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悪い男 3



月日は流れ、3年目の冬。

最近は、超多忙な副社長のハイペースに合わせるのも小慣れて来た。


「あ、そこに置いてますので」

「おう。いつも悪いな」

「いえ、別に……」


月に1~2回の頻度で、副社長がたまに定時時間で帰る日がある。

プライベートの事なんて、わざわざ聞くつもりはないし知りたくもないけど、何をしてるかなんて大体検討はつくので、その日は副社長のストレス発散日と言ってもいいかも知れない。

「…………」

「あ、デザイン被ってました?」

あたしが選んだ、ジュエリーの数々。

被らない様にだけは気をつけているけれど、偶にポカをやらかすらしいあたしは、それらを見つめて黙り込んだ副社長に不安になった。

「いや、別に被ってても問題ねえよ」

「…………」

でた。副社長の病気。

知りたくもないのに、頻繁に女性に贈るプレゼントが被っててもいい理由なんて、恋愛経験の乏しいあたしはひとつしか見当たらない。

…………いや、だったらなぜ黙っているの?


「上品すぎるな」

「は?」

「もっとケバケバしくて、何種類も石が付いてるやつにしろ。金額はこれの倍でもいいから」

「……はぁ」

セレブの考える事はよくわからないけど、まさかのダメ出し。その言い方じゃ、何だか趣味の悪いモノを選べと言われてる気分だ。

「すいません。気をつけます」

「ん」

でもその横顔は満足そうで、彼女に会えるのを楽しみにしている年相応の青年にも見えた。

好きな人の笑顔は嬉しい筈なのに、胸が痛むのもやめられなくて、その場に居るのが耐えられなくなる。

「では、私はこれで失礼します」

「おう。お前も、いい加減男作れよ」

「ッ!?」

ーーーー まさか、知っている?

あたしの想いを。

ドクンと飛び跳ねた心臓の音が聞こえるんじゃないかと心配になった。

「したら、痩せっぽっちなお前にも色気出てくるだろ」

「……余計な御世話です」

なんだ、気にし過ぎか。

無駄な想いは捨てろと忠告されたのかと思った。

「それとも」

「?」

「俺が教えてやろうか?」

「っちょ……!?」

あっと言う間に副社長が目前まで近づいて来て、驚いてあたしが一歩足を引けば、また一歩副社長が近づいて来る。

「なぁ、どうする?」

「は、はいぃっ!?」

前には副社長。後ろには壁。

顎に大きな手がかかり、副社長の顔が一層近づいてくる。

副社長が女の人を取っ替え引っ換えしてるのはなんとなく知ってる。

でもだからって、あたしにまで……?






ぷっ


「な、ワケねーだろ。ブス」

「いだっ!」

珍しく、からからと機嫌良く笑ってデコピンをかまされた。

「むしろ、お前に反応する男が居たら見てみてーよ」

「〜〜〜っ! じゃ、ほんとに失礼しますから!」

僅かに痛むおでこを押さえるフリをして、自宅へと急いだ。










「……………………副社長のバカ」


なんで、あんなこと言われなきゃいけないの。

そもそも、あたしがプレゼント選ぶなんて事をする必要はあったのか。

そうだよ。仕事で一度行った道明寺家になんて、あんなに使用人さん達がいっぱい居るのに、毎回あたしに頼まなきゃいけない理由なんてなかったはず。

あたしの事は女として見ていないから、あたしはありえないから、こいつなら大丈夫だって思って……?


「ひっぐ、うっ、うぅ〜」


…………………………くやしい。

確かに、今までの人生、頼りないパパに代わってあたしがいい仕事について、家族を幸せにする事しか考えてなくて、おしゃれなんて二の次三の次で、勉強ばっかりだった。

想いを返して貰える期待なんてしてなかった。

してはいけないものだとすら思ってたけど、でもそれでも!

「ゔぅ〜、あの女たらしっ、さいっ、てー!」

部屋で蹲り、しゃくり上げながら恨み言を言うあたしは醜いだろうか。

「だって、好き、だったんだもん……」

初めは苦手だったヘビみたいな目も、笑うと子供のそれと変わらなくなって、胸が苦しくなった。

あたしがもっと可愛かったら。

あたしがもっとキレイだったら。

せめて、こんな思いはしなくて済んだのかも知れない。

「そもそも……ずっ、彼氏居たことないしなぁ」

低すぎる恋愛偏差値のせいもあるのかもと、鼻を啜り、ひとりボヤく。

理由は以下省略である。

「でもやっぱり、くやしい……」

そんなあたしにだって、ちっぽけなプライドはある。

いくら副社長だからって、踏み荒らされるいわれはない。

ずっと、このままじゃ……くやしいままは嫌だ。



ーーーー じゃあ、どうしようか?


スッと頭の中に入って来た答えに、気がつけば優しい親友へ連絡を取っていた。


「あ、もしもし優紀?」

「…………ん、なんとかやってるよ。うん、うん。そっちは?」

「あ、そうなの。悪いんだけどさ、お願いがあってね……」











「ありがとう。じゃあ、今週の日曜日ね」


ピッ

「ふぅ」

やばい、ドキドキする。

我ながら衝動的な行動をしたかも知れない。

入試も、入社面接もドキドキしたけど、それとはまた違ったドキドキだ。


優紀に今回お願いしたのは、


『美容院と、洋服買いに行くの付き合ってくれないかな?』

『……えっ! どうしたのつくし!? 彼氏でも出来た!?』

『ん、そういうわけじゃないんだけどね……』

むしろ失恋したようなものだ。

『わかった!絶対行くから!美容部員の名にかけて、つくしを磨いてあげる!』

『あははは、プロが言ってくれるのは頼もしいなぁ』

『そりゃそうだよ!つくしと出逢ってから口説いて、十数年たってやっとだもん!長かった!』

『ごめんごめん。あ、それと良ければ優紀のところで化粧品も買いたいんだけど……いいかな?』

『もっちろん!店長も喜ぶよ!』

『あ、そう?』

そりゃ仕事熱心な店長さんだこと。

優紀のお礼にも、貢献出来るように頑張らなきゃ。

今まで、避けて通って来た女の子の道へと足を踏み入れるきっかけが、まさかの副社長だなんて、人生何があるかわからないものだ。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

すいませんすいませんすいません。m(_ _;)m

坊ちゃんのかわりに謝っときます。
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