺とは関わりを持たないって。」

「なっ、」

「でもその約束も破っちゃった。しかもアンタとこんなことになって、嘘つきもいいとこだよ。」

「……お前は悪くねえっ! 俺がお前に会いたかったんだ!俺がお前を好きで、好き過ぎて、諦められなかったんだよ!」

「…………。」

「第一、俺達はもうハタチ超えた成人だ!今更ババァ達に何か言われる謂れもねえ。確かに、あの時は俺も口だけのガキで、お前を守ってやれなかったけど、今ならお前一人くらいどうとでも守ってやれる。」

「……どうみょうじ。」

「だから、もう一度俺にチャンスをくれ。今度こそ、お前を守ってみせるから……!」

ベッドに縫い付けられた手に力が篭る。

「……もう、勝手に居なくなるな。」

震えた声に驚いて、道明寺を見上げると、焦っている様な、今にも泣きそうな、そんな表情をしていた。

ーーーー ごめん。

あんたにそんな顔させたいわけじゃなかったのに。

「お前も、俺が好きだよな?」


どうしよう

幸せにしたい。

この男を。


「……うん、好き。」


ほら、たった一言で。

こんなに嬉しそうな顔してくれる男、他に居ない。



きつく抱かれた胸の中で想った。



神様。


もう一度、あたしにチャンスをくれますか?








「ご飯、作るけど食べる?」

「おう!」

無邪気に笑う笑顔に、胸がキュンと疼く。

道明寺の事は好きだ。

だけど、守られてばかりで何もない今のあたしが、道明寺の隣に居てもいいのだろうか。

昨日の去り際の、滋さんの言葉を思い出す。

『司と、幸せになるんだよ。』

笑顔で、言ってくれた。

でも今のあたしに、そんな資格があるの?

「牧野? どっか痛むのか?」

「……え?」

「そういや、昨日も具合悪かったんだろ? わりぃ、さっき手加減出来なかったかも知んねぇ。今もまだ少し、顔色が悪いな……」

コツン。

「……っっ!?」

「んー。熱はねえなあ。」

重なったおデコに、鼻先が付く寸前まで間近に迫った道明寺の顔。

ーーーー し、心臓に悪い。

「ったく、心臓にわりぃ。」

ドキッ!

「えっ、なんで!?」

「……なんでじゃねーよ。お前は昔っから無茶ばっかしやがるからな。またゴチャゴチャ考え……ん?なんか顔赤くね?」

「き、気のせいだよ。大丈夫大丈夫!」

「本当か?」

「ほほ、ほんとほんと。」

びっくりした。一瞬、また口に出しちゃったのかと思った。

「……ねえ、道明寺。」

「ん?」

「今日、仕事終わってから、あんたの家に行っても良い?」

「……そりゃ良いに決まってるけど、いきなりどうした?」

「ん、ちょっとね。」

「???」



******


急いで仕事を終わらせたあたしは、電車で道明寺家に向かっていた。

『話がしたい。』

そう考えて。

あの日を繰り返さないために。

今更だけど、道明寺のお母さんにはちゃんと聞いて貰いたい。

謝罪と誓いを。

返って来るはずのない言葉でも、伝えなきゃいけない気がしたんだ。


「いらっしゃい。坊ちゃんはもう少し掛かるようだよ。」

大きな玄関先で告げると、いつものように出迎えてくれたタマさん。

「あの、お線香上げさせて貰いたいんですけどいいですか?」

「……奥様に?」

「はい。」

静かに驚いたタマさんは、何も聞かずに案内をしてくれる。

正直、このお屋敷は広過ぎて 何処がどこだかわからないので助かった。

「タマさんは、もう身体の方は大丈夫なんですか?」

「……年寄り扱いすんじゃないよ。確かに若い子と同じ様には動けなくなっちまったけどね。こうして普通に歩く分には問題ないさ。」

「……良かった。」

「さ、ここだよ、入りな。」

「……!」

コクッと頷いて、ドアノブに手を掛けた。







「牧野は?」

「牧野様でしたら2時間前程にいらっしゃいまして……」

「で、今どこに居るんだ?」

「ええ、それが……」

「?」

使用人が微妙な顔をして俺に教えたのは、仏間だった。

なんで牧野がそんなところに?

湧き上がる疑問をそのままに、俺も仏間へと向かう。

ガチャ……

「って、居ねーじゃん。」

だが確かに、ここには来たのだろう。

先程まで焚かれていたであろう線香の香りがそこかしこに漂っていて、その中に、僅かにあいつの匂いがした。

パタパタパタ……

「道明寺、お帰りなさいっ!」

「おう。ただいま。」

リビングに居た牧野が、俺を見るなり笑顔で駆け寄って来る。

……何だこれ。

すっげえ、幸せ。

「イイコにしてたかよ。」

「あ、もうっ、子供じゃないんだから!」

牧野の頭をグシャグシャにして遊んでたら、頬を膨らませ拗ねて睨んできた。

けど全然怖くねえ。

むしろかわいい。可愛い過ぎるぞ牧野。

「お前、メシまだ?」

「あ、うん。あのね、使用人の皆さんが先にどうぞって勧めてくれたんだけど、アンタと一緒に食べたいなって思って待ってた。」

ズキューーン!

「……ッ!////」

この女はッ!

「?? 道明寺?」

「……ま、食うか。」

「うんっ!」

その後、出来ればお前も喰いたい。

そんなことを考えて席に着いた俺。

数時間後、

あんなことが起きるとも知らずに。
スポンサーサイト



27 comments

非公開コメント

0 trackbacks

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)