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記憶喪失物語~after story ~ その4

 
どこに行ったかと嫌な予感がして探してみれば、案の定だ。

少し目を離した隙に類とイチャイチャしやがって。

気にくわないが、今回ばかりは自分に引け目があるのでそこはぐっと堪えた。

だが、いつの間にか牧野を取り返した右手に力が入っていたみてーで、牧野からの訴えを聞いてそこで足を止めた。



「ちょ、ちょっと! そんなに引っ張んないで! 痛いって!」

「あ?」

「ヒッ! ななななに、そんなおっかない顔してんのよ!」

「……フツーだろ。 っつーか、こんないい男捕まえといて何抜かしやがる。」

「ぜんっぜん普通じゃないし! その顔見たら、子供も動物も逃げ出すわよ!」

「ばーか。そんなん、こっちから願い下げなんだよ。」

司はそこでやっと握り締めていたつくしの左手首を離すと、対するつくしは拘束を解かれた左手を右手で擦った。

「ああもうッ! いったい! アザになってんじゃん!」

「……どれ。」

痛いアピールをするつくしに、司は自らの手を差し出し、見せて見ろと促した。

「ほらココ!」

「…………舐めとけ。」

「だから犬じゃないっつーの!」

「てゆーか、みんな置いてきちゃって……どーすんのよ。」

引っ張られるままついてきたけど、さっきいた会場からは少し離れてしまっている。

「ほっとけよ。どーでもいーだろ。」

「どーでもいいってあんた。」

「そんなことより、俺は、2人になりてー。」

「!?」

「いこーぜ。」


ーーーー ええっ!?


「ちょっとっ!」




******




「あれ?」

「司と牧野、戻って来てなくねえ?」


会場に残された者達は、抜けた2人に気付き始める。


「居ないですね。」

「ホントだ! つくし、どこ行っちゃったんだろ?」

「……そんなの、決まってんじゃないですか? 滋さん。」

「なら良いんだけど、迷子になってたら……。」

滋が心配そうにしていると、類が答えた。

「さっき、司が連れてったから大丈夫だよ。」

「本当? 良かったぁ~。」

「「 ……やりやがったな、司め。」」

二人で遊ぶ気満々だったお祭りコンビは、お酒が入っているせいか、少しタチが悪い。

「でもこんな事もあろうかと、つくしに発信器着けてたんだよね~。」

「滋! お前、いつのまに……。」

「へっへっへー! 楽しそうでしょ? つくしの着けてるピアスの一個が発信器なんだよ~。」

「「「 発信器!!?」」」

「牧野って穴あけてたっけ?」

「あけてないよ! こーやって、挟むやつ。」

「プライバシーもへったくれもねえな……。」

我に返ったあきらが常識を口にするが、誰にも聞こえていない。

「ね、見てっ!」

そう言って、滋は自身のスマホを見せびらかすようにかざした。

「……お。そんな遠くには行ってねぇみてーだけど、こりゃ、戻るき無さそうだな。」

「だな。」

「まぁ、帰国して間もないし、ふたりっきりにさせてやるか。」

「……しゃーねーなぁ。」


そう言いつつ、全員の細めた瞳からは優しさが滲み出ていた。





******





「どこいくのよっ」

「どこでも。……お前、どこ行きたい?」

「何処って、別に……。」

「じゃ、適当にブラつくか。」

「うん。」

「手、出して。」

「…………。」

「違う。誰がアザ見せろっつった。」

「だって、痛かったもん!」

「……しゃーねーな。 ちょっと待ってろ。」

「うん?」

そして、司はおもむろに携帯を取り出すと、何処かに掛けはじめる。

「俺だ。」

「……ああ、ちょっとな。」

「救急箱用意して待ってろ。」

「!?」

ーーーーちょっとちょっと!?

「い、いいって! 冗談だってば、冗談!」

「あ、あと適当に服もな。」

「ばかーーーーー!!」

モゴモゴモゴ……

あたしが必死に抵抗するも虚しく、大きな手でうるさいと言わんばかりに口を塞がれてしまう。

「……あ?なんでもねえよ。じゃな。」


ピッ……


話し終ると、直ぐ様携帯の電源ごと落としてつくしに向き直る。

すると、口を塞いだままだったので、苦しいのか、顔を真っ赤にしてフガフガと必死にもがいていた。


パッ

「お。わり。」

ドスッ!

「……ごふっ!?」

間髪入れぬ見事なパンチが、司にクリティカルヒットした。

「あたしを無視して勝手に物事を進めないでっ!」

「~~だからって、的確にみぞおち狙うんじゃねぇよっ!」

「……っと、こんな所でこんな事してねーでいこーぜ。」

「だからどこにっ!?」

「メープル。」

「……えええええええ!? ヤダッ! なんでっ!」

「過剰反応すんなっ!」

「だって!」

「着替えねーと目立ってしょーがねーんだよ。」

「…………あ、そう言えば。」

言われて気がつく。

あたしと道明寺はドレスとスーツ姿のままで……。

こんな街中に、ドレスコードなふたりは目立ちまくっていた。

「な、なんか恥ずかしくなってきた……。」

「だからさっきから、行こうっつってるだろっ!」

「は、走ろう! 道明寺っ!」

「はぁっ!?」

「行くよっ!」

ダッ!

つくしは司を置いて、いきなり全力で走り出した。

「ちょ、待て待てまてっ! 迎えが来るに決まってんだろ!!」

「早くしないと、置いてくからね!!」

「聞けって、おいっ!」

「早くーー!」

「…………。」


ーーーー ちっとは 人の話を聞きやがれ。


俺の遥か先を走る女はみるみるうちに小さくなって、今にも見失いそうだ。

目立つのが嫌だと走ったものの、それが余計に目立ってることに気づいてんのかあいつは?

つーか、足はえーな おい。

文字どおり、あいつを追いかけてたあの頃よりも確実に早くなってるような気がしてならねーんだけど。


「……このくらいでいいか。」


運動不足で鈍った身体に、随分と空いてしまったこの距離。ハンデはこのくらいでちょうどいいだろう。


「…………燃えるな。」


絶対に、捕まえてやる。

久しぶりの狩りに、胸が疼いた。











牧野。


とりあえずお前を捕まえたら、返さなきゃなんねーもんがあんだよ。

それから、なんで、これがここにあるのかも聞かなきゃいけねえ。

あの時、確かに捨てたこれがここにあるって事は……。



きっと、俺が思ってたよりも、お前はずっと俺を想ってくれてたって事だよな。



ごめんな。



俺、あの時もたぶんいっぱい泣かせちまっただろうけど、その分絶対に幸せにする。







「牧野ッ!!」










全身全霊で伝えた。

全速力で追いかけた。

ほろ苦い失恋から、想い合える恋愛まで、お前が教えてくれたんだ。




わずかに見えた一筋の光。

何度も何度も光を見失いそうになりながら、絶えず足を動かした。

するとそのうち、色んな方向からゆっくりと光が差し込んで。

気づけば、どっぷり嵌まっていた筈の暗闇さえ溶けてなくなっていた。

ふと見上げれば、小さい筈のお前がいつも居て、太陽のように俺を照らしてくれたんだ。




この気持ちを何と呼べばいいのかなんて、もうわかってる。

いつもの自分らしく、伝えよう。

右ポケットに入れた小さなビロードの箱に、背中を押して貰いながら。
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