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記憶喪失物語。#17

道明寺が笑ってるのを見ていると、幸せで、もっともっと笑った。


胸のあたりがキュンとなって、いつまでも見ていたいと思った。












牧野が居ると、それだけで幸せで。

日だまりみたいな暖かさに、俺は救われる。









「あれ?」

「ん?」

「なんか、口まわりになんかついてるよ?茶色いの。」

ジーっと司の顔を見た。

「ん、どこ?」

そういって、右手で取ろうとするがなかなか取れない。

「違うって!もっと右!」

「‥‥お前とって。」

屈んで要求する。

「やっ、やだよ!子供じゃないんだから、自分で取りなさい!」

顔が急接近して、あたしは顔が熱くなる。

ジリジリ寄ってきていたたまれなくなって、後退りした。

その間、ずぅぅ~~っとあたしを見続ける道明寺。


「‥‥‥‥。」

ガン見。

「‥‥‥‥~~~もう!わかった!じっとしててよ!?」

「おう。」

道明寺は、素直に返事をすると屈んだまま大人しく目を瞑って待っている。

キレイな顔が間近に来て、あたしはドキッとしてしまう。


「‥‥んっ?」

「取れた?」

「取れたけど‥‥何これ?なんかネチャってしてる!」

‥‥ゴシゴシ。

「こら、てめ!」

「人の服で拭くんじゃねえよ!」

「だってもともとはアンタのじゃん。」

「別に俺のでもねぇ!」

「‥‥アンタ今日何たべたの。」

「‥‥そういや何も食ってねえ。」

「えぇ!?なんで!!」

「‥‥‥お前探してたからだよ。」

そこまで言うと、猛獣はまたしゅんとなった。

「だから‥‥なんであたしを探してたのよ?」

ーーーーそう、それが一番わからなかったんだ。












「‥‥‥‥‥決まってんだろ。」


何故かブスッとした表情の道明寺。



「何が?」


「‥‥って、うええあぁぁああ!!?」


突然道明寺に腕を引っ張られて、あたしはびっくりして奇声をあげた。

びっくりしたあたしが最後に見たのは、にやっと笑う道明寺の表情だった。










"ちゅうううううう~~~~~っ。"











「!!!??」



「!!!!!」




まず、あたしの驚きと、その次に周囲の人の声にならない叫び。


一瞬にして空気がどよめいたのがわかった。








ーーーー何を考えてるのか、全くわからないこのバカ。


よりにもよって、公衆の面前でとんでもないイタズラをしやがった。


このあと、即刻殴ってやろうと思ってたのに。















「お前に会いたかったから。」






長い長いキスの後。


ようやく唇を離したあいつは、ガキみたいなあのとびきりの笑顔で笑って言った。


おかげで、不意討ちの笑顔を喰らったあたしは、力をこめた右手の行き場を無くしてしまった。





******









「何いちゃこらしてんだ、あいつら‥‥。」

「本当だぜ、見てるほうがハズイ‥‥。」


いつの間にか居なくなっていた二人は、外の見える喫茶店の2階にいた。


「えぇ~~!!いーじゃん!皆の前でちゅう!」

「滋ちゃんもしてみたーーーい!!」

「ねっ、あきらかニッシー!滋ちゃんとしてみない!?」


「「断る。」」


即答。


「ちぇっ、ニッシーとあきらのけちけち!」

「いーもん、桜子とするから!!」

「‥‥‥‥滋さん。ちょっと黙っててくれます?」

「むぅ!」

膨れっ面を桜子に向ける滋。

そんな滋を見事にスルーした桜子が目を向けた先はーー。



「‥‥‥お客さまも居るんですから。」

















「‥‥‥あの二人を見て、なんにも感じませんか?中島さん。」




******





『‥‥あ。』


『お久しぶりです。中島さん。』


『‥‥‥‥‥桜子さん。』











つくしが走り去り、海の前に姿を現したのは桜子だった。


『ちょっと、時間有ります?』

『え?‥‥でもあたし、つくしちゃん待ってて‥‥‥』

『それなら大丈夫です。』

グイッ‥‥

『え?ちょっと‥‥!』

『黙ってついて来れば分かります。』


海の手首を掴み、スタスタと歩き出した桜子。


『中島さん。』

『は、はい?』

『私は、主人公の回りにいつもいる悪役〔ヒール〕なんです。』

『‥‥‥?』

『だから。』

ーーーーピタッ。

桜子は歩みを止めて、怖いくらいの美貌で海を見た。


『あなたの罪を教えてあげるの。』


冷たい目で海を見つめてそう言った。
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