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記憶喪失物語。~after story~ その1

『司‥‥‥落ち着いてきけよ?』

電話越しの男が、恐る恐るといった風に話した。

『‥‥‥俺はいつでも落ち着いてるぞ。』

『嘘つけっ!』

『で、何だ。俺早いとこ牧野のトコ戻らなきゃなんねえんだよ。』

『え‥‥。牧野、まだどっか悪いのか?手術は成功したはずだろ!?』

『別にもう、身体が悪いとかそういう事じゃねーよ。』

『なんだ‥‥‥そうか。』

ーーーー総二郎のホッとした声が届く。

『でも、牧野の奴は一人にしとくとすぐにきょときょとすっからな。』

『俺が見張ってねーと、すぐにしょーもねー男共が湧いて出てくんだよ。』

『ああ見えてアイツは、無意識に男を捕まえてきちまう奴だからな。』








『‥‥‥‥‥‥そうか。』


ーーーーそれは司、お前だけだよ。

そう言ってやりたかった総二郎だが、本当に言うと後々面倒な事になるのでグッと堪えた。


『って、こんなノロケ聞かされる為に電話したんじゃねーよ!俺は!』

『だから何なんだ。早くしろよ。』

『牧野の周りに何か起こってっかも知れねえ。』

『何ッ!?どういう事だ!!』

『だから、落ち着けって。』

『もとはと言えば、類が気づいたんだけどさ。』

『あぁっ!?類っ!?なんだって!』







『‥‥‥‥‥さっきから、話がちっとも進まねえからお前ちょっと黙れ。』

『何だとっ!?』

『お前な‥‥‥これは牧野に関する大事な事だぞ。』

『ぐっ‥‥‥!』


" 牧野 "の単語を聞いただけで途端に大人しくなる猛獣。さすがだ。


『で、だ!』

『早く言えッ!』

『お前のかーちゃんが、牧野にSP はりつかせてたんだ。』

『‥‥‥‥‥何、言ってんだ?』

『ちゃんと裏もとってある。』

『んなもん、どうやって‥‥‥』

『あ~~。ちょっとな。奴等もなかなか手強かったけど、俺らで口割らせたんだよ。』

『‥‥‥‥‥。』

『そのSPがお前の運転手に連絡入れなきゃ牧野は今頃どうなってたか‥‥‥』

『‥‥‥‥‥。』

『‥‥‥‥‥。』

『ま、とにかくだ。お前のかーちゃんが何考えてっかはさっぱりわかんねーが、今のとこは味方でもねーが敵でもねーみたいだから、心配はいらねーってこった。』

『‥‥‥‥‥信用、出来るわけねえだろ?』


今までの行いで、信じろってのがまず無理だろ。お人好しの牧野でもあるめーし。


『‥‥‥お前からしたら無理もねーか。』

『ま、一応この件伝えとけって言われただけだから、気にすんな。』

『言われなくても、もう既に気にしてねーよ。』


ババァが信用出来ねえのにはかわりねえからな!!


『お前らしいな‥‥‥。じゃ、また日本帰ってきたら連絡入れろよ?』

『‥‥‥‥‥あぁ。』

ーーーー本当は少し気になったが、気にしても仕方ねえことだからな。

ぐちぐち言ったとこで事態はなんにもかわんねえ。気になるなら直接聞いた方が早えーんだよ。

『あ、総二郎。それってよ‥‥』


ーーーー気づいて、そこまで調べてくれたのか。

俺は最後まで口にはしなかったが、さすがに長い付き合いだけあって、総二郎は俺の言わんとすることを悟ったようだった。


『‥‥‥‥さぁな?おーかた、つくしちゃんのもうひとりの" 王子様 "ってとこじゃねーの?』

『なんっ‥‥!?』

『じゃ、記憶も戻った事だし。さっさと処女と童貞、捨てて来いよ♪』

『おにーさんは、キミタチの朗報を楽しみにしてるぞ。じゃな。』


『~~~余計なお世話だっっっ!!』


" プーッ、プーッ、プーッ "








『‥‥‥あンの野郎ッ!!』



俺が反論する前に、総二郎の奴‥‥‥会話途中で電源切りやがった。






******


「きゃあ~~~!!つくし、綺麗よ~っ♪」

「うん。つくし、ホント似合ってる!」

「‥‥‥ほんとう?優紀。」

「本当ですよ、先輩!」

「普段は所帯じみたがさつな人だなんて誰も思いませんよ!」

「‥‥‥‥桜子。アンタ一言多くないか?」


花沢類から受け取ったパーティーの招待状。

日付は帰国後すぐだった。


「ていうか、ねえ。」

「なんで、こんなドレスアップしなきゃいけないの?花沢類は身内のみって言ってたと思うんだけど?」

ーーーなのに、あたしは今何故か、二人の着せ替え人形と化している。

「え~~~それはやっぱり、楽しいからじゃん♪」

「あと、滋さんの趣味が半分ですね。」

(やっぱり‥‥‥‥。)

「ねね、それより先輩!そのドレス本当に似合ってますね!」

「そっ、そう?」


パーティ会場に乗り込む前に、自宅玄関先にて桜子と滋さんに拉致られたあたし。なぜ今、こんな所に居るのかがわからない。


「うん!そのドレス、本っ当に似合ってるよ!特にその、青バラがつくしの存在そのものみたいで‥‥。」

「え、やだあたし、いつもこんなに顔色悪いの!?」

しみじみと語る滋に、つくしは両手で頬を挟んだ。

「あははっ。やだなあ違うよ~!」

「先輩‥‥‥仮にもレディなら、有名な花言葉くらい知っておいて下さいね。」

冷めた目をしてつくしを見る桜子。

「仮にもってなにっ!それに、その花言葉とやらってなんなのよっ!」

「まぁまぁ、つくし。滋ちゃんが教えてあげるから‥‥‥」

「"キセキ"です。」

教えようとしていた滋を遮って、桜子が割り込んだ。

「きせき‥‥‥?」

「はい。」

「椿様から聞きましたけど、赤いドレスとその青いドレスでずっと迷っていたみたいなんです。で、最終的には道明寺さんが決めたんですって。」

「道明寺が‥‥‥?」


( あの頃は確か、記憶ないよね?)

ーーーーふと、つくしの頭によぎる。


「はい。それで青薔薇の花言葉を知った道明寺さんが、

『牧野は、俺の奇跡そのものだから。』

って。」


「 ‥‥‥‥。」










このドレスを着るのは二回目だ。

一回目はまだ、アイツの記憶が戻ってなくって。

確か、道明寺と花沢類が撮影拒否してやり直す羽目になったやつ。

その頃には、記憶喪失になったばかりのような《 近寄んな 》オーラがだいぶ薄れてきてたとは思ったけど‥‥。




「ま、その辺りは私も同意です。」

「‥‥‥‥桜子?」

「私にとっても、そうだから‥‥。」

「‥‥‥‥‥へっ?何が?」

あたしは桜子の指している言葉の意味がわからず、首を捻っているとゆっくりレストルームの扉が開いた。


「何、言ってんだよ。」


その声に四人同時に振り返る。


「道明寺!」

「こんにちは、道明寺さん。」

「あっ、司~!やっほ~☆」

「 ‥‥‥‥‥道明寺さん。」


最後に桜子が反応すると、道明寺は無言のままあたしの傍までやって来て、ドレスに着替えて剥き出しになっている肩ごと乱暴に自分の方へ向けた。


「三条、お前な。」

「何でしょうか?」

「こいつは、俺のもんだから。」


「‥‥はっ??」


「誰にもやらねえよ。」

「‥‥‥わかってますよ。来世で我慢しときます。」

青筋を立てる司に桜子はにっこりと笑って返すが、何故かもう一人が参戦しだす。

「あ~~~っ!桜子!つくしの来世は滋ちゃんのものだからね!」

「なに言ってんですか滋さん。冗談ですよ。」

「‥‥‥おいっ!お前ら!!こいつは今もその先もずっと俺のもんに決まってんだろーがッ!!」


「んなっ‥‥‥!?」


大声で何を言い出すのか。

恥ずかしい事を恥ずかしいと思わないこのバカの代わりみたいに、あたしの方が恥ずかしくなる。


「「 ‥‥‥‥‥。」」


騒ぎ続ける二人に。

にやにやとあたしを見る桜子。

もう何も言えない優紀とあたし。





ーーーーなんだろう。あたしは見てるだけなのに、何故だかいたたまれなくなってきた。


「道明寺‥‥‥恥ずかしいからもう止めて。つーかあたしはモノじゃないし。」

とりあえず、一番恥ずかしい道明寺を止めておく。

「なんで俺だけだよ!?」

もちろん道明寺は騒ぎ出したが、もう一度レストルームの扉が開く音がすると、皆一斉にそちらを向いた。

「つくしちゃん、モテモテじゃ~ん?」

「女にモテても意味ねーぞ。牧野。」

「西門さん、美作さん!」

入るなり、扉の向こうまで聞こえていたのだろう。二人はからかう気満々のにやけ顔だ。

「オイッ、お前ら!!牧野に近づくんじゃねーよ!」

「‥‥‥おーおー。コワイコワイ。」

「記憶が戻った途端コレだもんな。牧野も苦労するぜ。」

おちゃらけて両手を挙げて降参のポーズをとる西門さんと、やれやれといった風の美作さん。



「じゃ、俺らは一足先に行ってくっから。」

「気ィつけて来いよ。」

「じゃ、私たちも行きましょうか。優紀さん、滋さん。」

「そうですね。」

「ええ~~っ?滋ちゃん、つくしにもっと宝塚風のメイクしたい~!!」

「何いってんですか。今日はコスプレパーティじゃないんですから!」

「た、宝塚?」

「ちぇ~っ。」


来て早々に出ていく二人にならい、優紀と桜子もごねる滋さんを連れてレストルームを出ていった。


「えっ、じゃあ、あたしも皆と一緒に‥‥!」


後から来いと言わんばかりの皆の態度。慌ててあたしもついて行こうとしたが、その声も虚しく扉は閉じられた。















ーーーーと、いうことは。







「‥‥‥なんで、おいてけぼり?」


着替えもメイクも終わったって言ってたのに。

置いてかれても何すんのよ、もう。


「‥‥‥何であたしらだけ?」


そう独り言を呟くと、背後から声が返ってきた。


「‥‥‥マジで、わかんねーのか?」

「わかんないから聞いてんに決まってんでしょ!」

「あほだな、お前。」

「アンタにだけは、言われたくないよっ!」


ムッとしていつものように返してしまったけれど。












「‥‥‥気ィ、利かせたんだろ。」


「 !! 」





やっぱり、アホかもしんない。
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