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記憶喪失物語。#12

「わぁっ!」

「お似合いですわ!」

「可愛らしいこと!」

「牧野さまのためにあつらえたようにサイズもピッタリですね!」






ーーーーほんとかよ‥‥。




いまいち信じられない誉め言葉の嵐にたじろぎながらも、無理矢理着替えさせられたドレスのデザインに目をやった。



「‥‥‥すっごぉい。」


思わず感嘆の溜め息と共に出た言葉。




至るところにちりばめられた、華奢な宝石。

歩く度に光りに反射して、きらきら
と輝いて。

嫌味のない程度にあしらわれた珍しい青薔薇は、すれ違う者の目を引くだろう。




「似合ってんじゃん。」


メイクも着替えも終わらせたつくしの背後に、いつの間にか男が立っていた。


「道明寺‥‥‥。」



「そのドレス、よく似合ってる。」


「!」


優しく微笑まれたつくしは、一気に顔が真っ赤になる。


「あ‥‥りがと。」


なんだか心がくすぐったい。声も小さくなってしまう。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥クッ。」

「な、なによ!」

「いや‥‥、喧嘩してる時はあんなに目ぇギラつかせて生き生きしてんのに。」

「ちょっと褒めただけでしゅーんてなんだな。」

「フツー逆じゃね?」

「‥‥‥悪かったね。」

「変な女。」

何がそんなに楽しいのか分からないけど、くつくつと笑い続ける道明寺。

「言っとくけど、アンタには負けるから。」

「あ?何言ってんだ?」

「この俺に勝てるやつなんか、この世にいるわけねーだろ。」

「‥‥‥‥‥左様でございますか。」



ーーーーもう、どうでもいいっす。



いまいち噛み合ってない会話を交わしながら、着いた場所は撮影所。


「うわぁ‥‥‥凄い!」


撮影所のセットは、一面真っ白な羽根に包まれていて雲の上みたいだった。

「スゴい、スゴい!!」

あまりにも可愛くて、あたしはちょっと興奮して道明寺の腕を引っ張って駆け寄った。





「すごい可愛い!」

目をきらきらさせて、俺の服の裾掴んで、こっち向いて屈託なく笑う牧野はすっげぇかわいい。

「ね、ね。これなにで出来てんのかな?」

「さーな。」

多分、庶民はびっくりする額だろうが、それを言ったらこの笑顔が曇りそうだなと思って知らないフリをした。

お前はただそのまま、ふわふわ~♪とか言って笑ってりゃいいんだ。うん。



「んっ!?」

「‥‥あんたさっき、そんな服きてたっけ。」

セットからようやく目を話した牧野。

俺の衣装に少しびっくりしてた。


‥‥‥‥気付くの遅過ぎねえか?


******









「つくしちゃーん、リラックス、リラックス~。」



ーーーー無理です!!


‥‥‥‥なんで、こんな事に?


カメラマンの出川さんに今日何回目かの゛リラックス゛を言わせたあたしは、全然゛リラックス゛出来ないでいる。

「お前、顔ひきつってんぞ。」

「ひきつりもするわよ!なんで!あたしが!モデルなんかしなきゃなんないのよぉ~~!!」

もう、半泣き状態のあたし。

「そりゃ、アレだろ。」

「あれって何!」

思わずケンカ腰になる。

「俺と類が、撮影した写真が使えなかったから取り直してんだろ。」

「あんた達のせいじゃん!」

「‥‥ん?あんた達、撮影終わってちゃんと帰って来たじゃないの。」

「‥‥ほれ。」

そういって、手渡された写真。


ーーーーそこには。



「‥‥‥あんた達、何してんのよ。」

「あ?それはカメラマンの腕が悪ィんだよ。」

「‥‥‥‥‥‥。」



ーーーーもう、呆れて声も出ない。




写真に写っていたのは、ひたすら仏頂面の道明寺と常にカメラから背を向けている花沢類。

中には、真っ暗な写真もあった。

「何これ。なんで、真っ暗なの?失敗?」

そう言うと司が写真を覗き込む。

「あ。」

「何?」

一瞬、道明寺の顔が"ヤバイ"って言ってた。

あたしは道明寺を睨んで、無言で続きを要求した。


「‥‥‥それは、あまりにもカメラマンが下手クソだから手で隠して撮影終了させてやったんだ。」


ーーーーオイオイオイオイ‥‥‥。



『あの問題児二人がペアなんて、こっちが生きてる心地しねえんだけど。』


『何が起こっても不思議じゃねえ。』



うん、そういえばそんなこと言ってた。

確かに言ってた。

そして、あたしも否定出来なかったんだよたしか。


「‥‥で、何であたしも一緒なの。」

「姉ちゃんが、お前にピッタリなドレス作ったから着たとこ見たいって。」

「‥‥‥‥‥左様でございますか。」



******



結局、道明寺とケンカしてる間に撮影終了の合図が出た。


「アレで良かったの?」

家に帰る途中、不安になって道明寺に聞いてみた。

「何が。」

「写真撮影に決まってんでしょ!」

「あぁ‥‥、上出来だろ。」

「上出来って‥‥ケンカしてただけじゃん。」

「いいんだよあれで。」

「二人とも、髪ボサボサでなんかの雑誌載って?」

「おう、二人とも傷だらけでオッケーだ。」

「ぷっ、何それ!」


明るく笑い出した牧野を見てたら胸が暖けぇモンでいっぱいになった。




やっぱ、コイツだ。


俺の全てを満たしてくれるのは。















「ちゅ。」










気づいた時には、腕掴んで振り向いた牧野にキスしてた。
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