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ライオン #17

" ガラッ! "

「 ‥‥‥‥おい、西田。」

ノックもせずに秘書室に入ってきた男は、秘書室長である西田に、直接話かけた。

「なんでしょうか?副社長。」

「牧野、居なくねえ?」

「‥‥‥!」


ーーーーもう、気づいてしまわれましたか。


「牧野様は本日、体調不良によりお休みを頂いております。」

「ーーーあ?何言ってんだお前?」

「そのままの意味でございますが‥‥。」

「んなわけあるかッ!」

「昨日の夜、にこにこしながら飯食ってた奴がいきなり体調不良なわけねぇだろ!」

「‥‥‥はい。牧野は入社以来一度も休まず、頑張っていました。」

「そうだろ!?」

「ですが実は今朝、連絡がはいりまして‥‥。」

「なにっ!?」

「今日は、『階段から落ちて、手当ての為に病院に寄っていくので昼過ぎの出社になる。』とのことで。安静を取って、今日1日休ませました。」

「あっ、あいつ、階段から落ちたのかっ!?」

「はい。ですが‥‥」

「それを早く言え、バカ野郎ッ!!」

「あっ、司様‥‥!?」


ーーーー階段から落ちたことは落ちたが、牧野様はほぼ無傷‥‥。

そう言おうとしたのに、早とちりな男は嵐のように去って行った。





「‥‥‥‥‥‥。」


" ピッ "


( 今日の会談はキャンセルだな‥‥。 )



西田は速やかに先方に連絡を入れ、次回の日取りを決めた。




******




「本当に、ごめんなさい‥‥‥。」

「いや、良いって。」


そのころ、救急車で運び込まれた病院先につくしと吾妻は居た。

検査の結果、つくしは足を少し打撲した程度で大したことはなかったが、つくしを庇った吾妻は左足に少しヒビが入ってしまった。



「ほんと、どうお詫びしたらいいのか‥‥‥。」


" 申し訳ない "

取り合えず、その事で頭が一杯なつくし。


「詫びなんかいいよ。牧野さんが悪い訳でもないし。」

「‥‥‥気にしないで?」

人の良い吾妻にそう言われても、気にしてしまうのが人の性というもの。

「や、そーいう訳にはいかないっ!」

「いや、本当に大丈夫だからさ。」

「‥‥‥むしろ、ラッキーかもしんないし。」




「‥‥‥へっ?なんか言った?」

ボソッと呟いた声は、つくしには届かない。

「ゴホンッ!‥‥いやいや、なんでもないよ。」

「?」

「それよりさ、俺、着替え持って来てないんだよね。」

吾妻は念のため、医師より1日入院を言い渡されていた。

「あっ、そうだよね!教えてくれればあたし持って来るよ!」

せめて、役に立ちたい!そう思ったあたしは自ら志願した。

「‥‥‥そういうことならさ、アイツ呼んでくれないかな。」

「あいつ??」

「圭介。」

「けいすけ‥‥‥?」

( 誰だろう‥‥? )

「‥‥あ~っと、森本 圭介。」

あたしの些細な表情を読み取った吾妻くんは、言い直して教えてくれた。

「森本くん?」

「俺ら、幼馴染みなんだよ。あいつなら、俺ん家とか詳しいからさ。」

「あ、ああ!そういうこと!?オッケー!任せてッ!」

あたしに今出来るのはその位だ。

そう思ったつくしは、親指を立ててオッケーサインを出す。

「そうだ!あとひとつ、お願いがあるんだけど‥‥。」

「なに?あたしに出来る事なら、なんでも言ってね!」




「‥‥‥‥‥‥俺たちのこと、名前で呼んでよ。」

「‥‥‥えええっ!?」



「知ってると思うけど、俺は、吾妻 晃(こう) 」

「さっきも言ったけど、森本圭介に、長良隆之。」

「晃、圭介、隆之‥‥‥??」

「そうそう!」

「いや、でもあたし‥‥‥。」

ポンっと、つくしの脳内に司の顔が出てきた。

( アイツ絶対、怒りそうだよなぁ~ 。)

想像するだけでたらりと嫌な汗が流れ、暴れまくる猛獣が目に浮かぶ。そんなことしようものなら
罵声を浴びせられかねないッ!!


ーーーーここはひとつ、丁重にお断りを‥‥。


「‥‥‥‥‥‥牧野さん?」

「へ?はい!?」

「良かった!!断られたらどうしよかと‥‥!」

「ええっ!?いや、あたし‥‥!」


ーーーーなんだか知らないうちにOKした事になってるう~~!!?


つくしは驚愕した。


「‥‥‥ああ、そっか!俺たちはいきなり" つくし "なんて呼ばないから!」

「‥‥‥‥は!?」

「女の子だし、色々あるよね?本当に、仲良くなれたらにするよ!だからさ、安心してね!」

「ダメッ!む、無理無理無理っ!!」

「照れない、照れない♪」


( 照れてねぇよーーーー!!)


しかし、助けて貰った手前恩人に強く言うわけにもいかず、肯定も否定もできぬまま曖昧になってその話は流れてしまった。







******




ああ、眠い。



本当に、眠い。




ーーーー昨日の夜はあんな事があったから、よく眠れなかったんだよ。










『‥‥‥‥香港に、行く?』

ちょっと混乱したあたしは、頭を落ち着かせるようにオウム返しで聞いた。

『あぁ。』

『何しに?旅行?出張?』

『いや、仕事で‥‥。』

『なんで、あたしも一緒に行くのよ?』

『あっちでよ、結構でけえパーティがあるんだと。』

『‥‥‥‥‥‥‥ふーん?』


それがどうしたというのだろう。パーティなんて、あんたは日常茶飯事じゃないか。つくしはそう思ったが、わざわざこんな風に言うということはきっと何か意味があるのだ。そう理解し、おとなしく聞くことにした。

『‥‥‥‥‥で。そのパーティにはパートナーが必要らしくてよ。』

『 へー‥‥‥。』

『いつもみてーに姉貴に頼むか、西田でも引き連れて仕事してる振りしとけば誰もなんも言わねーし、今回も別に、そんな感じで良いと思ってたんだ。』

『‥‥‥‥‥。』

その先の言いたいことは何となく読めた。が、その続きはさすがにわからない。

『でも今回は、お前に俺のパートナーとして出て欲しい。』

『‥‥‥‥‥。』

『‥‥っつーか、出てもらわなきゃなんなくなった。』

『‥‥‥‥何で?』

『これ、みろ。』

バサリと音を立ててテーブルに乱暴に置かれた新聞記事。

『‥‥‥‥‥‥んんっ!?』

『今度、俺がパーティに連れていく相手によって、俺の性癖が判るんだと‥‥‥‥。』

記事よれば、毎回姉や秘書を従え、特定の相手を連れて来ない Tsukasa Domyoji が極度のシスコン、またはゲイやバイ、はたまた不能者なのではといった実に下世話な記事であった。

『いつもなら、ババァもなんも言わねーのに。この記事見たらしくて、これは財閥全体に影響すっから絶対女連れてこいって‥‥‥。』

『ったく、下らねー記事書きやがって‥‥!知ってたら事前に揉み消してやったのに!!』





『 ‥‥‥‥‥。』






『 ‥‥‥‥‥。』










『‥‥‥‥‥アンタも、大変ね。』


ガックリ項垂れ、意気消沈な司に、つくしはこれ以上掛ける言葉が見つからなかった。









ーーーーなんてことがあって、昨日はそれを思い出す度に笑いが止まんなくなっちゃったあたし。

昨日の夜も、目を瞑ると道明寺がゲイだのバイだのシスコンだの ( これは間違ってない。) が何度もリフレインして、その度に笑ってしまった。

いつまでも笑ってるあたしにキレた道明寺は

『今日は一人で寝るッ!』

とか言って、何故かあたしの部屋いっちゃうし。

仕方なくあたしもアイツのベッドで寝てたんだけど、地獄耳のあいつはあたしが笑う度に向こう側から壁を蹴りやがるし。

そのうち勝手に部屋に戻ってきたアイツは案の定キレちゃってて。



『‥‥‥‥分かった。もういい』











『牧野!ぜってぇテメェは、香港連れてくからな!!』



ーーーーおいおい。

それって八つ当たりじゃないのか。

もしくは職権乱用。


社長。


このワガママ息子、なんとかしてください。
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