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悪い男 6


「あれ、牧野どこ行った?」

面倒くせえ女を適当に追い払った後、昼飯を食おうと思ったら牧野が居ない。

「牧野は営業部に寄るとの事です」

「営業部ぅ??」

代わりに、いつの間に牧野と入れ替わっていたのか、第一秘書の西田が傍に居た。

…………また、なんでそんな所に?

「副社長……。彼女も女性ですので、余り詮索しない方が宜しいかと」

「…………」


ーーーー 女性? いやあれはペットだろ。

よく食ってどこでもよく寝る、子供みてーな奴。

「おい、あいつの昼飯は?」

「牧野の食事でしたら、今後は自分で作る事にしたのでいらないと先日言われましたが」

「…………」

そういや、この間ちっせー弁当食ってたな。

あれ、あいつが作ってたのかよ。

ガタッ

「副社長、どちらへ?」

「トイレ」



ーーーーーー なんか嫌な予感がする。

行きたくもないトイレに行くと告げて、気がつけば下の階にある営業部の前にへと足が向いていた。

「…………いた」

営業部の入り口付近に牧野を見つける。

牧野は最近、伸ばしっぱなしにしてた髪を肩程まで切り、ポニーテールオンリーだった髪型は綺麗に纏められていた。

「おいっ、まき……」

「わっ、すごい!なんですかこれ! コインがなくなったー!」

「ははは。コイツ、大学時代手品サークル入っててな」

「……大した事は出来ないけど、これくらいなら」

牧野に声を掛けようとしたが、馬鹿でかい声に掻き消され、よく見ると営業部の野郎2人と一緒に笑ってるのがわかる。

「すごーい!あたし、目の前で初めて見ました!」

「そっか」

手品を披露した1人が、牧野の賞賛に照れながらも嬉しそうに笑う。

「…………」

イラッ

なんだ? なんか意味わかんねーけどすげえイライラする。

よく見たら、そいつら牧野のうなじジロジロ見てんじゃねーか?

だけど牧野は気にする事なく男達と笑っていて、ペットの癖にチヤホヤされて、気に食わない。

最近色気づいてきたのか、分厚い眼鏡からコンタクトに変えて、髪型も変えて、今まで履いて来なかったスカートまで変えて来て。

分厚い眼鏡を外すと意外に目がでかくて、分厚い眼鏡が目を若干小さく見せてたのかと直ぐ思い当たった。

そんな牧野の変貌ぶりに、取引先の耄碌ジジイ共は会った事のある牧野だとは気付かずに、新しい秘書かと食事に誘っていたのは流石の俺も驚いた。あのエロジジイめ。

あの西田まで、さっきも牧野を女扱いしだして、今まで通りに牧野で遊べねえし面白くねえ。


「……生意気なんだよ、牧野のくせに」


お前なんか、俺に遊ばれてるだけで充分なんだよ。

俺はおもちゃを奪われた気分で、その日は一日中不機嫌だった。


*********


「今度皆で、サーカスに行かない?」

「サーカス??」

先日、山田先輩に紹介された宮山先輩からチケットがあるからと誘われた。

「うん。 ほら、大学時代のサークル仲間に貰ってさ」

先輩が言うには、山田先輩と行こうとしたけど都合がつかなかったらしい。

「でも、他のお友達を誘えば……」

「あっ、他の奴らも忙しいみたいで! チケットももったいないし、あと一枚あるから良かったら牧野さんどうかなって! もちろん良かったらだけど!」

「…………」

ちょっとパニクり始めた宮山先輩。

あたしも大概 鈍い鈍いと言われて来たけど、山田先輩から『彼氏いない?』と聞かれていた時点で、宮山先輩があたしに少なからず好意を寄せてくれてるのはわかっていた。

「…………ダメかな、やっぱ」

思案していると、断られると思ったのか宮山先輩がシュンとしていて、何だか申し訳ない気持ちになって来た。

「皆で、行くんですよね?」

「……え! いいの?」

「はい。 あたし、サーカスって行った事ないので楽しみにしてますね」

「ありがとう!」

バッと顔を上げて、チケットを譲って貰うあたしが御礼を言うべきなのに、嬉しそうに笑ってくれた。


ーーーー なんか、この人かわいいのかも?


「じゃあ、また連絡するな!」

「はい」

LINEアドレスを交換して、宮山先輩と別れた。

宮山先輩、見た目は割と大きくて(180㎝くらい?)顔はどちらかというと強面だから、あんなに無邪気というか、素直な性格だなんて思わなかったな。

「…………いい機会かも」


思い出し笑いをしながら、副社長を思い出す。

どうせ、叶わない恋なら辛いだけだ。

そもそも、あたしなんかが副社長に恋をした事自体間違いだったんだから。


片思いも3年目に突入して、そろそろ恋の神様が、次に進みなさいって言ってくれているのかも知れないと思った。
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