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悪い男 13


ガチャッ

ドアノブがまわる音がして、さっき逃げてった牧野が顔を見せた。

「よう、落ち着いたかよ」

真っ赤だった顔は元の色に戻っていた。

少し残念な気もするが、これからいつでも見られるからと、少しからかってみることに。

「副社長、〇〇会社のお嬢様がいらっしゃっているようですが、どうされますか?」

「は?」

しかし、牧野から返って来たのは秘書の仮面をつけたものだった。

会話がおかしいだろ。

質問に応えろ。

「つーか、誰? そいつ」

「……ですから、先日いらした〇〇会社、代表取締役のお嬢様です」

「社長は知ってるっつーの。だけどその娘とかんな奴しらねえよ」

勝手に付いてきた小娘の把握までしてられっか。

「……そ、うですか」

「さっきからどうしたんだお前?」

どうにも様子がおかしい。

さっきまでずっとイチャイチャしてたのに、牧野は何故か硬く緊張していて目が合わない。

そんな奴知らないと言えば、幾らかホッとしたようだが……

「あ」

もしかして。

「妬いてんの?」

「妬いてませんっ!!……っあ」

「…………」

青くなったり赤くなったり、牧野の体内は忙しそうだ。

それはそうと。

そうかそうか、妬いたのか。可愛い奴だ。

「安心しろよ、お前以外女なんていねーから」

「え? なんて」

「だから、」

そこに、バタバタとした音が聞こえた。

「…………っち、誰だよここで騒いでるバカは」

せっかく牧野を慰めてやろうと思ってたのに、とんだ邪魔が入った。

さらに、扉の向こう側がだんだん騒がしくなってくる。

「ちょっと、見てきます」

「放っとけよ」

「いや、ここまで騒がしいのはさすがに……」

ガチャッ、バンッ!!

「司さまぁ!」

「「…………は?」」

激しい音を立てて勝手に空いた扉。

そこには、ワンピースを着た女が涙ぐんで立っていて、

「会いたかったですわ!」

「…………あぁ?」

そのまま、司の胸へと飛び込んだ。


***********


「ってぇ……いい加減、退け!」

「やんっ」

勢いよく飛び込んだせいで、押し倒されるかたちになった副社長は頭を少しぶつけてしまったみたいだ。

バリッと力任せに年下であろう女の子を剥がすと、不機嫌そうに顔を歪めた。

「……頭、冷やすもの持ってきますか?」

「いや、いい」

打ち付けたであろう場所を摩り、1人で立ち上がる。

「この女、摘み出せ」

勝手に入って来ていたのか、息を切らせて付いて来ていた守衛さんにそう命じると、副社長は何事もなかったようにデスクに座った。

「……お前らも、牧野以外出て行け」

「「は、はいっ! 申し訳ございませんでした!」」

副社長室に進入を許してしまったを失態を詫びて、ギロリと睨まれた守衛さんと受付嬢の皆さんは背筋をピンと伸ばして副社長室を後にする。


「いやっ、待って! 司様にお話しが!」

「君ッ、いい加減に」

「司様ぁ~! 私、あなたの子がお腹の中にいるのお~~!」


…………爆弾発言を残したお嬢様を引っ捕えて。


*********



牧野と俺だけになり、シーンと静まり返った執務室。

なんとも言えない微妙な空気が残っている。



「あんのくそアマ……」

何てこと言いやがる。

よりにもよって、一番タチが悪りぃ法螺を。

どうやって、社会的に抹殺してやろうかと考えていると牧野が遠慮がちに話し掛けて来た。

「あの……」

「ん? ああ、アレは嘘だぜ」

「…………」

「どうした」

まさか信じたのか

「さっきの方、追いかけなくていいんですか?」

「はあ?」

「すいませんっ、ただの秘書の癖にプライベートな事まで聞いて……でも、」

「だから嘘なんだよアレは。 あと、ただの秘書じゃねーだろお前は」

「…………」

「な、何だよその目は」

「嘘はいけないです。あたしに気をつかわないで、早く行って下さい!」

牧野の目が座ってると思うのは気のせいか?

「嘘?? 行くって、どこにだよ? あんなの信じてんじゃねーよバカ」

「……そうですか」

「…………」

「あたし、副社長と付き合いたいとか、大それたこと思ってるわけじゃないですから」

「…………あ?」

思わず低い声が出てしまい、牧野は青ざめていく。

「だって、副社長のまわりにはいつも綺麗な人が居て、プレゼントだってお花だってあげてるけど、好きなわけじゃないですよね」

「ぐっ」

しかし、今度は俺が青ざめる番だった。

「お花の花言葉は最悪だし、相手の人の名前もろくに覚えてないんですから副社長は女の人が嫌いなんですよね? 他の女の人と泊まる ほ、ホテルの予約もしてたけど、まぁ男の人だからそういうのは仕方ないのかなって……」

「は?」

牧野は暴走気味で、俺に口を挟む隙を与えない。

…………っつーか、知ってたのか?

いやそれよりも、あらぬ誤解を受けている気がする。おまけにすげえ嫌な予感が。

「おいっ、ちょっと待て!」

「女の人が嫌いなのに、いつもあのホテル使って…………って、違う! そ、そんなことが言いたかったんじゃなくて! ああああの、やっぱり、さっきの事はなかったことにして下さい!だから、早く追いかけてっ!」

「待てって言ってんだろうが!?」

言ってる事が支離滅裂になってきた牧野。

一気にそんなことを言われた俺もパニクッてんのか、端から見たらすげー滑稽なことになっていたと思う。

「だからっ、それは100%あり得ねえんだよっ!」

「なんでですか!? 100%副社長の子供じゃないなんて、どうしてそんなヒドイ事言えるんですか!」

余りの言われように、ヒドイのはどっちだと問いたくなるがそれどころじゃねえ。

「〜〜っだから!!」

「…………だから?」


怪訝そうに俺を見る牧野。



ーーーー ああくそッ!


なんで、こんな事言わなきゃいけねえんだよ!?















「俺は童貞なんだよッ!!!!」
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