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ライオン #25

「は?スミスはいま日本に居んのか?」

「ああ、今朝連絡が入ってな。生憎、私たちは居ないよと伝えたんだが……。」

「タイミング悪ぃーな。」

「それ以外にも用があったみたいで、東京本社に寄ると言っていたよ。」

「……何しに?」

「さぁ? 可愛い愛人でも探しに行ったのかな?」


束が冗談めかして言うと、司の背筋にザワリと悪寒が走った。


「!?」


ーーーー ガタンッ!!


「どうした?急に立ち上がって……。」

「……いや、なんでもねー。」

「?」

司は、勢いよく立ち上がった椅子に再び腰を下ろした。






( ただちょっと、嫌な予感がしたんだよな……。)






******



「…………へ??」


そう呟くと共に、後ろを振り返り見上げた。するとそこには、穏やかな表情をした中年男性が。


「!!」


つくしはすぐに、ピンときた。


「わぁ~っ!!」

驚きの余り絶叫するつくしをものともせず、男は母国風につくしを抱き締めて再会を喜んだ。

「tyukusi!!」

「キャッチボールのおじさんっ!? だよねっ??」

「oh!Yes!」


「「「「 ???? 」」」」


日本語と英語で、なぜ会話が成立しているのか?

周囲に居るもの達は不思議なモノを見るような顔で見ていたが、当の本人達はそんな事気にしちゃいない。


当然、

『な、あの人って……だよな?』

『あの女の子、誰??』

『あの子だよ、あの子っ! 前に噂になった、入社早々副社長に説教した子!』

『うそ~。あんなに大人しそうな子が??』


などと噂されていたが、もちろん聞こえていなかった。




******




懐かしいなぁ……。

おじさんとは、NYのセントラルパークで会ったんだっけ。



『おじさん、ハンバーガーあげる!!』

『おじさん、気合いよ気合い!!』

『誰?』

『たぶん失業中の悩めるおじさん。』

『キャッチボールしよう♪』

『君はいい生き方をしてるんだね。』

『大切にしてください。人生も、ボールも。』



なんて事があったなぁ。

……まぁ、実際には道明寺家に引けを取らない位の実業家で、会長さんだったみたいなんだけど。

それから、キャッチボールのおじさんこと会長は、つくし達が食べている食事に目を移し、こう言った。


「これから、約束のランチをしませんか?……と言いたい所だけど、既に間に合っているようだね。」

「あ、すいません。」

「いやいや構わないさ。アポも取らずに押し掛けたのは私だからね。」

「そんなこと……。あっ、宜しければ、お昼ご一緒しませんか??」


ザワッ!


「?」

アレ?あたし、変なこと言ったかな?

少しの間を空けて、会長はHahahaと軽快に笑う。

「本当につくしは面白いね! 実に可愛らしい!」

「は?はぁ……。」


ーーーー よくわかんないけど、褒められた?


「お言葉に甘えて、一緒にランチを一緒に取らせて貰おうかな?」

「あ。どーぞ、どーぞ。」

言いながら、空いていた隣の席を引いて見せ「こちらにどうぞと。」案内をした。

「ちょっとした自慢ですけど、ここの社員食堂はオススメですよ!」

「そうなのかい? 実は、その手のものを食べるのは僕は初めてでね。つくし、案内を頼んでも構わないかい?」

「もちろん!」

会長の申し出を、つくしは満面の笑顔で引き受けた。

「ここはバイキングになっていて、好きなものを好きなだけ取るって言う感じです。」

「アメリカンスタイルだね! それならわかりやすくていい!」

「和食・洋食・中華が主になってますので、お好みのものをどうぞ。」

「ありがとう!」

「ところで……ここはカードは使えるのかい?」

「え?カード?」

「実は日本円に替えて来るのを忘れてしまって……。」

おじさんは少し困ったような顔をした。

「ああ!大丈夫ですよ!ここは無料ですから!」

「ええっ!? 本当かい!? ビックリだ!」

「あはは。私も初めはビックリしたんですけど、使わなきゃもったいないなって。」

「もったいない! 知っているよ! 日本独自の言葉だね!」

「そうそう! エコみたいな感じです。」

「エコ、かぁ……。面白い! 魔法の言葉以外に、また君に教えられたようだ!」

キャッチボールのおじさんは、これ以上ないくらいの満面の笑みでつくしに笑いかけた。

「あははっ、教えるってほどのもんでもないですよ。」

「……あ、これなんかどうです? 鯖の煮付け。」

「おお! いいね!」


日本語と英語で、へんてこりんなコミュニケーションを繰り広げる二人を周りの者は見て見ぬ振りをしたが、どうしても見て見ぬ振りが出来ない者がいた。それは、つくしが席を立ってから様子をずっと見守っていた三人である。




「ま、牧野さん、二人で何話してんの?」

「……解らん。」

「遠くて聞き取れねえ。」

「なんで仲良さげなんだろう?」

「てゆーか、どうやって通訳も無しに会話が成り立ってんの?」

「「 全っ然、わからん。」」

「それより、あのスミス会長にバイキングなんて食わせて良いのかな……。」


三人の謎と不安は、深まるばかりであった。



******


深夜 11時頃。


ちょうどお風呂をあがったところで、着信音が鳴った。





プルルルル……

   プルルルル……



ピッ……

「もしもし?」

「おう。俺だ。」

「あ、う、うん……。」

3日ぶりのアイツの声に、意味もなくドギマギしてしまう。

「ど、どうしたの? なんかあった?」

「別に、どうもしねえよ。」

「そっか。」

「……明日、こっち来んだろ?」

「うん。」

「迎えに行くから。」

「えっ!? い、いいよ!来なくてっ!」

つくしが咄嗟にそう答えると、案の定、司は機嫌が悪そうなムスッとした声になった。

「何でだよ。」

「だって、あんたが来たら空港がパニックになりかねないっ!!」

「んじゃ、SP付けてやる。」

「意味ないじゃんっ! てか余計に目立つから本当に止めて!」

「じゃ、うちのジェット使え。塗り替えさせたからよ。」

「道明寺も居ないのに、あたし一人で乗れるわけないでしょっ!」

「なんだよ、いい年してまだ飛行機がこえーのかよ?」

「違うわアホッ!」

「とにかく、迎えに行くからな。」

「来なくていい!」


「……お前、俺に会いたくねーの?」

「そんな事……誰も言ってないじゃん。」


「じゃ、決まりな。」

「ちょっと!?」

「明日、こっちので15時着な。遅れたらブッ殺すぞ。」

「……殺されるんなら行きたくないんだけど。」

「うっせ。遅刻すんなよ。」

「はいはい。それは飛行機に言ってね。」

「……減らず口め。」

「あんたには言われたくない。」

「ケッ。」


本当、我ながら小学生の会話だわ……。でも、意外とこんな時間も嫌いじゃなかったりする。


「じゃ、また明日な。」

「うん。来なくていいからね。」

「…………死んでも行ったる。」

「あははっ、わかったわかった! じゃあ、とびきり地味な格好で来てね? 無理だろうけど。」

「じみ……。」

「…………。」


こりゃ、駄目だろうな……。


まぁいっか。


「おやすみ。切るよ?」

「おう。……あ、やっぱ待て。」

「?」







「愛してる。」








「んなっ……!?」

「いちいち照れんな、タコ。」

「じゃな。」


そうして奴は、言いたい事だけ言って電話を切ってしまった。

照れんな、って……。

照れずに、こういう事言えるあんたのがおかしいと思う。

イタリア人じゃないんだから。

最後にトドメを刺されたあたしは、火照った顔を自覚しながら眠りに就いた。
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