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未来の先に見つけたものは 3

ーーーー 牧野 つくし、26歳。

英徳学園高等部卒業後、都内の国立大学 経済学部へ進学。

卒業後は道明寺HDへ就職し、営業企画部へ配属。

営業企画ではほぼ不可能と言われた数々の契約を結び、バリバリのキャリアウーマンとして日々邁進中 ーーーーだったのはつい先日までの事。




「はぁ……」


あのバカの珈琲を淹れながら、溜息をつく。


ーーーー なんでこんなことになっちゃってるんだろう。

「せっかく頑張って勉強したのになぁ」

道明寺と疎遠になってから、時間を忘れるように勉強に没頭した。

もう誰にも何も奪われないように、自分の周りは自分で全部守れるようにと。

そこそこの大学を出て、就活も頑張って、手当たり次第に受けた企業の中で一番条件が良かったのが道明寺HDだった。

まさか受かるとは思っていなかった。

過去の道明寺との事もあるから、受けた所で落とされても仕方ないと 半ば記念受験みたいなものだったし。

入社してからは本当に目まぐるしい日々で、全てを仕事に捧げ、必死に頑張ってそのうち営業企画部ではエースと呼ばれるようにもなった。


ーーーー もう、あたしは大丈夫。


勉強も仕事も頑張った。

自分に自信もついた。

だからもう、自分を許してあげたい。

いざという時に、頑張れなかった臆病なあたしを。

「なのに、なんで今更現れんのよ……ばか」






『牧野は可愛いなーと思って』

昔を思い出させる声で、

『……俺は土星の方が好きだけどな』

二人の思い出を掘り起こさないで。


胸元で揺れるネックレスを握ると、「大丈夫だよ」って言ってくれてる気がした。

そうだよ。

あんな言葉、何の意味もない。


……でも結局。あんな冗談に、動揺してるあたしが一番バカなんだ。



********


「なー、牧野」

「はいはい。なんですか」

ちょうどそれは、昼休みの時間帯。

牧野が手配した弁当を二人で食べて、食後の茶を啜っていた

「お前、英徳だったんだな」

「ぶぅーーーッ!!」

……のを、豪快に吹き出した。

「汚ねえな。ホラこれで拭け」

「ぎゃっ!あ、ありがとうごさいます……」

牧野の奇行は今に始まった事ではないので、俺は慌てずにタオルを顔に投げつける。

「……なんで毎回女の子の顔に投げつけるかな」

「毎回茶を吹きかけられる俺の身にもなれ」

今では、独り言にも鮮やかに対応している。

「元はと言えばあんたのせいじゃ……じゃなくて、それがどうかしました?」

「お前、やっぱ前にどっかで俺と会ってるだろ?」

「………………………さあ」

「なんだよその間は」

「過去は振り返らない主義なので」

「そうかよ」

何かが掴めそうなのに、後一歩で逃げていく感覚。

近寄っても、毎回するりと避けられてしまう。

何か情報が知りたくて、コイツの履歴書なんてものを自分で探してみたが、新たに唯一知れたのはそのくらいだった。

「お前、休みの日なにしてんの?」

「読書」

「寂しい休日だな。遊んでくれる男とかいねーのかよ」

「居ませんし要りません。それに、副社長だけには言われたくありません」

「ふーん?」

「……って、だからなんで笑ってるの!」

「じゃあ俺とデートすっか」

「…………っ!」

目を見開き、固まってしまった牧野。

たっぷり、1分くらい使っただろうか。

「……嫌なら嫌ってハッキリ言えよ。今更気ィ使うな気持ち悪ぃ」

「……嫌って言うか、」

「ん?」

「その……」

「?」

「…………やっぱりなんでも、ない、です」


それきり俯いて、黙り込んでしまった牧野。



なんでだよ。

なんでそんなに辛そうな顔をする?

いつものお前なら、嫌なら遠慮なしに断るだろうが。

訳がわからぬまま、俺は気の利いたことが言えなくて、そのまま昼休みは終了した。


********


「お前、今度の日曜パーティ付き合え」

「……はい?」

それは、仕事絡みのパーティ。

パーティの大体は同伴者が必要だから、いつもはほとんどスルーしてた。

だけど今日は、なかなか会えない取引先が来るらしく、急遽参加する事にしたんだ。

「いつもみたいに、一人で行けば良いじゃないですかっ」

「最近また、玉の輿狙いの女が増えて来てウゼーんだよ。お前なら秘書としても取引先の顔を覚えておける。適任だろ?」

「でもなんで、あたしが……」

「社長にも許可は取ってある」

「なっ!」

「お前は隣に居るだけで良いから。ご褒美はパーティの後、俺とデート。どうだ、悪くないだろ?」

「むしろデメリットしかないんですが」

「じゃ、明後日15時な。部屋まで迎えに行くから」

「人の話を聞きなさいよ!」

「あ、やっぱ昼メシも食いたいから12時。めかして来いよ?」

「あたし行かない!絶っっ対に!行かないからね!?」

「楽しみにしてる」


言うだけ言って、部屋の扉を閉めると 中からまだぎゃーすか聞こえてきた。

ーーーー バーカ。

お前のペースに合わせてやれる程、俺はお人好しじゃねえ。

お前が逃げるなら捕まえてやろうじゃねえか。
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