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たいせつなもの 15〈完〉


ーーーー 壊れちゃいそうだった あたしのココロ。


もう 嘘はつけなかった。

自分にも、

道明寺にも。


『後で、道明寺に全て話します。もう逃げません。』


仏壇の前でそう伝えて、腹を括った。

ちゃんとしよう。

道明寺に全て話して、謝って。

それでも、自分勝手なあたしをアイツが許してくれると言うのなら、あたしの持てる全てで、アイツを幸せにしよう。

これが最後になるかもしれないと思うと、自分でも驚くくらい 素直になれた。





道明寺を連れ、再度訪れた仏間。

中途半端な覚悟で道明寺に向き合っていたせいで、あたしが引起こしてしまった悲しい雨の日の記憶。

置いていけなかった土星のネックレス。

置いていかなきゃいけなかったのに、咄嗟に手に取ってしまっていて、我に返った時はもう返す機会を失ってしまっていた。

結局 あたしは逃げた。

でも、たいせつだったの。

道明寺がくれた、優しさも、笑顔も、温もりも、なにもかもが。

宝物みたいに、このネックレスに負けないくらいキラキラして、嫌な事なんて毎日の様にあった筈なのに、それさえ霞んじゃうくらい幸せな日々だった。

苦しかった。

道明寺を傷つけてしまった事。

好きだった。

道明寺より好きになれる人なんかいなかったよ。

好きだよ。

ずっと、好きだったの。

忘れる事なんて出来ない。

道明寺を誰よりも幸せにしたい。

たいせつにしたい。

この気持ちが 愛だという事に、

何度も遠回りしてやっと気づいたの。



*********



「道明寺なんて嫌いだーーー!!」



花嫁の控え室から聞こえて来たのは、このおめでたい場所には到底似つかわしくない悲痛な叫び声だった。

『どーせいつもの痴話喧嘩だろ』

『そそ。どーせ最後にはイチャつき出すんだからよ、類も行こーぜ』

『ん。 じゃあね司』

と、三人の親友にも匙を投げられてしまったのは5分前の事。

それよりも先に、式場に走って行ってしまった女共(+和也)。


ーーー それでもダチかてめえらッッ!!!!


友達甲斐のない自由な人々にイラつきを覚えた司だが、その人々がここにいたら 司にだけには言われたくないと思ったことだろう。

「わ、悪かったって! 俺だってまさかお前が、ババアが死んでると思ってるなんて知らなかったんだからな!」

「だってっ!た、タマさんが、タマさんがぁ~っ!」

「あ? タマ?」

「道明寺のお父さんとお母さんが刺されたって!だから、道明寺は海外行って、倒れるかもってタマさんが心配で!」

「???」

「坊ちゃんは、苦労して、目が死んでるって、助けろってタマさんが!!」

「坊ちゃん言うな。っつーか、泣くな!落ちつけ!」

「…………グスッ」

「まぁ、意味はわかんねーけど、お前の言いたい事はなんとなくわかった」

「とりあえず、親父もお袋も死んでねえ。刺されたのは本当だけど、死ぬ程じゃねえよ。俺が海外行ってたのも、親父が死んだからじゃなくて、ただ単に後継者として勉強しに行っただけだしな」

ーーーー 真実は、つくしがいなくなり手に負えなくなった我が子を引き寄せた事の理由が多分にあったが、今は敢えて言わなくても良いだろう。

「でもでも、タマさんが、刺された時は酷い有り様だったって……」

「ああ、そりゃ親父にのされた犯人の事だな。全身複雑骨折だってよ」

「……さすがラオウ」

ーーーー じゃなくて!!

「じゃ、じゃあ……みんな死んでない? 道明寺はひとりぼっちじゃないの?」

「だからそーだって。っつーか、人を寂しい奴みてーに言うな!」

「じゃあ、寂しくなかったの?」

「はぁ……?」

呆れたみたいな顔であたしを見て来たけど、本心からなのか 強がりなのかは分からない。

すると、ジッと見つめていたあたしに 居心地悪そうにした道明寺は、ポツポツと話し始めた。

「寂しいもなにも…… 俺は元々あいつら以外とはあんま関わりなかったし。それこそガキの頃から1人は慣れてんだ。寂しいとかそんな気持ちとっくに麻痺してたんだよ。お前と出逢うまではな」

「え……?」

ポカンとしてしまったあたしに、道明寺がゆっくりと近づいてくる。

「お前が居なくなって、スゲー寂しかった」

「……うん」

抱き締められた腕の中。こんなに時間が経っても懐かしさを感じさせてくれる今も変わらないコロンの香り。

「お前にもう会えないかもしれないと思ったら、気が狂いそうでよ。家の中ぶっ壊して回ってたら、姉貴にバレてぶっとばされた」

「ぶっ」

想像したら、笑ってしまった。

「ゲンキョーのお前が笑ってんじゃねえ」

「ご、ごめん」

「なあ、俺が寂しいって言ったら お前はずっと傍に居てくれるか?」

「……うん。いいよ」

「言ったな!? もう二度と俺の前から逃げようだなんて思うなよ? 逃げたら今度こそ部屋の中に括り付けるからな!」

「はいはい。」

「……あ。そういやお前、ババアとした約束ってなんだったんだよ?」

「……あ~ははは。うん。」

「うんじゃねえっ!言えよ!」

「まぁそれは……後々ね」

「てめぇ、この後に及んでまだ言うか!? 誤魔化そうったってそうはいかねえ! 絶対吐かせてやるからなっ!」

「げっ、怖いこと言わないでよ!」


ーーーーコンコンコン。


「あっ、ほら! アンタは先に行かないと!」

「……覚えてろよ」

渋々、嫌そうに出て行く司に笑みが零れる。

「あ、道明寺ッ!」

「……何だよ」

「耳貸して」












「おまっ……!////」






あたしがアンタを、幸せにしてあげる。





『幸せにしてくれたから、そのお礼』







ー FIN ー
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