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彼と私とエレベーター 2

(前回までのあらすじ)

エレベーターに閉じ込められました。by 牧野つくし





「……あちい」

「クーラーも止まっちゃったみたいだね。せめてジャケット脱ぐ?」

「ん」

待てども待てどもまだ動かないエレベーターで、なすすべなくじっと待機している。

余りの暑さにバサッと脱ぎ捨てられたジャケットは、そのまま足下へと着地した。

「……まだ暑いからね」

それをサッとたたんでからハンカチを取り出して、汗ばんでいる道明寺の額に当てた。

一年中長袖のYシャツにジャケット着用が当たり前で、クールビズも、ある程度立場が上の人間になるとあまり適用されない事を知ったのは、道明寺の秘書になってからだ。

いつもは空調が効いたところにいるお坊ちゃんには 余計に辛いのかもしれない。


「……お前も汗かいてる」

「はは、流石に暑いね」

「よこせ」


道明寺にハンカチを奪われて、その反対側であたしの汗を拭かれる。

閉じ込められてから、かれこれ1時間半。

クーラーなしでも耐えられるあたしが 普段より暑さを感じるのは、窓もない密室に閉じ込められているから余計にだろう。照明だけはついているのがせめてもの救いだ。

「……マジでやべーな」

顎を少し上げ、ネクタイを片手で緩めていく仕草はそれだけで色っぽくて、露出した首元や鎖骨から汗が滴り落ちていた。


「お前も脱げよ」

「はっ!?」

「なにびっくりしてんだ? 早くジャケット脱げって」

「……あっ、ああ!うん、ジャケットね!ははは。あたしはまだいいや」

「???……変なヤツだな」

恥ずかしい。自意識過剰に反応してしまった。

「……」

「!? ちょっと……」

「しゃーねーじゃん」

何を思ったのかYシャツのボタンまでぷちぷちと外し出して、あたしは目のやり場に困る。

もうっ!

監視カメラついてるのにっ

そう言ったけど、今更そんな恥じらいなんかあるはずもないこの男はどこ吹く風で。

「ほら、お前も脱いどけ」

「ここなら防犯カメラの死角。俺がこうやっててやるし」

そう言って、壁に両手を突いて、それと自分の間にあたしを挟んで促してくる。

「や、あたしは別に……」

「早く」

全然、人の話を聞いちゃいない。

両手を壁に突いて顔が覗き込まれ、ジャケットのボタンをふたつ、勝手に外されてしまった。

「しゃーねえな」

「……え? ちょっ、自分で出来るからっ!」

「あ?」

「ッ! やぁっ」

人の服脱がせながら、無駄に整った顔をそれ以上近づけないでーッ!

たかだかジャケットだけど、冷静に脱がされる行為が こんなに恥ずかしいものだなんて思いもしなかった。

普段は自意識過剰な男のクセに、こういう時に限って自覚がないし!!

「……まきの」

「!」

その間、じっと見つめられるのに耐えられなくて必死で顔を逸らしていたのに、唇からリップ音が聞こえた。

「キスすんの、久しぶりだな」

驚いてバッと見上げると、甘く笑う彼が居て。

「…………バカ」

「好きなだけ言ってろ」


俺は俺で、好きなようにするから。

再び塞がれた唇は、乱暴な言葉とは裏腹にひどく優しかった。
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