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未来の先に見つけたものは 10〈完〉


「よう牧野」

「……おはよ、う、ございます」

月曜日の朝っぱらから、道明寺HD本社1階のエントランスに居たのは彼氏(仮)だった。

「話がある」

「え、こんな朝からで……いだっ!?」

「いいから付いて来い」

「いっ、いたいたいたい~!」

ぎゅっと掴まれた手首。

背後でみんなが何事かと物凄くザワザワしてるし、もうおそろしくて振り返れないじゃないかっ!

「昨日は、女のダチといたんだよな?」

「……はい?」

人目に付かない会議室に着くなり鍵を閉めて、ギラリと眼光鋭くした物騒な顔をしてそんな事を聞いてきた。

「違うのかっ!?」

「違わない、けど」

「…………よかった」

本当にホッとした顔をして、抱きついて頭にすりすりと懐いてくる。

この男も、怒ったり笑ったりほんと忙しいなぁと思う。

「えっと……そんなに心配しなくても、あたし言うほどモテませんからね?」

我ながら虚しい台詞だよ、まったく。

「バカ言うんじゃねえ。お前にその気がなくても男は勝手について来るんだよ」

「なわけないって」

磁石じゃないんだから。

「……」

「あの、副社長?」

抱きついたまま、黙って離れなくなってしまった道明寺にどうかしたのかと聞くと、更にぎゅっと抱きしめられた。

「……牧野、好き」

「っ」

「マジで、好き過ぎて死にそー」

「……」

やばい。顔があつい。

「今週は絶対、デートしような?」

「……うん」

どうしよう。

「早く、俺のものになれよ」

強請るような声音に、早くも絆されそうだ。


********


「何してんのあんた……」

親友の呆れた顔が、今はグサグサと胸に刺さる。

「だ、だって優紀」

「だってじゃないでしょー? 期間限定とか、そんなつまんない意地張ってどうすんのよ」

「ぐっ」

摘ままれたポッキーが、言い聞かせるように あたしの目の前で何度もぶらぶらと往復する。

「つくしって、頭はいいし無駄に男前な性格だしそういう所も好きだけど、こと恋愛に関してはスキルが低すぎる!」

「うぅっ……。返す言葉もございません」

ぺこり。

「だから私に謝ってどうすんの!」

「話さなきゃいけない人は道明寺さんであって、私じゃないでしょ?」

「記憶がないんじゃ怖気ついちゃうのもわかるけどさ、道明寺さんだってつくしに他の男の人が居たって誤解したままだし、つくしだってそんなの不本意じゃないの?」

「いや、それが……」

「ん?」

「なんかね、ことある事に嫉妬して来たりして面倒臭いことは面倒臭いし、自分でも性格悪いなって思うんだけど、あいつも他に好きな人が居てもいいとか自分で言い出した手前、言いたくてもあんま言えない?みたいでさ。そんな悶絶をずっと見てたらなんか……なんかね、」

「…………いい気味だって?」

「うん」

「…………」




「「あっははははは!」」




「やっ、やだつくし~!ほんとに性格悪いよー!」

「ふっふふ、優紀だって笑ってるじゃん!」

「だぁって! あっ、あんなバリバリ仕事出来ますオーラ出してる人が、しょんぼりしてると思ったらさ~!」

バンバンバン!

「いや、しょんぼりはあんましないかな?」

「へ?」

「どっちかっていうと、陰で うおおぉーってしてる。こないだは知らない間に額に変な傷出来てたし、たまに頭ぼさぼさだったりする」

「ひぃ~!やめてー!あの顔に傷つけたら道明寺さんのファンが怒り狂うよー?」

「いいのいいの。どーせアイツの回復力は犬並みだもん」

ひとしきり二人でそんな馬鹿話で爆笑して 落ちついた頃、ふと真面目な顔になった優紀が心配そうな目であたしに聞いてきた。

「で、これからどうするつもり?」

「……どうだろ? そりゃ嫌いじゃないけどさ」

「………………………へえ」

「……なによ、その間は?」

「ふぅ~~ん?」

「だ、だからなにっ!?」

なんかいつかもこんなシーンあった気がするよ!

「んもぅ! かぁわいいな~! こりゃ道明寺さんもメロメロになるはずだわ!」

「なに訳わかんないこと言って……ってうわ!や、やめなさい優紀ッ!」

「ふふふ~!春は近いよつくしー!」

「??? 今夏真っ盛りだけど……」

優紀の言うことはよくわからなかったけど、お互いお酒も少し入っていたので、酔っ払いのされるがままになっておいた。


**********


それから 時はあっと言う間に過ぎて、約束の3カ月目。


「ふうっ!これで終わりっ!」

「ご苦労さん」

「ひゃっ!?なにっ?」

「ん」

「……あ、ありがと」

背筋に当てられた缶コーヒーの冷たさにびっくりして後ろを向くと、既に自分の分を飲んでいた男がいた。

「なぁ、明日予定あるか?」

「ん? ないけど」

「じゃあメシ行こうぜ。んでその後、俺のマンションに来いよ。な?」

「あんたはまたそんな事ばっかり!」

なのに、いつもと変わらない道明寺の態度に、知らず知らず力が入っていたらしい肩から力が抜けた。


ちなみに、この3カ月間はどうだったのか振り返ってみたいと思う。


ーーーー 付き合ってから 2週間経過


「今日パーティ。集合18時」

「はっ!?」


ーーーー 1カ月経過


ピンポーン

「……どちらさまでしょうか?」

「牧野、旅行行くぞ」

「いきなり現れて、旅行行くぞってあんたね……」

ちなみにこの時は、F3と滋さん、桜子も居た。


ーーーー 1カ月半経過


「な、右手出して」

「?」

「ん」

「……!?」

「おっ、ちょうどいいな」

「ちょっ、勝手につけるなー!」

「~~♪」


ーーーー 2カ月経過


「な、キスしよ」

「なんでっ!?」

「いーじゃん。俺ら、一応恋人同士だろ?」

「だっ、だめ……ちょ、んんー!?」


ーーーー 2カ月半経過


「美味かったか?」

「うん! 大満足!ご馳走さまでしたっ」

「そか」

仕事終わりに強引に連れ出されたメープルのディナー。

なんだかんだ結局それをペロリと平らげたあたしは、彼にお礼を言うと嬉しそうに微笑んだ。

「牧野、好き」

「……うん」

テーブルの上に置いてある手が、正面に座る道明寺の大きな手に乗せられる。

「愛してる」

「………………う、ん」

手のひらにキスを落とす仕草まで、様になっているのが悔しい。

しかも、なんだか今日はいつもより熱っぽい瞳をしてる気がする。

「な、1時間だけこの上に部屋取ってあるから行かねー? 夜景がすげー綺麗なんだってよ」

「……ほんとに1時間だけ?」

「おう」






「牧野、愛してる」

「んっ!」

部屋に入るなり、いきなり降ってきたキス。

「牧野、まきの……」

その後も道明寺のキスの攻撃は止むことはなく、どんどん深くなるキスに頭がフェードアウトしそうだ。

そんな時、身体を這い回る手を感じてハッと目を見開いた。

「ちょ、道明寺ッ? どこ触って……!」

「愛してる牧野……」

「や、やめなさ」

「……」









「ひどい。ばか」

「すげーかわいかった」

「嘘つき。もう道明寺なんて信じない」

「初めてだったんだな、身体大丈夫か?」

「大丈夫じゃないっ!ま、まだ痛いんだから……」

「ごめんな。でも俺も初めてだったから」

「…………ふ、ふーん」

「なんだよ、嬉しいのかよ」

「べつにっ」

「で、だ。俺の初めて奪ったんだから、責任取って嫁に来い」

「……どこから突っ込めばいいのよそれは」

「それとも俺が婿になるか?」

「はっ!? ありえないっ!」

「だよな、やっぱ俺が貰ってやるか」

「違う!そうじゃない~~っ!」

……と、まぁ。

想像通りと言えば想像通りの、振り回された濃ゆい3カ月だったのだ。


ーーーー そして迎えた 3カ月最終日の夜。


「牧野、結婚して」

「…………え、えっと」

「まだ俺じゃダメか?」

「そうじゃないよ! そうじゃなくって……あの、あたしアンタに言っとかないといけない事があって」

「あ?」

「あの、最初のね、期間限定で付き合うって言ってた時に……あの、あんたに謝らないといけなくてっ!」

あたしの過去の傷はもう充分癒えた。

これ以上ないってくらい道明寺が愛してくれたから、今度はあたしが返していく番だ。

その為には、道明寺にしたら最悪なあの誤解を解かなきゃいけない。

「あの時言っ、「なあ 牧野」

「……えっ?」

いっぱいいっぱいのあたしに被せるように呼ばれて、思わず頭を上げてしまう

「それ、開けてみな」

「……?」

なんでか、道明寺はすっごい優しい顔で笑ってて、あたしが戸惑ってしまうくらいだった。

なんとなくその笑顔に押されて、あたしが手に取っていいものかと迷いながらスルリとリボンを解き、震えてきた指先でゆっくりと蓋を開けた。



「……ッ!?」



その一瞬、

息をするのを忘れてしまった。






「おも……思い出してたの?」

「うん」

「いつ?」

「ん~。お前と初めて結ばれた日の前日?」

「……うそ」

「ホント」

「言ってくれれば、良かったのに」

「まぁ、迷ったんだけどな」

「……?」

「お前には、昔の俺だけじゃなくて今の俺も見て欲しかったから、お前が今の俺も好きだって思うまでは黙ってたんだ」

「……ほんと、ひどい」

「でも今の俺も大好きだろ?」

「きらい」

「なっ、てめえ!」

「うそ、好きだよ」






「道明寺、大好き」

「……ばーか」


道明寺が困った顔をして、その指先が何度も頬を拭う。

思えば、とても幼かったあの頃。

必死で恋をした

必死で愛を欲しがった

滑稽で、無様で、不器用な自分達がそこに居た。

あの頃の自分達が、成長のない今の自分達を見たら笑うだろうか。

「どうせなら、愛してるって言えよ」

キラキラと輝く指輪と、今度は左手を掬ってやる。

「もう、偉そうに幸せにしてやるなんて言えねえな」

「…………して欲しいの?」

「そうじゃねぇよバカ」

確かにお前には、抱えきれない程の幸せを貰ったが それじゃあんまりだろ。

「ほら、手ぇ出せ」

薬指に滑らせたリングをよく見れば、中央のダイヤが ある惑星をかたどっていて、その周りにはリングが添えられている。

いつも寄り添っているそれらは、今の俺らにはそれが良く似合うと思ったんだ。


「これからは、二人で作って行こうぜ」

「……望むところよ」


ずっと、二人で生きていこう。


輝くダイヤに負けないくらいの光と共に。


それはきっと、


未来の先に見つけたもの。


FIN





** おまけ **

《 つくし、バレる の巻 》

「つーかさ、お前」

「へ?」

「俺がまだ思い出してない時、俺の反応見て面白がってなかったか?」

「っややや、やだなぁ、そんな訳ないじゃんっ」

「…………」

「ごめんなさいっ!ちょっと面白かったです!だからそんなに睨まないでっ」

「……てめ」

「で、でもでもっ!あんただって色々ヒドかったし、これでおあいこだよね!ねっ?」

「…………」

「………?」

「そういうことにしてやってもいいが、条件がある」

「なんでそんな上からなの……で、条件って?」

「俺の純情を弄んだ罰だ。これから1カ月間、俺ん家に泊まれ」

「ながっ!! 全然おあいこにしてない!」

「当たり前だろうがっ! あれだけハラハラさせられた俺の気持ちどうしてくれる!?」

「えっ、ちょっ、いやぁーー!担ぐなー!」

「今日もたっぷり可愛がってやる♪」


本当におわり(笑)

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