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ライオン #8

「おはようございます。牧野さま。」

「お、はようございます‥‥。」


ーーーー晴れ渡る晴天。爽やかな朝に相応しい笑顔で、あたしを起こしにやって来た使用人さん。

っつーか、あたし、ひとりで起きれるんだけどな‥‥‥‥。

どこでもすぐに寝れるし、基本的にいつも寝起きがいいあたし。

ひと月前から始まってしまったこの生活。流石のあたしも‥‥‥1週間を過ぎた頃から、もがくのはもうやめた。

「ご朝食の準備は整っておりますが、どちらで召し上がりますか?」

「あ、すいません。今日も部屋でいただきます。」

「そう‥‥‥ですか。」

ーーーーすごく残念そうな顔をしたお手伝いさん。

「ご、ごめんなさい。あたし、自分で持ってきます!やっぱり面倒ですよね!」

「いえいえっ!とんでもございません!それは、私共の仕事ですのでっ!!」

つくしは腰をかけていたソファから立ち上がり、急いでキッチンに向かおうとしたが、使用人はブンブンっと頭を振るい、慌てて止めに入った。

使用人が残念そうな顔をした理由をつくしはわかってはいたが、どうする事も出来ないでいた。

「では、お持ちいたしますね。」

「すみません。お願いします。」

ーーーーにっこりと笑いかける使用人だが、すまなそうな気まずい笑顔を向けられ、『あぁ、いったいいつまでに続くのやら‥‥‥』と部屋を出たあと、扉の外でため息をついた。








******


「牧野様は?」

問いかける使用人に、問い掛けられた使用人は、黙って頭を振って答えた。

「そう‥‥。」

「仕方ないといえば仕方ないのかしらね‥‥。」

「坊ちゃまの強引さもさることながら、牧野さまもちょっと頑固なところあおりだから。」

「「ねえぇ~~~~?」」

使用人ふたりは揃ってため息をつく。

「あれがちょっとなもんかい。」

「「せっ、先輩!!」」

不意に会話に参加してきた人物の声にビクッとなって後ろを振り向くと、やはりそこには センパイ の姿があった。

「全く‥‥‥。坊っちゃんも自業自得だよ。4年も離れてたつくしを傍に置いておきたいのも判らないでもないけど、あんなことするなんて‥‥‥。」

「「‥‥‥あ、あんなことっ!?」」

"ごくり"と唾を飲んだ二人。

好奇心で無意識のうちに目がキラキラと輝いた。

「い、いったい坊っちゃんとつくし様に何が‥‥‥っ!?」




「オイッ!!タマてめぇー余計なことペラペラしゃべってんじゃねーよッ!」

「‥‥‥あら、坊っちゃん。まだいらしたんですか。」

「当たり前だろッ!ここは、俺んちだ!俺がいて何が悪ぃんだよ!?」

「誰も、悪いなどと申しておりませんわ。その歳で耳が遠くなるなんて‥‥‥一度、病院に行かれた方がよろしいのでは?」

「うっせえ!てめーこそいい加減、老人ホームセンターにでも行きやがれ!費用は俺が全額出しといてやっからよ。」

「ほう‥‥‥?それじゃ、お言葉に甘えて久しぶりにホームセンターに行って犬でも買ってこようかねえ。」

「‥‥なんっ!?」

「坊っちゃんが全額出してくださるようだしねえええ~~~」

ジト~~~~~っと司を横目で見るタマ。

「ハッ、」

そんなタマを司は笑い飛ばした。

「タマ、お前はバカか!?なんで老人ホームセンターがペットショップになってんだよ!?いいか、老人ホームセンターってのは‥‥!」

「いや、バカはあんただから。」


ーーーースタスタスタ。


颯爽と、そんな二人の横を通り抜けて行く人影。

「牧野ッ!!」

コンマ一秒で振り返り叫ぶが、女の歩くスピードは止まらない。

「おい、待ってって!」

「‥‥あ。」

「!!」

だが、もう一度叫ぶと女は突然立ち止まった。司はホッとして走りかけていた足を止める。

「お前な?いい加減機嫌なお‥‥」

「タマさん!」

「!?」

しかし、呼ばれたのはタマ。

「‥‥‥なんだい?」

「あたし、コーギーが良いです♪」

「‥‥‥‥‥‥‥‥はいよ。」

「っじゃ、行ってきまーす!」

「‥‥‥‥さっさとお行き。」

「「い、いってらっしゃいませっッ!」」

なんとか見送れた使用人。




「‥‥‥‥‥。」

にっこりと、司以外に笑って邸を出ていくつくしを司は呆然として見送った。








******








やべぇ‥‥‥‥。

いい加減、充電切れだ‥‥‥。

一体いつから牧野に触れてねぇんだよ‥‥‥??








約一ヶ月、オアズケを喰らっている司はつくし不足で今にも倒れそうだった。


そもそも、コトの発端は‥‥‥


『ちょ、信じらんないッ!なんてコトすんのよお~!!』

つくしの目の前には、昨日まで住んでいたアパート。





‥‥‥‥‥‥の、見るも無残な残骸。


『あ?お前んちが部屋出たら、他の部屋の住人もちょーどほか行くんだとよ。だからうちで買い取ろうと‥‥。』

『そんなのどうせ、あんたが無理矢理追い出したんでしょーが!?』

つくしは司を"キィーーッ!!"っと睨んだ。

『人聞きの、悪い事をいうな。ちょっと頼んだだけだよ。』

『ほらッ!やっぱなんか無茶やってるじゃん!』

『‥‥‥?してねーって。ちょっとはした金渡したら、皆にっこにこして出てったぞ。』

『あ、あんた、お金渡したの?‥‥‥いくら?』

青ざめていくつくし。

『‥‥‥うるせーな。あんま多いとお前が怒ると思って、はした金だよ。大したこっちゃねえ。』

『ーーーーいいから!!いくらッ!?』

危機迫ったつくしの顔に、司は圧倒されてしまった。

『ひゃくまん。』

『‥‥‥‥‥‥‥‥ひゃ‥‥?』

『ひゃくまん。』

『‥‥‥え?ちょっと、まって?ええっと?』

『だから、ひゃ‥』

『うるさいッ!ちょっと黙って!』

『‥‥‥‥‥んだよ。』

司は聞こえていないのかと復唱したが、何故かつくしに怒られた。



『だめ‥‥‥目眩してきた。』

『おいッ!?大丈夫か!?』

クラクラとよろけるつくしに司は駆け寄るが、ポコッと頭を叩かれた。

『いてえなッ!』

『うるさいッ!あんたには痛い位が丁度良いのよ!』










まあ、そんなこんなで今に至る訳だが‥‥。





どうやら牧野は、取り壊したアパートの元住人に金を渡したのが気にくわなかったみたいだ。

そもそも俺がそんな事をしたのも、庶民は引っ越してきた時や出ていく時に"挨拶"っつーもんをするって、牧野が前に言ってたから。

今回はなんとしても、牧野の独り暮らしを止める必要があったし、何より牧野を俺の傍に置いておきたかったから‥‥‥不動産屋にストップをかけるほかに、アパートのほかの部屋の住人や、牧野に黙って牧野ん家の家族にも‥‥


『彼女は今やもう道明寺の、私の婚約者です。そのご家族であるご両親や弟も、私の家族も同然。』

『ですから、私の我が儘なのは百も承知ですがどうか、どうか住居を移り住む了承を頂けませんか‥‥‥?』

クソ忙しい時間割いて、牧野の家族に頼みに行ったんだ。

もちろん口止めもしてな。





牧野の代わりに、ほかの住人に挨拶するにも手ぶらって訳にはいかねーし、モノを選ぶ時間もねーし‥‥‥で、庶民感覚にあわせた現金を渡しといた。

だがそれが、逆鱗に触れてしまったようだ。

でも、渡しちまったものはもうどうしよーもねーし‥‥。

今さら、俺にどうしろっつーんだ?

何をそんなに怒ってんだかわかんねーが、お陰でずっと牧野の手にすら触れていない。






ーーーーそろそろ、限界だ。



いや、むしろ我ながら良く耐えたと思う。



ーーーーもういい。



牧野が何を言っても、オアズケ喰らった分、たっぷり充電させてもらう。










司の中の、強靭な糸がブツンときれた。







「おし。行くか。」





道明寺本社・副社長 道明寺司は、今日も諸事情でデスクに居ないーーーー。
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