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ライオン #19

「あれ?牧野さん‥‥‥。」

「しーっ!起こすなよ。可哀想だろ?」


遅れてやって来た森本は、目の前で寝こけているつくしに少し動揺してしまった。





「‥‥‥なんで、寝てんの?」

「なんか、俺がトイレ行ってる間に眠っちゃったみたいでさ。疲れてるんじゃないの?」

「‥‥‥そっか。」




病室のベッドで、パイプ椅子に座りながらベッドに頭を預けて眠ってしまったつくし。

その様子を、吾妻と迎えに来た森本がしげしげと眺めていた。




「 ‥‥‥‥‥。」

「 ‥‥‥‥‥。」



「‥‥‥‥‥‥なぁ。」

「ん?」

「牧野さんって、ホントはスゲーかわいい人だよな。」

「はっ!?」

森本は脈絡のない吾妻に、バッと振り返る。

「だってよ。彼氏への義理立てかなんだかわかんねーけど、今時、下の名前で呼んじゃダメだって言うんだぜ?‥‥ってか、牧野さん彼氏いるのかな?俺ら、そこらへんの肝心なとこ聞いてなかったよな?」

「どうなんだろ?」

至極真面目な顔をして、寝ているつくしに一人問いかける。




「‥‥‥晃。」

「ん?」

「まさかとは思うけど、お前‥‥‥。」


一方で、驚き、戸惑いながら吾妻を見つめる森本。


「なんだよ、どうしたんだ?」

「お前、牧野さんのこと‥‥」


親友の、芽生え始めた恋心にいち早く気づいた森本。


( ‥‥‥あまり聞きたくはないが、確かめなければ。 )


勇気を振り絞って、口を開いた。





ちょうど、その時。




" ダダダダダダダダダダ!! "


「「!?」」


ふたりの鼓膜に、遥か遠くから何者かが突進してくるような音が届いた。


「は?何!?」

「えぇええっ!?」

「なんか、走ってくる!?」

「てか、どんどん近付いてねぇ!?」

あまりの轟音に、焦るふたり。

「~~~!~~~!」


遠くの方で、叫び声が聞こえる。


「わっ、なんか叫んでる?」

「子供が暴れてんじゃないのか?」

「ばか、子供がこんなでっかい足音出すかよ!」

そうこう言っている間に、近付いて来た足音はピタリと止まった。


「「????」」


二人はゆっくりと目線をあわせ、重苦しい空気をわかちあう。


" ごきゅり。 "


ーーーーふたり同時に唾を飲んだ。








" パァンッ!! "



「オイッ、牧野居るかッ!!」



「「 !? !? !? 」」









******





「ねーねー、桜子ぉー。」

「何でしょうか?」

「こっちのドレスとこっちのドレス、どっちがいいかな~?」

「‥‥‥その、右手のがいんじゃないですか。」

「きゃー!やっぱり?滋ちゃんもこっちがいいかなって思ってたんだぁ!」

「 ‥‥‥‥‥。」


ひたすら店の商品をあわせてキャッキャ、キャッキャと騒ぐ滋と、冷めた目をしている桜子が居た。


「‥‥‥そもそも、香港で何するんですかね?」

「‥‥‥さあねぇー。」

「パーティだとは聞きましたけど、何で私達も?」

「‥‥‥何でかねぇー?」

「まあ、どうせ仕事以外じゃ楽しい事も少なくなって来ましたし、良いんですけど。」

「‥‥‥ですけどねぇー?」


「 ‥‥‥‥‥?」


くるり。



「‥‥‥ちょっと、滋さん?」

「‥‥‥だねぇー?」





「 ‥‥‥‥‥。」




" フッ。 "


( この人に真剣に話してた私が、馬鹿だったんですよね‥‥‥。 )


いまだにドレス探しに夢中になっている滋をみて、諦めたような顔をした桜子はそう思った。








******



「ふふふ、ふくっ!!」

「ふくふく、ふ、ふくふくぅっ‥‥!?」





思いもよらない人物が現れた!!

目を白黒させ、座っていたふたりはポカーンとなったまま見上げる事しか出来ないでいる。




「ああ!?服服服ぅ!?何いってんだオメーら!!」

「服でも足りねのーか!!」

「い、いや、べつに服は‥‥‥。」

ーーーー困らない程度には持ってます。

「ああ、あの、それより副社長、何で‥‥‥。」


ここに居るのか?


まさか、自分の見舞いに!?


‥‥‥‥いやいや、そんなはずないか。



「あ!牧野っ!!」



「「 へっ‥‥‥?」」





「「 牧野さん??」」





ーーーーつかつかつかつかつかつか!!


「オイッ、牧野!!」

「こんなとこで寝てんな!」

つくしを見つけた司は一直線に、つくしの元へ向かった。

つくしの枕替わりに使っていた片腕を無理矢理引っ付かんで、持ち上げる。

「ん~‥‥?なによ、も、ねむ!」

しかし、まだ寝惚け眼のつくし。

「さっさと起きろ!風邪ひくだろ!」


" ‥‥‥‥むにゃむにゃ。"




「‥‥‥チッ、しゃーねーな。」

「ったく、こいつは一度寝たらなかなか起きやがらねー。」


舌打ちをしながらも、副社長は牧野さんを軽々とお姫様だっこで持ち上げる。







ーーーーって。


「「 ‥‥‥えええぇえっ!?」」


ーーーーあの、副社長が!!


女性に、自ら触ったああああ!!?




隠れファンの自分達としては、驚きを隠す余裕もなく、思ったままに声を張り上げてしまった。


ーーーーしかし、司の耳にはもう何も届いていない。


「 ‥‥‥牧野、帰んぞ。」

「ぅ‥‥うん、あと5分~‥‥。」


" ‥‥クッ。 "


「ばーか。寝ぼけてんじゃねーよ。ほら、しっかり持っとけよ。」

「う‥‥ん、どうみょ‥‥じ。」


ーーーー眠り続けているつくしを横抱きにしたまま、笑顔になる司。

つくしも無意識なのか、司の首に巻き付けられた両腕で大きな背中にしがみついている。


そのまま、病室を出ていくのかと思ったが、出入口付近でピタリと止まった。


「‥‥‥あ。」

「?」


くるりと振り向いた目線が、突き刺さるように感じるのは気のせいだろうか?


「お前ら、牧野にちょっかい出してねーだろうな?」

「「‥‥‥っ!えええええ!?と、と、とんでもないっ!!」」


「 ‥‥‥‥‥。」


疑いの眼差しの副社長。


鋭いその視線が怖くなり、自分達が何かしたわけでもないのに動揺してしまう。もう、ホントにそのうち心臓が止まりそうだった。


「「ほほほ、ホントです、ほんとっ!!」」



ーーーーだから殺さないで!!


とっさに防衛本能が働いた。



「 ‥‥‥‥そうか。」








「世話になったな。」



「「!!」」





ーーーーかつかつかつかつかつかつ。




姫君を拐って行く騎士(ナイト)さながらに。


美しい振る舞いで去って行くふたりを見届けたこちらのふたりは、同じ映像が目に焼きついていた。





「「 ‥‥‥‥‥。」」








「‥‥‥な、見た?」

「‥‥‥うん。ばっちり。」

「俺、男だけど。副社長になら抱かれてもいいかも。」

「‥‥‥‥レアすぎ。」











「 ‥‥‥‥笑ってたな。司様。」


「‥‥‥‥うん。初めて見た。」









数時間後。



そんなふたりに、単なる偶然か、会社より大量の洋服のプレゼントが届くことになるーーー。
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