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ライオン #14

" コンコン。"



「!」


( 牧野か‥‥?)


自室のドアがノックされ、つくしがやって来たのかと思った司は、自らドアを開いて出迎えた。


「まきっ‥‥‥!」








「!??」



しかし期待とは違い、ドアの外で待っていた人物はつくしではない。


「こんばんは。」


見た事もない知らない女が、司に向かって笑いかけた。













「お前‥‥‥誰だよ?」


その人物を見るなり、途端に機嫌が悪くなる司。

しかし、正面に立つ人物は、司の不機嫌極まりない表情や声のトーンに怖じ気づく事なく、尚も笑顔で笑っている。

「司さま‥‥‥私の事、もうお忘れになったのですか?」

「‥‥はぁっ?」

女は困った様な顔をしながら、笑って問いかけた。

「テメェの事なんざ知らねえんだよッ!!」

「何で知らねー女がこんなとこに居んだ!?気持ちわりぃ!!」

つくしでなかった期待外れ感と、知らない女が勝手に邸に入り込んだものだと思った司の怒りは、瞬間湯沸し器の如く一気にピークに達した。

「司様、それは‥‥‥」

「さっさと出て行けっ!!ケーサツ呼ばれてーのかッ!?」

「警、察‥‥‥?」

睨み殺せるのではないかというほど凄む司に対し、女はキョトンとして司を見上げた。

「オイッ!SPは何やってんだ!?さっさとこの不信人物を叩き出せ!」

廊下に出て、怒鳴り散らす様に近くに居たメイドに喚いた。




いつもなら直ぐ様飛んで来るであろうSP が来ない。

司にとってそれは、信じ難い光景であった。




「司さま、私は‥‥‥‥。」

「あ"あッ!?」

「警察を呼んで、この私めを逮捕したいと言うことでしょうか?」

「ッたりめーだ!!」

「それは‥‥無理ではないでしょうか?」

「‥‥‥何言ってやがる!?これは立派なストーカーだぞ!?」

「だって私‥‥‥」










「 警視総監の孫娘ですもの。」


「‥‥‥知るかッ!!」







******



「これで‥‥‥いいかな。うん。」


その頃つくしは、数少ない洋服達を部屋の姿見に合わせて選んでいた。




『後で、俺の部屋来いよ。』




‥‥‥‥‥‥なんて、言うからさ。

いつもと違う様子に時間が経てば経つほど何か変に意識しちゃうって言うか‥‥。


「 ‥‥‥‥‥‥。」


ーーーーま、うだうだ考えてもしょうがないっか!!


そう思ったつくしは選んだワンピースにさっさと着替え、さんざん悩んだ揚げ句、お風呂上がりではあったが唇に色の付いたグロスを薄く塗った。


「‥‥さ、行こッ!」


"ガタンッ!"

"ガチャッ!"


「‥‥‥‥‥あ。いけない。」


ドレッサーの椅子から立ち上がったと同時に、振動でテーブルに置いてあった腕時計を落とした。


「やだ、もう。今日西田さんから受け取ったばっかなのに。」


ーーーー今日、西田さんから受け取った腕時計は、会社から研修を( ほぼ )終えた新入社員へのプレゼントだそうで。

この不景気なご時世など知ったこっちゃないと言わんばかりのわが社は毎年、新入社員に何かしらの贈り物が贈られているらしい。

聞いた話だと、去年はビジネスバッグ。

その前は、男性には革靴。女性にはヒールのパンプスが贈られた様だ。

勿論、仕事用の。

明らかに金持ちの思考に着いて行けなくなってそれ以上聞くのを止めたが、あたしにとっては無駄遣いも甚だしい行為にも意味があることを西田さんから教えて貰った。


『牧野様。これは、わが社の方針なのです。』

『先ず、人は初対面の人の何処を見ますか?‥‥‥牧野様なら、一体、何処を見るでしょうか?』

『えっ?あたしですか?』

『はい。』

戸惑うつくしに、うっすらと西田が微笑む。

『 ‥‥‥‥‥‥目、かなぁ?』

暫くうぅ~んと悩んだつくしはこう答えた。

『‥‥‥‥そうですね。私も先ず、目をみます。』

『‥‥‥‥!』



『そして、その次に、服装を見ます。』

『 ーーーー!!』

ホッと息をついたのもつかの間。ハッとして、つくしは西田を見上げた。

『それは‥‥‥身だしなみ、という事と同じ‥‥ということでしょうか?』

『はい。その、応用編‥‥といった所ですね。』

『 ‥‥‥‥。』

『道明寺社員証を付けて一歩外に出た瞬間に、着るもの身につけるもの全てが、その方の評価につながります。』

『一流に成るためには、 一流のモノに触れるのが一番の近道です。』

『 モノ とは何も、目に見える物が全てではありませんし、良く探さないとみつからないものもあるんです。』

『ですが‥‥‥時に、人によって一流の在り方も違いますから。』








『もし‥‥その、自分が見つけた モノ が 偽物 だった場合は?』


それまで黙って耳を傾けていたつくしが、不安そうな表情で西田に問う。


『途中で諦めてしまった場合は偽物ですが‥‥‥、一生懸命見つけたそれは、どんなに他者と食い違ってもいいんです。』


『それは‥‥‥個性ですから。』


にっこりと微笑んだ西田に、つくしは胸が温かくなる。


『受け取って頂けますね?』

『‥‥ありがとうございます。』






ーーーーなんてことがあったんだけど。

もしかして、上手く丸め込まれた??

だってこの腕時計ギラッギラしてるし‥‥‥スーツにこれって良いのか?

ーーーーいやいや。もちろん西田さんの話には納得したんだけどもさ!





拾った腕時計を眺めながら耽っていると、何処からともなく騒がしい声が聞こえてきた。



「~~~~ざ‥‥‥‥んだよ!」

「~~~~。」




ーーーー何だなんだ!?

誰かが何か叫んでるぞ!?誰だ??



「 ‥‥‥‥‥。」





( って、考えるだけ無駄よね‥‥。)


ハハハ‥‥と、乾いた笑いを浮かべ、急いで隣の司の部屋へと向かった。






******





「ちょっと、タマさん!」

「‥‥‥何ですかね。帰国早々騒がしい。」


タマの和室の襖が " パァンッ " と壊れそうな勢いで開かれた。

すぐその後に、モデルの様な体型をした人物が飛び込んで来る。


「つくしちゃんがウチに住んでるって、本当!?」

「‥‥‥‥‥‥。」

" ズズズズゥ~~ " っと、タマがお茶を啜る。

「ね?タマさんっ!」

待ちきれないかの様に、椿はキラキラとした瞳でタマを見つめる。

「‥‥‥‥‥‥‥‥ホントですよ。」

「!!!!」

半ばそんな椿に呆れながらも、仕方がないという風に笑っている。

「やったわ!ついに、ついにつくしちゃんが私の妹になるのね!!」

「‥‥‥‥‥‥‥‥ちょいと、お嬢さん?」

「何ッ!?」

ーーーー椿の台詞に違和感を覚えて直ぐ様確認しようとしたが、パアアっとした満面の笑みで返され、タマは眩しくて何も言えなくなってしまう。


ーーーーああ、もうダメだねこりゃ。


「いえ‥‥‥。ただこの事は、限られた人間しか知りませんので、極秘でお願い致しますよ。」

「わかったわ!」

「あ、それとですね。」

「えっ?」

「速水様がいらっしゃってましたので、リビングにお通ししておきました。」







「‥‥‥‥‥‥あずみが?」


それまで活発だった椿の動きが、ピタリと止まる。


「お久しゅう‥‥‥ございますね。何年ぶりでしょうか。」


「 ‥‥‥‥‥そうね 。」
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