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記憶喪失物語。#3

つくしが次に目覚めたのは暖かい布団の中だった。

「はれ……?」

うっすらと目を開けて、まだぼんやりしている意識を覚醒させようと軽く頭をふるう。

「あたし………?」

自分が居たのはいつもの家の布団ではなく、ベッドなのだということが上半身を抜け出した時に感じたベッドのスプリングでわかった。

「どこ?ここ………?」

そもそも、あの後の記憶がない。

(あの後、どうしたんだっけ?)

まだ覚醒しきってない頭をフルに使って思い出そうとする。

するとだんだん、覚醒し始めた 頭が動き出す。

みるみるうちに つくしの顔が真っ赤に染まっていく。

「ヤバい……」

恥ずかしすぎる………っ!!

こともあろうに、あの3人の前で子供の様にギャン泣きしてしまった。

うっわ~~~!!この後どんな顔して会えばいいのよぉ(涙)

全てをさらけ出した恥ずかしさに悶えつつ、だがそれをしたことによって軽くなった心に気づく。

鏡がないから確認出来ないけど、泣き喚いた目は腫れちゃってきっとすごい顔してるんだろう。

泣き過ぎたせいで、頭もガンガンする。

でも。

何だか久々に気分が良い。

今なら何でも出来そうな気すらした。


******


辺りを見渡すと外は真っ暗で真夜中の様だ。

部屋の明かりは消されていて、ベッドサイドのランプだけがついている。

カーテンも閉められているのか、真っ暗なせいで窓の位置も確認出来ない。



ここはあたしの家じゃないのは明らかだった。

ただ、最近バイトのシフトを増やしたせいで睡眠時間は少なかった。

朝は学校、夕方からは団子屋、それが終わってから深夜までファミレスのバイト。

そんな無茶するなって、進に怒られだけど。

家に帰ってもよく眠れないのは一緒だったから。

だったら疲れたほうがよく眠れるんじゃないかと、お金も稼げるし一石二鳥じゃんみたいな感じで。

今まで道明寺に言われて、唯一休みを取っていた日曜日もシフトを入れて。

「やっぱ無理か………」

あんたの言う通りだったよ進……

明日は団子屋も定休日だし、とりあえず1時間だけ。

1時間だけベッドをお借りして帰ろう。

このドでかいベッドは金持ち集団F3の家のどれかだろう。

「おやすみなさい……。」

急速に襲ってきた疲労と眠気に勝てず、腰をかけていたベッドにそのまま倒れこんで、つくしは深い眠りについた。

その寝顔は屈託のない子供みたいな顔だった。

そのベッドが道明寺家所有のものであるとも気づかずに。



*****


ふ、と。

真夜中に目が覚めた。

もう一度目を瞑って寝ようとしたがなかなか寝付けず、完全に目が冴えてしまった。

使用人にアルコールでも持って来させようと内線を使うが、誰も出やがらねえ。

「……チッ。」

舌打ちをひとつ打って、部屋から出てリビングに向かう。

リビングに向かう廊下、光が漏れている部屋があった。

「起きてんじゃねーか………」

使用人が24時間体制で待機している部屋。

直ぐ様怒鳴り込んでやろうかとも思ったが、なんとなく気が逸れてやめた。

次に気になるものがあったから。

東側の角部屋。

別に明かりが漏れてた訳でもないけど、無性にそこで眠りたくなった。

そこでなら眠れると思った。

無意識に足もそちらに向いていた。



ドアに手を掛けて、ゆっくりと開ける


部屋の中は異様に真っ暗で、ベッド脇のサイドランプだけついていた。

ドアを開けた瞬間からふんわりとした香りに胸がざわつきだす。

誘われるようにして、足がベッドに向く。

らしくもなく、ばくばく脈打つ心臓を落ちつかせようと深呼吸を
一度してからベッドに腰を描ける。





誰かが、寝ている。





耳を澄ますと、ちいさな寝息が聞こえる。

震える手をその何かに伸ばして触れようとすると、ちいさな寝言がきこえた。

「おねがっ…、………いで」

聞き取れずに、思わず伸ばした手の先にあったちいさな手に触れて上から包み込むように握りしめる。

「も…、離れ……ゃ、ぁ……。」

それを聞き取ろうと声がする方に耳を寄せていたが、驚いて寄せていた顔と手をパッと離した。






な  い  て  い  る………?







だんだん目が暗闇に慣れてきた。声と手のちいささから女だとはわかっていたが、どうしても顔を確認したかった。

暗くてあまり見えないが、頬に触れると少し濡れていた。

そのまま頭を撫でてやると、女は安心しきった顔になって、側にあった俺の服の裾を少し掴んで。

うっすらとつくしが目を開ける。









道明寺のコロン‥‥‥‥?











ああ、そうか。


これはきっと夢なんだな。


だって、道明寺が笑ってる。







顔は暗くてよく見えないけど、頭を撫でてくれる手がとても優しいから。

そうだ。

あたしの幸せはこの暖かい手に全て詰まってたんだ。

そんな台詞、あの頃のあんたに言ったらどんな顔したのかな?

ねえ、道明寺。











     「すきだよ……」










それだけ言うと、つくしはすやすやと眠りについた。












不思議と、いつもなら感じる嫌悪感が掴まれた服の裾の手には感じられなくて。


それどころか胸が詰まったようなワケわかんねぇ気分になった。


その後俺は、自分でも信じられないが、何故か無意識にその女を強く抱きしめているうちに、急激な眠気に襲われてそのまま朝まで眠ってしまった。


******

チュン、チュン♪

小気味良い鳥のさえずりが、カーテンの隙間から僅かに覗いている太陽の光とともに朝が訪れた事をあたしに伝えた。


「んんぅ~~っ」


暖かい布団の中で小さく身動ぎをして、寝返りをうつ。

仰向けになった体制からうつ伏せに転がって。

側にあった枕を手繰り寄せて、顔を埋める。



「‥‥‥‥‥。」



ちょうどいい柔らかさの枕。

羽のように軽い、あたしを包んでくれてるお布団。

しかも、鼻腔をくすぐるシーツのいい匂い。

恐ろしく居心地が良い。

ああ、この場所から出たくない。

「‥‥‥も、ちょい。」

誰もいないのに誰かに言い訳するように呟いて、再び深い眠りにつこうとした。

その時。

ぱっちりと大きな瞳を見開く。

うちの布団………こんなに軽かったっけ??

その疑問が頭を過るのと同時に、背中にひやりと悪寒が走った。







「ぎぃやあぁぁぁああああ!!」



何これ!?


何これ!?


何これ何これ何これ何これぇ~~~!?!!?

やっと自宅じゃない事を思い出したつくしはパニックになって、ぴょんっと飛び起きた。


そして朝から力いっぱい叫んだ。

「う、うわあ!!あ、あたしそのまま寝ちゃったんだ!!!」

「そそそそうだ!今何時!?」

「けけけケータイ!あたしの鞄はっ!?」

言ってからキョロキョロと辺りを見渡す。

「って、なぁあいい~~~~!!」

「ここはどこ!?あたしの鞄は、携帯は~~~!?」

相変わらず思っている事がだだ漏れなつくしは、くるくると部屋中回りながら叫んで頭を抱えた。

「うるせえっ!!!!」

つくしとは別の意味で頭を抱えた凶悪な面したベッドの住人が、これまた朝から力いっぱい叫んだ。
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