fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

記憶喪失物語。#30 【完】

「類っ!」

「えっ?花沢類っ!?」

「なんで!?」

ーーーー病室に入って来たのは類。

「‥‥‥なーにが酷いって?類。」

納得のいかないような表情の司。

「酷いじゃん。俺だって牧野の驚いた面白い顔見たかったのにさ。」

「面白いってなにっ!」

「ばーか。こいつは全部俺のモンなんだよ。」

「俺のモンに何を言おうが俺の勝手だし、それに‥‥‥」

「‥‥ふがっ!?」

ガバっと自分のほうにつくしを引き寄せ、誰にも見せないように胸にしまいこんでしまった。


「お前に見せたら減るからぜってえ見せてやんねえ。」


その間も、腕の中で暴れ続ける女を押さえこみながら独占欲丸出しの大きな子ども。


「‥‥‥‥‥‥‥それは残念。」


クスッと笑って、さほど気にしていないような素振りの類。


「‥‥‥っこら!窒息死するっつーの!」

力がいくらか抜けた腕の中から、必死な形相をした女が抜け出した。

「‥‥‥お。わりい。」

「わりいじゃないわよ全く!」

「んな怒ることかぁ?」

「怒るわ!あんたのバカ力で絞められたら大抵の人間は天国逝っちゃうんだからね!」

「天国ならいーじゃねーか。」

「良いわけあるかっ!」





「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ぶっ。」

ーーーーいきなり吹き出した類。

「‥‥‥なに、笑ってんだよ。」

司はジロリと類を睨んだ。

「だって‥‥‥‥プッ。」

「二人とも、漫才してんじゃないんだからさ。」

「「誰が漫才だっ!!」」

「ま、いいや。」

「それより司。」

「‥‥‥んだよ?」

「俺たち先に日本に帰ってるからさ。」

「‥‥‥もう帰んのか?」

「うん。牧野ももう大丈夫そうだし、総二郎たちはデートで忙しいって。」

「えっ!皆居るの?」

「うん。三条と大河原もね。」

「ウソッ!?ああぁ~~。皆に悪い事しちゃったなぁ~~!遠路遙々NYまで‥‥‥もう、こんなにピンピンしてるのに。」

「死にかけたんだから、気にしないでいいんじゃない?」

「飽きねーなぁ‥‥‥あいつらも。」

「それに俺も、みたいテレビあるんだよね。」


ーーーーデートはともかく、あたしはテレビに負けたんかい‥‥‥‥。

いや別に、いいんだけどさ。


「ん~‥‥牧野が俺に居て欲しいんなら、俺は構わないんだけど。」

「‥‥えっ!?」

やだ、まさかまた声に出てたっ!?

つくしはびっくりして類を凝視した。

「ーーーー俺も、命は惜しいしね。」

「‥‥‥は?」

「後ろの猛獣に、噛みつかれたくないから。」

言われて初めて、背後の視線に気づいた。

そろり、そろりと後ろを振りかえる。

その先にはものすごく不機嫌な顔があって、背筋がゾクッとした。


「類、てめーもう帰れ。」

親友になんたる言い様だろうか。

「うん。じゃあね。」


ーーーーしかし、怒ることもなくあっさりと帰って行った類。


「‥‥‥あ、そうだ。」


「うぉっ!帰ったんじゃなかったのかよ!」

ーーーーしかし、5秒後すぐに帰戻ってきた。

「これ、渡すの忘れてた。」

「はい。」

「‥‥‥いちいち、忘れもんが多いやつだな。」

「そんなこと言うと、あげないよ。」

「けっ、別にいらねーし。」

「じゃあ‥‥‥これは牧野にあげようかな?」

「?」

「なあに?コレ。」


「俺らF4‥‥‥じゃなくて、F3からの招待券。」


「‥‥‥‥‥‥しょう??」


「それ、2名まで入れるんだけど‥‥あの、あんたの優紀とかいう友達でも連れてきなよ。」

「司は‥‥‥要らないみたいだし。」

「!?」


チロっと司を見た類。


司は、嫌な予感がした。


「‥‥おいっ、牧野!それ寄こせ!」

「‥‥やだよ。あたしが貰ったんだもん。」

「ところで、なんの招待券?堅苦しいのだったら行かないからね。あたし。」

「‥‥そう言うと思って、仲間内しか呼んでないから大丈夫だよ」

「ほんと?じゃ、行こっかな!」

「おいっ牧野!なに勝手に行く約束してんだ!俺は認めてねえぞ!?」

「あんたに認めて貰う必要ないもーん。」


プイっと、顔を逸らしたつくし。











「ふっ、ふざけんなあああああ!!!!」











司の怒号が、NYで一番大きい病院内に響き渡った。







******


一週間後





ーーーーガラッ!!







「‥‥‥準備、出来たか?」


病院のドアを開けて、道明寺があたしに声を掛けた。


「うん。バッチリ!」


っていっても、手ぶらで来たあたしの荷物は道明寺が強引に購入した服位なんだけど。






ーーーー今日は、退院の日。

病院を出たその足で、日本行きの飛行機に乗って帰る。




「ったく、忙しねえなぁ。退院したばっかだっつーのに。」


病院を出て二人で並んで歩く。


「‥‥‥それ、貸せ。」

服がたんまり入った大きなショップバッグを寄越せと催促してきた。

「え?いいよ別にっ‥‥って、ああっ!」

「さっさとしろ。」

「う"っ‥‥。」

「あり‥‥がと。」

断る暇もなくあたしから強引にひったくったもんだから、仕方なくお礼を言った。


「‥‥‥おう。」


返事をした道明寺の顔も少し赤かった。









「なぁ。」

車内で、でかい身体を折り曲げた道明寺があたしに話を振ってきた。

「んっ?」

まだ少し赤い顔を誤魔化すように、ブスッとした顔で答える。

「このまま、もう少しゆっくりここに居ねー?」

「‥‥‥あのね。今は別に夏休みでもなければ冬休みでもないし、春休みでもないのよっ!」

「どーでもいいこと気にすんな。」

「良くないの!ただでさえ一週間以上休んじゃったんだから!」

「学校の授業だいぶ遅れちゃっただろうし、バイトだって優紀や女将さんに迷惑かけちゃったし‥‥‥。」

「おっまえ、またバイトかよ!?」

「死にかけたんだぞ。せめて、後1か月は安静にしてろ。」

「あんたは医者かっ!」

「それに、1か月もバイト休んだらうちの家族野垂れ死にしちゃう。」

「んなもん、俺がどうにでもしてやる。」

「‥‥‥‥たとえば?」

「そうだな‥‥‥。」

「例えば、お前んちのアパート買い取って、アパート建て替えて、使用人つけてやるよ。」


「ぜえぇったい、ヤダ。」


即答。


「なんでだよ。いっちゃん楽じゃねーか。」

「‥‥もう喋んないでいいよ。アンタは。」

「んだとコラッ!」



ーーーーキキィッ!!



「あ。着いたみたい。」

「お?おぉ。」


空港に着いた二人。


「あーーっ。なんだか昨日ここに来たみたいな気がするー。」


つくしが伸びをしながら言う。


「そっか?」

「うん。」

「ちょっとだけ、浦島太郎の気持ちがわかったかも。」

ーーーーあははと言ってつくしは笑った。

「‥‥‥‥‥‥ウラシマ??」

「あ~‥‥ハイハイ。この話は帰ってからね。」


ーーーんっとに、この男は‥‥‥。


つくしは思わずため息がでる。


「今、しろよ。」

「無理。ぼんやりとしか覚えてないから。帰ったら押し入れの中でも探してみるわ。」

「は?押し入れの中にウラシマがいんのかよ?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥まあ、似たようなもん。」



いつものあほみたいな会話。


こんな毎日が愛しいと思えるあたしは、ちょっとバカなのかも。


「なに、笑ってんだ。」


「置いてくぞ。」






差し出された左手。


いつもいつも上手く掴みきれないあたしを、辛抱強く待っててくれてありがとう。


「ねえ?道明寺?」


少し前を歩く大きな背中に喋りかける。


「‥‥‥何だよ。」


繋がれた手の先にあった顔が、ちらっとこちらに振り返った。


ーーーーすぅっ。


大きく息を吸い込んでから。










「大好きだよっ!!」





空港中に響きわたるくらいの大声で叫んでやった。



「ちょっ、おまえ‥‥‥!!」


真っ赤になった顔すらも大好きで。


「こんなトコで言うんじゃねーよ!」


自分がするのは平気なのに、されるとこんなに慌てちゃって。


「大丈夫だよ。ほとんど外人だから通じてないもん。」

「‥‥‥‥‥‥‥羽田着いたらもう1
回言え。」

「絶対イヤ。」


暫くにらみ合いが続いた。



「~~~~んな事してねーで、さっさと帰んぞ。日本に。」

根負けした司が再び手を取って歩き始める。

「‥‥‥‥‥。」

「牧野?」

反応がないつくしに司は歩みを止めて振り返った。

「‥‥‥‥‥もう、一回言って?」

「あ?」

「‥‥‥‥‥‥!」

いつになく、つくしが必死な目で訴えてくる。



「‥‥‥‥‥あたしの為なら、なんでも言ってくれるんでしょう?」

そう言った表情は俯いてて見えなかったが、声は今にも泣き出しそうで。







ーーーーああ。



ーーーーこれか。



司は過去の思い出と、ここNY、そしてさっき何気なく言った言葉を反芻し、答えにたどり着く。








「早く、日本に‥‥‥」








「一緒に帰ろう。」








ーーーーああ。やっとだ。



やっと、この言葉を貰えた。










いつのまにか滲んでいた涙を、道明寺がハンカチで優しく拭き取ってくれた。

ハンカチから道明寺のコロンの匂いがして、凄い安心して。

このハンカチ頂戴って言ったら、すごくびっくりしてた。

もっとイイモンやるって言われて、なんかやらかしそうだから丁重にお断りしたら、ちょっと不機嫌になって。

でもそのうち機嫌も治ってた。








ねぇ、道明寺。


なんにも持ってないあたしだけど、あんたの隣にいるだけで、底なしのパワーが沸いてくるよ。


記憶がなくなってもあたしを選んでくれたあんたに、あたしは何が出来るかな?


わからないけど、少年みたいな笑顔でずっと笑っていてね。





「げ。」

「‥‥‥ヤな事、思い出した。」

「なによ?」

「お前空港で‥‥‥類にキスされてたよな。」

「あっ!」

「‥‥‥ヤバイって顔したって、もう遅えんだよ。」

どんどん迫ってくる道明寺。

「いやいやいや、ここ空港の中だし!」

逃げ惑うにも、手をガッチリと掴まれてしまった。

「‥‥安心しろ。ここのファーストは、俺らしかいねえ。」

「‥‥‥‥‥うそ。」




「たっぷり、消毒してやるよ。」



にやっと笑った道明寺。


冷や汗を流してるあたし。














嗚呼、神様‥‥‥‥。







ーーーーどうか無事に帰れますように。












             《fin》
スポンサーサイト



6 comments

非公開コメント

0 trackbacks

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)