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ライオン #13

ザワザワ‥‥

    ザワザワ‥‥



「‥‥‥?」


ーーーーなんだか、皆の様子がおかしい?


「おはようございまーす‥‥?」


朝、社内に入ると皆の様子が何となく変だった。


「森本くん、おはよう。」

「あ‥‥‥牧野さ‥‥!」


ちょうど近くにいた同期の森本くんに声を掛けたが、彼もまた皆と同じ様にソワソワしていた。


「ねえ、皆一体どうしたの?今日、なにかあるの?」

つくしはそっと彼の隣に近づき、話かけた。

「えッ!?いや、あのっ‥‥!」

「‥‥‥森本くん?」

「えっと、そのッ!」

「????」

突然慌てふためき出した森本くん。何をそんなに慌てることがあったのか?

つくしの頭にはクエスチョンマークが飛んだ。



「‥‥‥ゴメンね。牧野さん。」

「あ、あれ?‥‥‥吾妻くん達?」

今度は後ろから吾妻くん達が現れた。

「ごめんねぇ~コイツ、極度の人見知りでさ。」

「ほんとほんと。初対面の相手にはいつもこうなんだよ。」

「‥‥‥‥へぇ。」

「‥‥‥‥‥‥‥‥ごめん。」

「いや、別に謝ることじゃ‥‥」



「「 ‥‥‥‥‥‥。」」


ーーーー気まずい沈黙が流れる。


「‥‥そういえば!あれ見た?」


よどんだ空気を打ち消そうと、吾妻が割って入る。


「え?あれって?」

キョトンとしているつくし。

「なんだ、まだ見てないの?牧野さん。」

「ええ?なんのこと??」

「人事配置!今日、貼り出されてるんだよ!」

「えっ?嘘!?」

ーーーー知らなかった!!

「どっ、どこどこ!?早く見に行く!」

「ほら、20階の社食前に掲示板あったろ?そこだよ。」

「ありがと!早速行って来る~!!」

つくしはいてもたっても居られなくなり、ダッシュで20階へ向かった。


「あっ、そうだ牧野さん!今度俺たちと‥‥!」




「‥‥‥‥‥‥‥‥って。」

「牧野さん、足早ッ!ウケるな~(笑)」

「もうあんなに先に‥‥‥。」

「こないだの入社式といい、ほんっとパワフルだな~!!」

「おまけに頭も良いしな!」

「よく見たら可愛いし!」

「「 なっ、圭介!! 」」












「‥‥‥‥‥‥‥ほっといてよ。」


ーーーー二人に笑顔で振り返られた森本圭介は、ムスッとしたまま頬を赤らめた。

「何がほっとけだ!お前ひとりじゃろくに喋れてなかった癖に!」

「そうだぞ!内弁慶なお前にやっと春が訪れるかもって時に、ほっといて居られるかっ!」

「余計なお世話だよ。」

「なにおう!?」

「それに、牧野さんは俺なんか相手にされない。」

「‥‥‥意味わかんねーこと言ってんな!お前は性根は暗いけど、顔はなかなかいい男だぜ?」

「そうそう!身長はほぼ180だろ?親譲りの整ったルックスに、森本産業の御曹司!完璧じゃねーか!‥‥‥ちょっと暗いのがたまに傷だけどな!」

「それ‥‥‥褒めてる?」

「「 おう!」」

「 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ありがと。」


親友達の満面の笑みに、森本圭介はひきつった笑顔でお礼を言うしかなかった。












季節は7月中旬。


つくしの預かり知らぬ所で恋の蕾が芽生えたころ、新入社員にとっては長かった研修期間を終えようとしているーーーー。







******




「おい、何黙ってんだよ。」

「 ‥‥‥‥‥。」

「オイって、なあ!」

「‥‥‥‥‥なんでよ。」

「は?」

「なんであたしが8月から秘書課なのよーーーー!?」







あれから急いで見に行った人事配置には、


『 秘書課配属 牧野つくし 』


と、書かれてあった。



毎度の様に、帰り道でダックスフントで拉致られたあたし。今日は一日中その事で頭が一杯で、何も仕事が手につかなかった。


「あーうるせーうるせー。」

あたしが言ったあと、さらっと受け流すように自分の耳を塞いだ道明寺。

「あんたがなんかしたんでしょっ!?」

「‥‥‥してねーよ。(ちょっとしか)」

「あっ、なに今の間!ほら、やっぱりあんたの仕業でしょ!?」

「だからしてねぇって!」

「‥‥‥‥‥ふん、どうだか?」


ーーーー何しでかすか、解ったもんじゃないんだから。


「‥‥‥‥‥‥っつーかお前さ、間違ってねえ?」

「何がよ?」

「お前、自分で配属先は何処でもいいっつったんだろ?」

「!」

つくしの瞳が見開く。

「聞いたぞ。ババアから。」

「なんでっ‥‥‥!」

「なんでも糞もあるかよ。お前な、俺は誰だ?」

「 ‥‥‥‥‥‥。」


そう言われて、あたしは考えるフリをする。


右を見て。


左を見て。



「‥‥‥‥‥バカ?」


「 ‥‥‥‥‥‥。」


半分冗談のつもりで言ったのに。

‥‥‥‥あらら、怒らせちゃったみたい。青筋立ってる。

仕方なしにあたしはペコリと頭を下げて、


「 道明寺 司 様でございます。」

と言ったのに。

「それもちげえッ!!」

という返事が返ってきた。






「‥‥‥‥‥違うの?」

「いや、合ってる。少なくとも今の俺はそうだ。」

「ふーん‥‥‥?」

(何が言いたいの?)

「ただそれは、仕事が終わったからだ。」

「‥‥‥??」


それってつまり‥‥‥えーっと?


「仕事中は副社長‥‥‥ってこと?」

「そうだ。」

「‥‥‥そりゃ、そうね。」

ーーーー当たり前といえば当たり前の答えに、あたしは拍子抜けした。

「だろ?だから、今年度の新入社員の情報は全部耳に入ってんだよ。」

「!!」


ーーーー今、なんて言った!?


「お前がウチを選んだ理由‥‥‥とかな?」


!!!!!


「ウソッ!?」


「‥‥‥‥秘書になりゃあ、重役について廻って世界を見渡せるぜ?」


隣に座る道明寺は、さっきとはうって変わって、狡い顔した副社長の表情になっていた。


「 ‥‥な?『世界を知りたい』牧野さん。」








ーーーーヤラレタ。


全てお見通し‥‥‥‥というか、筒抜けだったのか。


あたしが " 道明寺 " を受けたのは、他でもない。




普通なら、大学生活を送ってるはずのあんたがNY に行って、週刊誌に取り上げられる度に、ドンドン大きく成っていくあんたに置いていかれそうで怖くて。

あたしはそんなアンタに少しでも近づきたくて、大学の勉強も死ぬ気で頑張った。

どうしたら道明寺と一番近い距離に居られるのかなって考えた。

少しでも頭が良くなれば‥‥‥

もっとマナーを身に付けたら‥‥‥

あんたの隣に立っても恥ずかしくない人に成れるように、あたしなりに頑張った。

その為には、 " 世界の道明寺 " に就職することさえいとわなかった。




すべては、道明寺の見てる『世界』を知るために。





「‥‥‥‥で。何で " 世界 " を知りたいんだ?」

「‥‥‥‥キャリアウーマンになるため?」

でも流石に恥ずかしくて、そんな事言えない。


「‥‥‥ふ~ん?そっか。」

「うん、そう‥‥‥。」


道明寺は大して気にもしていない様子で、あたしはほっと胸を撫で下ろした。







「あのよ‥‥‥。」

もう邸に到着しようと言う頃、司が話し出す。

「‥‥‥‥ん?」

「後で、俺の部屋来いよ。」

「 ‥‥‥? いっつも勝手に来てんじゃん。」

「俺の部屋じゃねーと駄目なんだよ。わかったな!」

「‥‥‥‥‥うん、いいけど。」

「ほっ、ホラ!着いたぞ。降りろ。」

「‥‥‥‥??」


途端に挙動不振になる道明寺。

あたしは車の外へと追い出されてしまった。







ーーーーなんか、変?
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