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ライオン #23

「お久しぶりね。」

「……はい。」

張りつめた空気に、思わず喉がゴクンとなった。

「ここで、一体何をしているのかしら?」

「いえ、ちょっと頼まれていたコピーを届けに来たのですが誰も居なくて……。」

言いながら周りに目を泳がすが、しかし、この階で人に会ったのは初めてで。

こんな言葉を楓が信じてくれるのかどうか疑問に思ったが、嘘を言うわけにもいかない。

「本当に?」

「……はい。」


ーーーー 楓の少し疑わし気な視線が痛い。


「じゃあ、私から渡しておきましょう。」

「ええっ!?」

楓の言葉に、必要以上に驚いて顔を上げたつくし。

そのまま差し出された手に、コピーした用紙を渡すのも忘れて顔を凝視してしまった。

「早くなさい。」

「あ、は、はい!」

楓に急かされて渡すも、肝心な持ち主の名前がわからない。

( あーもうっ!)

( あたし、なにやってんだ!?)


「あ、あのでも、あたし、名前聞くの忘れちゃって……。」

「心配無用よ。」

「えっ?」

いつもと変わらない真顔で、つくしから受け取ったばかりの紙を、直ぐ様後ろに控えていた秘書に渡した。

「斉藤。これ、宜しく。」

「畏まりました。」


ーーーー あれ?

なんとかなっちゃった??


一瞬呆気に取られているうちに、忙しい楓達は別の場所に移ろうとしている。

チラリ、とつくしを一瞥し

「では、これで。」

といって部屋を出ていく楓に慌ててお礼をした。

「あのっ、ありがとうございます!」


お辞儀をしていると、離れた場所から声が掛かった。


「牧野さん貴方……。」

「今度のパーティは少し大変ですので、くれぐれも粗相のないように。」

「……はいっ!」

「 因みに、きちんとファーストレディーになって頂かないと司の横に立たせませんので、そのつもりで。 」

「はいっ!」

「では、頑張って優勝してね。」

「はいっ!」










……って、




え?





「 ……………………はい??」




******


メイプルホテル in香港



ロビーにて、5人は一つのテーブルを囲んでいた。




「あきら、上手くやってるかなぁ~?」

「美作さんならきっと大丈夫ですよ。」

「っつーか、司の秘書なんてあきらにしか出来ねえよな。」

「……でも、大丈夫?」

「なにがだよ? 類。」

「司にバレない?」

「だーいじょぶだって!」

「ならいいんだけど。」

「あ、ほら、来たぜ!」


どこからともなく、移動式のワゴンが黒服の男によって4人の真横まで運ばれ、『ありがと。下がっていいよ。』と声をかけると軽く頭を下げたあと男は持ち場に帰って行った。



「「 おっ♪ついに出来たか!」」

「「 きゃ~!」」

「…………。」


ワゴンには真っ白で大きなクロスが掛けられていて、めくらないと中が窺えないようになっている。


「先輩、喜びますかね!?」

「なに言ってんのよ、桜子っ!当ったり前じゃ~ん!」

「そうだよな。」

「…………。」






「んじゃ、御披露目といきますか?」

「これが、俺たち F4 からの……。」

「あっ、ニッシー!違うよ!」

「そうですよ、西門さんっ!」

「おお、そーだった。わりーわりー。……で、なんだっけ?」

「「 私達 T3 からのっ!」」

「そーそー。F4& T3 から戦闘服だっ!!」


ーーーーバサッ!!


白い大きなクロスを勢いよく総二郎がめくり揚げると、それは姿を現した。




「わぁっ!」

「やーん! 素敵~♪」

「うぉ。……すっげ。」

「さっすが司。やること派手だぜ。」

「絶対コレ、あいつだろ?」






ーーーー 4人の目の前に現れたのは、きらびやかやな装飾品。








「優紀ちゃんにも見せてあげたかったねえ~。」

「ほんとですね。T3 で頑張って考えたんですもの。」

「……つーかお前ら、T 3 って一体なんなわけ? もしかして俺らF4 に対抗してたりすんの?」

「さぁ? どーでしょ~?」

「と、すると T はなにかの頭文字だっつーことだよな?」

「正解したら、滋ちゃん家のお茶碗、譲ってあげてもよくってよ♪」

「まじか!!」

「それより、先輩はこの中からどれを選ぶと思います?」

「そりゃ、俺のデザインしたネックレスだろ?」

「え~? やっぱ滋ちゃんの指輪でしょ! ニッシーのは派手すぎ!」

「司ほどじゃねーよ。」

「滋さん、指輪なんてよく作りましたね。」

「えへへ~。やっぱり可愛い?」

「違います。 道明寺さんが知ったら怒り狂うだろうと思って、それだけは皆、手を出さなかったのに。」

「そうなのっ??」

「しかし、類。」

「ん?」

「地味すぎね?」

「そう?」

「いくらパンピー牧野だからって、カチューシャはねえだろ!!」

「これ、結構したよ。」

「いや、それは見りゃわかっけど!」

「司のティアラとどっち選ぶかな?」

「…………司の前でバラすなよ。戦争が起きっから。」







******



「司、こないだの canom との契約はどうなってる?」

「…… canom は前回の会談後、3日後の決議で既に決定しています。」

「あっそ。じゃ、森永製薬は?」

「……そちらも同様に。」

「じゃあ、KEITY の……!」

「新商品も決定しています。」








「…………あ、そう。」


ことごとく即答で返された 束 はつまらなそうに呟いた。










一体何なんだ、親父のやつ。

3日前にいきなりこっちのパーティ出席とか抜かしやがって。危うく、俺の計画がパーになるとこだったじゃねーかよ。




メイプルホテル 香港最上階、VIPルームにガタイの良い男二人がソファーに向かい合わせで座った。

各自、ミニバーで作ったロックを少しずつ飲みながら、親子でたわいもない会話をしていると 父・束 から思いがけない会話を振られた 。





「……そう言えば、つくしちゃんに会ったよ。」

「!?」

「な、なに、勝手なことしてんだよ!?」

「司がいつまで経っても紹介してくれないからだろ? 僕だって息子の嫁ぐらいは見たいんだよ。」



人の親としては当然な事を言ったつもりの 束 。

しかし、一方の司は何故か渋い顔をしていた。


「……どーせ、いやでもそのうち顔合わせるっつの。」

「前から思っていたんだが、なんで、そんなに会わせようとしない? お前達婚約したんだろうが。」


束は、司の意図がわからない。






「……や、……だだ。」

「んっ? なんて?」

上手く聞き取れず 束 は少し身を乗り出すと、対する司は、姿勢を正して束と向き合った。

「親父……いや、会長。」

「?」

「俺、今回の結果次第では、あの話受けようかと思っています。」

「!!!!」












「……良いのか?」

「ああ。」

「やっぱり出来ません。は、無しなんだぞ?」

「わかってるよ。」

「しかし、お前なぁ……。」

「良いんだ。」








「俺は、牧野を信じる。」
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