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未来の先に見つけたものは 7


「……は?」

チュンチュンチュンチュン。

やたらうるさい小鳥のさえずりに叩き起こされると、戻った記憶のない自宅のベッドで俺は寝ていた。

「しかも……」

目線を隣にやると、椅子に座ったまま、俺のベッドへ上半身を突っ伏すようにして牧野が寝ている。

「????」

寝起きで、事態が全く把握出来ない。

何故、牧野がここに?

ほぼ無意識に牧野の髪を撫でて思案に耽るが、なぜかやけに頭が軽くなっていることもあり、そんな理由なんてどうでもいいことに思えた。

「……おい、起きろ」

ペチペチ

「んぅ……や、」

「や、じゃねーよ。犯すぞこのバカ」

「……ハッ!?」

すげえ早え。

「え、えっ?……ん?ん!?」

身の危機を感じた(って失礼だなおい)牧野は、即座に身を起こすと さっきの俺と同様キョロキョロ辺りを見渡していた。

っつーか、すげーアホっぽい。

「お前、何でこんなとこで寝てんだ?」

「え、えっと?……なんでだろ??」

どうやらまだ寝ぼけているらしい。

「はぁ……。眼鏡ズレてんぞ」

突っ伏して寝ていたせいか、斜めになったことで余計にアホっぽさが引き立っているのを、指で直してやる。

「お前こそ風邪引くだろ」

顔に微かに触れた時、指先から冷たさが伝わっていた。

「……あぁそうか、寝ちゃったのかあたし」

「ほら、まだ時間あるからこっちこい」

「へ?……ってきゃあああっ!?」

ぼふんっ!

「るせーな。寝ろ」

「ね、寝れるかバカー!セクハラ上司ーッ!」

冷えてしまった牧野をベッドに引きずり込んで後ろから抱き込むと、途端に暴れ出す。

「なんもしねーって」

「もうしてるでしょうがこのアホッ!」

「……話あるから。少しだけ大人しくしてろ」

「…………嫌って言ったら?」

「昼までこのままな」

「……ゔ」

腕の中で散々暴れた牧野が その一言で大人しくなり、俺はゆっくり目を閉じた。

背中から伝わってくるのは頼りない温かさで、耳を赤くさせた牧野が愛おしかった。

牧野がしっかり温まるまでジッとしていると、強張っていた身体から力が抜けていってるのがわかる。

だからといって、まだ寝られちゃ困ると思った俺は、


「なぁ、牧野」

「……」

「牧野、寝たか?」

「……なによ」

「俺、お前がすげー好きなんだけど」

「あっそ。あたしは好きじゃないよ」

「……ひでーなおい」

「ねえ、それよりそろそろ離して」

「俺が好きって言ったら離してやる」

「ふざけんなばかっ」

んっと、口が悪いったらねえ。

俺にバカだのアホだのセクハラだの、遠慮なしに言えるのはお前くらいだぜ。

牧野はその後、話が終わったなら用は無いとばかりにベッドを抜け出した。

それから、出逢ってからも何度か見た、冷めた目をして俺を見ている事に気づく。


「それに、あたし無理だから」

「なにが」

「誰かと付き合うとか、そういうのいらない」

「……っ」

「だからアンタが冗談でも本気でも、あたしは無理。あきらめて」

「…………いやだ。お前は俺のもんだ」

「子供みたいな事言わないで。あたしはあたしであって、ものじゃないの」

牧野の一言ひとことが、胸に突き刺さる。

「牧野」

「……」

「お前だけだ。お前が欲しい」

「……」

「お前と出逢って、生きてて初めて楽しいって思えたんだ。お前を一生大事にするから、牧野。俺を選べ」

「……じゃあね」

「牧野ッ!」



このまま終わってたまるかよ。


終わらせる訳には行かねえんだ。




「……痛いよ、馬鹿力」

「好きだ牧野。だから、俺から離れて行くな」

もうそれは、唯の懇願だった。

部屋から出ようとしていた牧野を、引き留めて抱き締めている。

牧野が戸惑っているのもわかっていたが、今の俺に出来る事はそれくらいしかない。

「……」

「なぁ、どうしたら俺を好きになる? お前の為ならなんでもやってやる。お前が傍に居てくれるなら、なんもいらねえ。好き過ぎて、気がおかしくなりそうなんだ……」


ずっと、感じていた違和感の正体がわかった。

笑っているのに。

怒っているのに。

喜怒哀楽を見せている様で、最後の一歩までは踏み込ませない。

牧野は、いつも心の中に一枚壁を作っていたんだ。



「……前に、付き合ってた人にね」

「……?」

「今のあんたと同じこと言われたの」

「でも、ある日突然いなくなっちゃった」

「なっ……!」

「ごめんね。だから、信じられない」


牧野は俺の腕を振り解くとしっかりした足取りで部屋を出ていった。


「……なんなんだよ一体」


追いかける事も出来ずに、ただ、その背中を呆然と見送る事しか出来なかった。

牧野に男がいた?

しかも、俺と同じ言葉を吐いて?

それでもそいつは、牧野を捨てただと?

「……ックソ!!」

ガンッ!

パリンッ

怒りに任せて叩きつけた勢いで テーブルにあった水差しのガラス容器が、粉々に割れた。

絨毯にシミが拡がり、じわじわと黒く侵食して行くのがわかる。

「なんで……ッ!」

むかつく。

むかつく。

むかつく。

俺が何を言っても信じようとしない牧野も、牧野の前の男も。

何だよ前の男って。

そりゃ、この年になって1人も付き合った事がねえのは珍しい事だってわかる。

でも、牧野に他の男が触ったかと思うとどうしようもなく腹が立って、やり切れない嫉妬と怒りで身が焦げそうだ。


……なぁ、牧野。


俺のこの気持ちはどこに行けばいい?


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