fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

記憶喪失物語。#21

「ちょっと付き合えよ。」

まだ授業が残ってるあたしに平然と言ってのけるバカ男。

「無理、無理!まだあたし授業あるもん!」

「てめ‥‥‥まさかその教師、男じゃあねえだろうな?」

「はっ?」

「‥‥‥次は体育だから、男の先生だけど?」

「さっそく、浮気するき満々かよ‥‥‥。」

ハア~~~っとわざとらしくため息をつく道明寺。

「ちょ、ちょっと!」

「何であたしが悪者みたいになってんの!」

「大体、どうこをどう間違っても、この学園内であんたを敵に回そうなんて思ってる奴なんか‥‥‥!」


「‥‥‥‥‥‥。」


ーーーーあれ?

そこまで言って気がついた。


「「ぶはっ!!」」


ぎょっとして、後ろを仰ぎ見るとお腹抱えて笑ってるお祭りコンビ。



「つくしちゃーん、それ、君が言っちゃあいけないとオニーサン思うな。」

「間違っちゃいねーが、お前が言うと説得力に欠ける。」

「何せ、唯一司を敵に回した女だからな。」



「‥‥‥‥‥なんだ?敵に回したって。」

きょとんとしてる道明寺。

「ん?知りたい?君たちのラブストーリー。」

「ラブ‥‥‥‥っ!?もごもごもご‥‥!」

「はーい、つくしちゃん。君はあっちでお菓子でも食べよっか。」

「ふんん~~~んんん~~~っ
!!!」

何を言い出すか分かったもんじゃない西門さんを止めようと思ったのに、美作さんに口を塞がれた。

「ままま、司には俺がきちんと教えといてやるって☆」

バチッと、ウインクをあたしに投げつけた西門さん。

「オイッ!お前ら、牧野に気安くさわんじゃねえっ!!」

「お、司。そんなこと言ってると教えてやらねえぞ?」

「‥‥‥‥‥っ!いらねえよ!!」

「‥‥あっ、こら!」




「ーーーー牧野!逃げるぞ!!」



西門さんを振り払ってこっちに向かって走って来る道明寺。


自然と、あたしの口を塞いでいた美作さんの手が離れて、差し出された左手に自分の右手を伸ばした。


「牧野、行くぞ!」


こっちに向かって来る道明寺の表情は、何処かで見た事のある顔だった。


いつ、見たんだっけ‥‥‥?



ーーーーあ。そうか。



これは、あの時のデジャヴュ‥‥‥?


『牧野、いくぞ!』


『うんっ』


丁度、道明寺が刺される一瞬前。


いつもいつももうすこしのところで掴めなかった手が。


再び、あたしに向けられる。


あたしはあの手を掴み切れるのだろうか。


‥‥‥‥いや、違う。


あたしは今度こそ掴み切らなきゃいけない。


でないと、永遠にこの暖かくて優しい手を失ってしまう。


ーーーーそう、思うのに。


地面から足が離れない。


このあとの惨劇まで再現されてしまうのではないかと、勝手に体が震え出した。




こわい‥‥‥





怖い‥‥‥!





恐い‥‥‥っ!!









ーーーー恐怖から耐えきれなくなって、ぎゅっと目を閉じてしまった。









すると。



「なに、やってんだ!!」



ーーーーパシッ



「‥‥‥行くぞ!!」





温かい体温が掌に伝わる。




震えていた身体も嘘みたいに止まって、握られた右手が引っ張られる。



その勢いで足が活動を再開し、大地を踏みしめた。



「‥‥‥ったく、グズグズしてんなよ!」



ーーーーまただ。



今度はあたしから、あんたを拐ってやろうって思ってたのに。



「せっかく二人きりなのに、あいつらに邪魔されてたまるか!」






いつもいつもその暖かい手で。



強引に



乱暴に



あたしを拐いに来てくれる人。





******





「‥‥‥‥二人きりになれる所行こうぜ。」


漸く、走っていた足を止めた道明寺。


「‥‥‥いいよな?」


首を傾げてあたしに聞いてくる。


「!!」


ーーーーちょっと、卑怯くさくないか?


「‥‥‥い、いいけど。変なことしないでよね。」


ちょっと可愛い道明寺。


こっちが反応に困る。


「‥‥‥?変なことはしねぇよ。俺はいたってノーマルだからな。」


「!?」


「違っ‥‥‥!そういう意味じゃなくて‥‥!!」

「てゆーか、あたしもいたってノーマルだから全然アブノーマルって訳じゃないし‥‥‥っ!」

‥‥‥あぁ~、何を言ってるんだ!?あたしの口は!


慌てて否定していると、


「‥‥‥ブハッ!」


隣から吹き出す音が聞こえた。


「ーーーー!?」


驚いて振り向くと、肩を震わせて笑ってる道明寺。


ーーーーからかわれた!!


コイツッッッッ!!!!


許さんッッ!


「そうかそうか。おまえもノーマルか。」

「じゃあ、ノーマル同士相性良いかもな。」

「~~~なんのよっ!」

悔しくって、ひとりで道明寺を睨みつける。


「おーこわ。んなに睨んでんじゃねえよ。」


「てか、‥‥‥‥‥決まってるだろ。」


スッと、道明寺の頭があたしの顔付近に落ちてきた。




「今日は、ず~っと一緒にいようぜ‥‥‥?」




「!!!!」



耳に、直接吹き込まれた言葉は、あたしの思考回路を止めるには十分な威力を発揮した。





******






その頃、置いていかれたF2はポカンとただ立ち尽くしていた。



「‥‥‥なあ、あきら。」


「‥‥‥んっ?」


「俺らは一体何しにきたんだっけ?」


「‥‥‥司に、重大なお知らせをしに来たんだったな。」


「そうだ。こんなこといきなり牧野に知れたら司の命の危機だと思って、知らせに来たんだよな。」


「おお。大事なデートドタキャンしてまでな。」


「それなのにあいつらは、今、駆け落ちする映画の男女のように、人の話も聞かねーで逃げていった。」


「その通りだ。総二郎。」


「じゃあ、司にどんな事が起こっても最善を尽くした俺らに責任は無いっ、と。」


「当たり前だ。」


「「‥‥‥‥‥‥。」」


顔を見合わせた二人は、にやっと笑う。





「「ま、俺らの話を聞かなかったあいつらが悪い♪」」




そう言って、意気揚々と各自キャンセルした女の子達に連絡を入れ、楽しい楽しいデートに出掛けて行った美作と西門であった‥‥‥。
スポンサーサイト