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ライオン #7

 ヤ ラ レ タ ‥‥ 。










「何してんだ。行くぞ。」

「あ、あはははははは。」

「あ、あたし、帰るね。」

「はっ!?何言ってんだよ。みんなお前待ってんだぞ。」

「ちょ、ちょっと‥‥腹痛が‥‥。」

嫌な予感がした気がした後、なんとなく帰りたくなって、つい口から嘘が出てしまう。

「あ!?腹痛えのか!?」

「う、うん。だから家に帰ってゆっくり‥‥したいな、なんて。」

「ばか、お前。お前んちよりウチが目の前にあんだろ。早く来い、主治医に見せてやる。」

「ええッ!?いい、いい!」

「つべこべ言うな。病人は黙ってろ。」

「や、やだ!医者に見せるほど、大したことないって!」

「‥‥‥‥‥そうか?」

「そうそう!ほら、元気だし!」

医者になんかに見せられても、どこも悪いとこなんかないし!それに、道明寺家の皆さんってただでさえ何でもかんでもしたがるんだからッ!!具合が悪いなんて言ったらきっといつも以上にとんでもない事になっちゃうじゃん!

焦ったあたしは身ぶり手振りで元気をアピールする。


「‥‥‥‥‥本当か?」

道明寺の疑いの眼差し。

「ほんと、ほんと!」

ーーーーあ"あああ~っ、体調悪いって言ったり元気をアピールしてみたり‥‥‥我ながら、あたしは一体なにがしたいんだろう?

ガッツポーズをしながらも、心の中はかなりブルーだった。



「‥‥‥‥じゃあ、ウチに来れるな。」



そんなあたしを見てにやっと笑った道明寺。

「!!」

ーーーーまさかっ!?

「あ、アンタ!騙して‥‥‥!」

「お互い様だろ。見え透いた嘘つきやがって。」

「~~~~っ!」

「お前の猿まねに騙されるヤツはそうそういねーよ。ほら、来い。」

「うるさいバカッ!」






そんなこんなで、アレよあれよと言う間に連れて来られた道明寺邸。


『‥‥‥‥‥今晩、泊まってけよ。』


そう囁いた声がやけに色っぽくて。

それまでは素直に行く気満々だったのに、その声を聞いた途端にあたしの頭の中のセンサーが《危険》だと告げていた。

なんとか抜け出せないものかと、あれからもいろいろ画策したけど‥‥‥‥。

『お前、ウチに来るっつったよな?この俺に嘘つくつもりか?』

最終的にそんなことを言われちゃあ、行かないわけにはいかないじゃないか。

『ううう、うっさいわね!行くわよ!行けばいいんでしょ!』

『おっし♪』

ーーーーうんうん。と頷いていた道明寺。

引き摺られるように連れて行かれて、仕方なくあたしは従った‥‥‥んだけど。








"パン!パパパパァンッ!"


道明寺邸の門をくぐって玄関を開けた瞬間、クラックカーのような破裂音に包まれた。

びっくりしたあたしは咄嗟に目を瞑って耳を塞ぎ、耳鳴りのような音が静まるのを待つ。

そうしていると、あたしが目を開けるのも待たずに大人数での大合唱が奏でられる。

「「「「牧野様!!!!」」」」

「「「「ようこそ!道明寺邸へ!!!!」」」」

ようやく目を開けた先に見えたものは、大勢の使用人。

(ーーーーっつーか、こんなに居たんですね‥‥‥。)

次に、唖然としているあたしの目に飛び込んで来たのは‥‥‥



『祝☆牧野さま!道明寺へようこそ!!』


と、書かれた横長の垂れ幕。思わず、スーツのジャケットの肩の部分がずれてしまった。



ーーー道明寺へようこそって‥‥なんだ?


しかも、初めて来たわけじゃないのに今更『ようこそ』って‥‥‥。



ーーーー何を考えている!?


「お前がここに来るの知って、こいつら張り切ってんだよ。」

「‥‥‥何でよ?」

あたしに説明するように、信じられない言葉が聞こえてきて、勢いよく後ろを向いた。

「こいつら、お前の為に就職祝い兼ねたパーティーするって昨日からせっせと準備してたみてーでよ。」

「ま、コイツらが勝手にやったんだし、別に参加する義理もねえけどな。」

「‥‥‥‥‥さ、どうする?」

「‥‥‥‥!」

身体を折り曲げて牧野の顔を覗きこむと、唇を噛み締めながら睨まれた。




ーーーーお前が悪ィんだ。

俺に黙って独り暮らしなんかしようとするから。

もちろん部屋が決まってないのも、俺がこの辺り一帯の不動産屋に規制をかけたからだ。

『牧野つくし、及び牧野家の者が来たら怪しまれないように断っておけ。』

最近お前が挙動不審になってた時から、つけさせてるSPに逐一報告させてた。

不動産屋に通ってたらそりゃ、理由はひとつだろ?




「いつから、知ってたのよ。」



ーーーーバカのくせに『何で俺に言わねえんだ!』とかって手の込んだ嘘までついてっ!


「あ?何の話だ?」

「‥‥‥‥‥‥‥嘘つき。」

「‥‥‥‥‥‥‥お互い様だろ。」


意地悪そうに笑う道明寺。

いつから知ってたのか教えてくれそうもないけど、断られ続けた部屋探しの真相は、きっと‥‥‥。





「はあぁ~~~っ‥‥。」



気付かれないように吐き出したつもりの息は、思ったよりも大きかった。

あたしはこのガキみたいな顔してる坊っちゃんに、またしてもやられてしまったみたいだ。









******


「おや、つくし。」

「あ、タマ先輩!」

リビングに着くと、久々にあった使用人頭・タマに、つくしは駆け寄って行った。

「全く‥‥‥薄情な子だねぇ。最近姿も見せないでどうしてたんだい!」

「あ、ごめんなさい。就活とバイトばっかで来れなくって。」

「ま、いいんだけどね。アンタが坊っちゃんと仲良くやってくれてさえいれば邸の安全は守られたも同然だよ。」

「何、言ってんですか‥‥。」

「それよりアンタ、坊っちゃんはどうしたんだい。」

「え?さっきまで、確かここに‥‥。あれ?どこ行ったんだろう?」

つくしはキョロキョロと周辺を見渡した。

「‥‥‥ま、そのうちアンタの匂いでも察知して出てくるよきっと。」

「匂いって‥‥‥。」

「あたしゃ、餌ですかい。」

「似たようなものだろ。」

ーーーー吐き捨てるように呟いたタマ先輩。

「とにかく、アンタの部屋は坊っちゃんの隣の部屋を使いな。」

「‥‥‥部屋って?」

「バカな子だねぇ。毎晩、坊っちゃんの部屋で寝るつもりかい?」

「ハアッ!?ま、毎晩って‥‥‥」

ーーーー何を言い出すこのババァッ!!

「あたしはそれでも良いけどね。掃除する部屋も少なくて済むし。」

「ただ、世間体ってものがあるんだよ。覚えておきな!」

"バシィッ!!"

「アイタッ!」

ご自慢の杖で一発、気合いを入れられてしまった。

「じゃ、あたしは仕事があるからね。わからない事があったら、その辺の使用人にでも聞きな。」

ーーーークルッとあたしに背中を向けて去ろうとする。

「せせせ、センパイ!待って!!」

「とりあえず、わかる事がひとつもないです!!」

「なに‥‥‥言ってんだい?アンタ、この邸の事もう全部忘れちまったのかい。」

ーーーー呆れ顔のタマ。

「そ、そうじゃなくって!な、なんであたし、ここにずっと泊まるみたいに‥‥?」

「‥‥‥‥ずっと、泊まるわけじゃないよ。」

「あ‥‥‥なんだ。」

つくしがホッと息をついたのも束の間。






「あんたはココに住むんだ。」

「いええ"ッ!?」

「期限は‥‥‥‥そうだね。」






「坊っちゃんの気が済むまでかね。」



ーーーー悪い顔してるタマ先輩。


笑ってはいるのに、目がマジだ。







「‥‥‥‥‥‥‥冗談ですよね?」



ーーーー冗談であることを切に願った。
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