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記憶喪失物語。~after story~ その2

「で。どーすっか。」

奴等に置いてかれた俺たち。俺としては願ったり叶ったりなわけだが、ただ……隣に立つ牧野の反応があからさまに動揺してる。

「ど、どうするって……!」

「せっかくアイツらが気ィ利かせてくれたんだしよ。有効活用しとくか?」

「しっ、しないよっ! バカッ!!」

「………………ぶっ!」

「!?」

「ばーか、真面目に取んな。また一昨日みてーな目に合わされちゃたまんねーからな。」

「うるさい!」



ーーーーナニを想像してんだか。


真っ赤な顔して慌てる牧野の姿すら愛しい。

こんなのも久しぶりだよな。俺が迫ってこいつが逃げ回って。

些細なやり取りが、空間が、日々が《 幸せだ 》と今まで以上に感じるのも これまで がきっと悲惨過ぎたから。

きっと牧野もいま それ を感じてる。

幸せなのは大いに結構だが、理由
が 《 今までがあまり幸せじゃなかったから 》なんて、 そんななのは情けねえよな。





だからな、牧野。



幸せに浸かり過ぎて、幸せなのに気づかねーくらいに幸せにしてやっから。



待ってろよ。








「あ!」

「えっ!?何!?」

道明寺が突然大きな声をあげたから、指をさした方向にあたしも釣られて仰ぎ見ると目の前が影で覆われた。

「ほんっと、騙され易いよな。」

そう言って、反論しようとしたあたしの唇はにやりと笑った彼の唇に飲み込まれた。

「んンッ……!!」

咄嗟に道明寺の胸を押し返そうとしたあたしの力を閉じ込めるように、最初はキツく。

そして、だんだん力が抜けてきた頃には優しいキスに変わってゆく。













ちゅっ。






ちゅ、ちゅ……







幾度となくキスを繰返した唇は、重なるのが当たり前のように馴染んで。

唇の体温がまるで同じで、される前よりも落ち着いてる自分がとても不思議……


なんでこんなにも心地いいんだろう。


コイツのキスが上手だから?


何回もしたから?












ううん、違う。



それはきっと……。



「牧野…………。」

「……ん?」

「お前、その顔やめろ。」

これ以上してると、歯止めが効かなくなりそうだ。

仕方なしに離した唇の熱を逃がす為に、言葉を紡いだ。

「なっ、やめろって言ったって今更変えれるわけないでしょ!この顔は生まれつきなんだから!!失礼しちゃうっ!」

俺の言葉をどう捕らえたのか、思いっきり勘違いしてる。

違う、そうじゃない。誰が今更そんな事を言うか。

「……そうじゃねーよ。」

「?」

「お前のその、挑発するよーな顔をやめろっつったんだ!」

「んなっ!?」

「それとも……わざとか?」

「ば、バカ!違うからっ!」

「ったく。そうならそうと、早く言えよな。」

「違うっつってんでしょー!人の話を聞きなさいよ!!」

「……照れんなよ。」

「ちょっとアンタ!いい加減に人の話を聞くスキルぐらい……!」


言おうとした瞬間、息が止まった。


屈んだあいつの吐息が、あたしの耳に吹き掛けられたから。








「飛行機の続き、今からしてやろうか?」

「ばっ……!」



ーーーー続きって!!










「今日の夜、楽しみにしてる。」



「 ……っ!!!!!!」





ーーーー何を言うか、この男は。


反撃したかったけど、不意を突かれた攻撃に、あたしは口をパクパクさせて固まることしか出来ない。



" クッ "


「いつまでも、カマトトぶってんなよ?」








ーーーーこいつッッッッ!!!!







好き勝手に言いたいだけ言ったあいつは、固まっているあたしを置いてスタスタと歩いていった。





******






ーーーーあぁ、顔が熱い。

さっきのキスの余韻が冷めやらないうちに、パーティ会場に着いてしまった。



「お? ここみたいだな。」

「……行くぞ。」









「「 おっそーい!」」


あたしたちはなんとか皆と合流すると、何故か置いていった張本人達に遅いと怒られた。


「ご、ごめん。」

「うっせーよ。お前らが置いてったんだろ!」

「……やぁだあ~。道明寺くん、アレ 本気にしたのお~?」

「流石、猛獣ね。野獣通り越してゴリラよゴリラ!」


お酒が入っているせいか、いつもよりハイなお祭りコンビ。

司の額に青筋が浮かんできても、気にせずにからかい続けていた。


「 てめーら……。」


バキッ

ボキッ



「「 ……えっ?? 」」





沸点が非常に低い道明寺。

ごつい手をバキバキと鳴らして青ざめた二人に歩み寄る。


「つっ、司!」

「ちょい、まて。」



「「……待て 待て まてっ!!」」









にやり。


「 待つわけねーだろ。」







バッコーン!!



「「 ~~痛ってえな! 手加減くらい覚えろコノヤロウッ!」」

「るせえッ!次号予告だろッ!」

「「 はぁッ?? 」」









「「「「 ……………………。」」」」




一同沈黙。










「あの、さ……。」

沈黙を破ろうと、あきらが意を決して口を開く。

それと同時に、ひとりクスクスと笑う声が漏れた。

「……司、相変わらずだね。」

「あ? なんだよ類。」

「次号予告って、なんか宣伝でもしてるの?」

「してるわけねーだろ。」

「もしかして……。」

「自業自得って言いたかったのか?」

「おぉ! それだそれ!」

「次号予告って……かなり無理ないか?」

「ああ。だな。」

「そんなことより 司、NYでずっと牧野と二人っきりだったんだろ? どうだったんだよ。」

「ど、どうって、別に……。」

「は!? なんもないわけ?」

「お前ってやつは……せっかく俺らが、お膳立てしてやったのによー。」

「「これだから童貞は……。」」


ハァ~~ッ。


「大きなお世話だッ!!」

「それに、死にかけた奴相手に、そんなこと考えられるわけねえだろ!?」

「……ま。それもそうか。」

「しかしなー。こんだけ引っ張るとは。 もしかして司、あんま愛されてないんじゃね?」

「な、なに言ってんだ! 牧野は俺にベタ惚れなんだよ!」

「あっそ。」

「んじゃ、つくしちゃんに確認してみっか?」

「なんでお前らが確認すんだよ!?」

「まぁまぁ、司。上手くいけば、またあの告白聞けるかもしれないぜ?」

「あ?」

「ほらなんだっけ。浴衣大会の『道明寺のことが好きなの!』だったか?」


「お、おぉう……。」


ーーーーごくり。


「な? 聞きたいだろ?」


当時の事を思い出した司は真っ赤になって、まんざらでもないような顔をした。









「「 で、どうなんだ? 牧野♪ 」」



上機嫌の司と、まだ懲りてない二人……というか、一生懲りない二人は仲良く振り返った。













しかし。









「「 ………… あり? 」」










肝心のつくしは見当たらず、司はずっとつくしの近くにいた桜子に聞いた。


「……おい、牧野は?」

「先輩なら、御手洗い行くって今さっき出て行きましたよ。」

「いつ?」

「ええと……もう、20分前くらいですね。」

「はぁっ!?」


注目を浴びるはずの本人が不在であった。
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