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記憶喪失物語。#27

ーーーー誰かが、泣いてる‥‥‥?












『おかあさーん‥‥‥。』






小さい、ちいさい声が遠くから聞こえた。










姿は見えないけど、幼い子供が確かに泣いてる。



『ボク‥‥‥どうしたの?』



泣き声が切なくなって、キョロキョロしながら尋ねた。



『おねえちゃん‥‥。』



小さい男の子の足音がこちらに駆け寄って来た。





ーーーー恥ずかしいのか、キャップを深く被ってて表情は見えない。



すると、



両手を必死にこちらに伸ばして、手を繋げと強要してきた。


『ん?どうしたの?迷子かな?』


その姿があまりにも可愛くて、あたしはとっさに手を繋いであげた。


『違う‥‥‥。僕じゃなくてアイツらが迷子なんだ。』


涙声で精一杯強がるこの意地っ張りな子供は、どっかの誰かさんみたいで。


『そっか。じゃあ、迷子の皆探さなきゃね。』


ーーーー男の子は、あたしの左手をぎゅっと握ってコクンと頷いた。


素直じゃないけど解りやすいほどに愛情を求めてる姿がよく似てて、愛しいと思った。



『‥‥‥おねえちゃんは、なんでこんなトコにいるの?』

『えっ?』

『おねえちゃんも、迷子なの?』

『えぇ‥‥‥っと‥‥。』


ーーーーそういや、ここどこなんだ?



『おねえちゃん。おねえちゃんも帰らなきゃ。』

『うん‥‥。そうしたいのは山々なんだけど、どうやって帰ったらいいのか‥‥‥?』

『きっと、待ってるよ。』

『みんな待ってる。』

『‥‥‥そう言えばキミ、名前は?』

『僕?』

『うん。』

『おねえちゃんは、知ってるでしょう?』

『あれ?あたし聞いたっけ?』

『違う。』

『僕はいつでもおねえちゃんの近くに居るよ。』

『だから、早く目を覚まして‥‥』

『?‥‥‥‥どういうこと?』


そこから、目の前が霞んできて。

だんだん、しっかり立っているのかどうかもよくわからなくなってきた。


『おねえちゃん‥‥‥?』


意識が遠のきそうになった最後に、やっと男の子のシルエットが見えた。






『‥‥‥あ。』






あなたは‥‥‥‥?









最後の最後に見えた、キャップを外した男の子の髪型。



『ぷっ‥‥‥。』





ーーーークスリと笑って。









『やっぱり、子供のころからくるっくるだね‥‥‥。』





ーーーーゆっくり目を閉じた。










******





「牧野っ!!」


「‥‥‥‥。」


「おい!大丈夫かっ!?」


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ん。」











『もう、大丈夫でしょう。』



病院の先生がそう言って、酸素マスクが外された。

あたしが目を覚ました後直ぐに、軽い検査が行われて。

術後の経過は、特に以上なしと言うことだった。



『1週間は絶対安静ですので、絶対に無理はなさらないで下さい。』



そう言葉を残した先生が出ていった後、道明寺に痛い位に抱き締められた。



「ちょちょちょ‥‥っ!?」


いきなり抱き締められたあたしは驚いて、軽く抵抗した。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。」


聞こえていないのか、返事もしなければ離してもくれない道明寺。

あたしは諦めて、道明寺の背中にソッと腕をまわした。

「もう、大丈夫だよ‥‥‥?」

耳元でささやく。


「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥かった。」


聞こえてきた、か細い声。

声は震えていて、今にも泣き出しそうな声だった。


「‥‥‥ごめんね?もう、大丈夫だって。」

「先生も言ってたでしょう?」

「‥‥‥‥おう。」

「しぶといお前が、簡単に死ぬわけねえかんな。」


そう言いつつも、強く抱き締めたまま離してくれない道明寺。


(ーーーー全く。言ってる事とやってる事が違うよ‥‥。)


頼りない声で精一杯強がる大きな男。


普段はあんなに自信過剰で、不安の欠片なんかひとっつも見せないプライドの塊みたいなヤツなのに。


不謹慎かも知れないけど、あたしが倒れたらこんなに弱くなっちゃうこの男が心底愛しいと思った。











ーーーーねえ。


あたしを呼び続けてくれたのはあんただったんだね?








左手から伝わる体温が、あたしにそう教えてくれた。








******



「類っ!」

「協力しろってどうゆうことだ!?」

「そうだ、一体なに企んでやがる!?」

類の理解しきれない言葉に、二人は食ってかかった。

「‥‥‥二人とも、ちょっと落ち着いてよ。」

「たいしたことじゃないんだ。順を追って話すから。」

「あ?‥‥‥あ、あぁ。」

「‥‥‥そうだな。悪い。」

「‥‥‥牧野を刺した犯人について、ちょっと調べてたんだ。」

「「えっ?」」

「‥‥‥牧野を刺したのは、現地のドラッグ中毒者だろ?」

「うん。ラリった犯人が司に襲いかかったんだよな?」

「庇った牧野が怪我しちまったけどな‥‥‥。」

「そうだね。つまりは‥‥‥無差別の殺人未遂だ。」

「ああ、許せねえよな。」

「全くだ。牧野が助かったから良かったものの‥‥‥。」



「‥‥‥うん。牧野が助からなければ俺だって許さなかった。」


「「‥‥‥‥‥!!」」


ーーーー沸々と沸き上がるような類の静かな怒り。

普段見せない激しい感情だけに、俺たちはきっと二人とも、背筋が凍ったと思う。


「‥‥‥でも、犯人はその場で捕まったんだろ?」

「あー。現行犯逮捕だって聞いたぜ。」


ーーーーそう、牧野の意識が戻るまでその事だけがせめてもの救いだったんだ。


「それが、なんか変だなって思ってさ。」

「「‥‥‥どこがだよ?」」

「真夜中のNY 。無駄に広い公園。目撃者は誰一人居ないのに?」












「「‥‥‥‥‥あ。」」
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