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記憶喪失物語。#18

「道明寺さんの顔、見えます?」

「全然違うでしょう。」


5人の目は、外にいる二人に注がれていた。


「‥‥‥道明寺くんの記憶、戻ったの?」


まるで人が違う司に、動揺を隠せない海。


「いいえ。」

「まだ戻りません。」

「じゃあ、なんで‥‥‥‥。」


そこまで言うが、後が続かない。


「‥‥‥‥なんで、あんなに違うのか、ですか?」


「‥‥‥‥。」


「道明寺さんは、自分で、なくしたものを見つけたんです。」

「そして、それは正解だった。」

「じゃないとあんな幸せそうな顔してません。」

桜子は、視線を外にいる二人に向けながら少し嬉しそうに笑った。

「‥‥もともと、気持ちが通じ合ってからの二人はあんな感じだったんです。」

「ケンカばっかりしてても、どこかで強い絆で結ばれてる。」

「恋人で在りながら、戦友のような存在で。」

「私は‥‥そんな二人が大好きです。」

「‥‥‥戦友?」

「‥‥‥今の道明寺さんには、その記憶はありませんけど。」

「二人は、何度も何度も心の中で泣きながら色んな壁を乗り越えて来たんです。」

「‥‥‥壁?」

「そうですね‥‥。」

「例えば、毎日全校生徒に追いかけられても登校して来たり。」

海の目が見開く。

「自分の好きな人が自分の親友を好きだったり。」

さらに見開く。

「お互いに好きなのに、家に反対されて。別れなければ友人の家を崩壊すると言われたり。」

「崩壊ってそんなの‥‥。」

海がまさかそんな事があるわけないと言う様に、笑った。

「あるんですよ。」

「世界の道明寺‥‥いえ、英徳学園の生徒の半数はそれが可能でしょうね。」


「‥‥‥‥!!」


桜子が嘘を言っている様にも見えなくて、海は背筋がゾクリとした。


「あなたに、分かります?」


桜子の静かな怒りが沸いてくる。


「今までそんな辛い思いばかりしてきた先輩が、道明寺さんが刺されて、生きるか死ぬかの事故に会って。」

「やっと生還したと思ったら、自分だけ忘れられてて、気がつけば他の女が自分の彼氏とイチャイチャしてた先輩の気持ち!!」


「‥‥おい、桜子。言い過ぎだぜ。」


あきらが諌める。

「いいえ。これだけは言わせて下さい。」

「悪気は無かった?そうですね。あなたに悪意は無かったかもしれない。でも!」

「あなたは先輩の友人を名乗りながら、先輩の気持ちに何一つ気付かなかった‥‥いえ、気付こうとしなかった。」

「友人なら、なんであんなに辛そうな先輩に気付いてあげられなかったんですか。」

「先輩は優しいからなにも言わないけど、ずっと苦しんでる。‥‥今も。」


桜子の悔しそうな顔。


ーーーーそこへきて、海は始めて後悔で頭をもたげる。


「あ、あの、あたし‥‥ごめんなさ‥‥」

しかし、海はどう言って良いのかわからない。


ーーーーそこに、声がかけられた。


「もう、いいよ。桜子。」

「ありがとう。」

「「!!」」


ふわっと、桜子を抱き締めたつくし。


「でも、先輩‥‥」

「もう、いいの。ありがとうね。」


抱き締めたまま、優しく頭を撫でた。

「ごめんね。嫌な役させちゃったね。」

「せんぱ‥‥っ」

ぶわっと、桜子の瞳から綺麗な雫が溢れた。








******


「で、何だったんだ?」

ーーーーギクッ。

「べべべ、別に、なんでもないよ?」

「‥‥‥ふ~ん?」

じぃぃぃ~~~~ッ。

「なんでもないってば!!」

野生の勘が働くのか、疑り深い道明寺。
























『つくしちゃん、ごめんなさい!!』

桜子を宥めていると、海ちゃんが口を開いた。

『海ちゃん‥‥‥?』

あたしは桜子を撫でながら、海ちゃんを見た。

『あの、あたし、つくしちゃんに酷い事たくさん‥‥‥!!』

そう言って、どんどん涙声になる海ちゃん。

落ちついた桜子が、静かに、『もう、大丈夫です。』と言って離れていった。

あたしは、自然と海ちゃんに向き合う。

『本当に、ごめんなさ‥‥!』

『もう‥‥いいよ。顔、上げて?』

『でも‥‥!』








『あたしさ、海ちゃんが羨ましかったの。』

『‥‥?』

いきなり何を話し出すのかと、海は少し驚いて顔をあげた。

『海ちゃんの笑顔はいつも太陽みたいで。』

『初めて会った時、皆の中心にいて明るくて。』

『すごいなって、思った。』

涙目の海の瞳をみて、つくしはニコッと笑った。

『‥‥‥つくしちゃん。』

『正直、海ちゃんと道明寺が仲良くしてるのは辛かったし‥‥‥悔しいこともあったけど。』

『‥‥‥!』


海の胸がズキリと痛む。


『でもあたし、決めたの。』

『‥‥‥?』

『‥‥あたしは、道明寺が好きだよ。』

海に微笑んだつくしの表情は、周囲にいる誰もがドキリとするほど綺麗で。



『海ちゃんから奪って行く。』



『だから、海ちゃんも謝らなくていいよ。』




決意に溢れたものだった。












『違うの‥‥!』

『‥‥‥‥海ちゃん?』

『道明寺くんは、あたしの嘘なんか直ぐ見抜いたの‥‥!』

『えっ?』

『あのお弁当、つくしちゃんが作ったんでしょ?』


『‥‥‥!!』


『ごめんね。』

『あたしも、つくしちゃんが羨ましかったの、みんなに必要とされてるつくしちゃんが‥‥!』


『‥‥ごめんなさい。』




『あたし、頑張るから。』

『そしたらまた会ってくれる‥‥?』



海の瞳には、嘘は全く感じられなかった。







『‥‥‥うん。いつかまたね。』













泣いてても、やっぱり太陽みたいな海ちゃんの笑顔は本当に素敵だった。











少し、ズレてしまった焦点。







きっと、その焦点が合ったとき無敵になれるよ。









ーーーー頑張れ!海ちゃん。
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