fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

記憶喪失物語~after story ~ その5

「んっ! おいし~っ♪」

「……そりゃ、良かったな。」



目の前に居る、幸せそうにメシ食ってる女。


………… ハムスターか?



あれから俺は牧野を無事捕獲出来た訳だが、どういう訳か、こんなところでメシを食う嵌めになってしまっていた。





『おい、待てっつってんだろっ!』

『……あ、もう、大丈夫?』

『大丈夫も何も、ここは何処なんだよ!? 闇雲に走んじゃねえ!』


牧野をやっとこさ捕まえたのは良いものの、気がつけば、俺達はよくわからない路地裏に迷い混んでしまっていた。


『……ここ、どこ?』

『だから俺も知らねえって……。』


キョトンとした牧野の顔は、本当に闇雲に走って来てたみてーだった。


『……ま、迎えに来させるか。』


いくら何処でも良いっつったって、こんな何もねーとこに居たってしょーがねえ。

いやまぁ《何か》は、あるっちゃあるんだけど…………これはマズい。牧野もそれに気付いたのか、珍しく俺の意見に賛成したようだ。


『……うん、そうだね。』

『じゃ、掛けるわ。』

『うん。』

『……って、ワリィ。 電源落ちてた。』

『えっ?』

司が真っ暗な画面の携帯をつくしに見せると、つくしはじゃああたしの携帯で掛けてと自身のポケットを探った。




しかし。


『……うあっ。』

『どうした?』

『ごめん、荷物全部会場に置いてきちゃった……。』

『……………………マジか。』

『いつもはポケットに入ってるんだけど……。』


さすがに、今夜のドレスには付いていない。

ふたりして、連絡手段が絶たれた。


『……どーすっか。』

『う~ん……。このままじゃ帰れないなぁ。』

『お前今日、弟に言ってきてんの?』

つくしは現在弟の進とふたり暮らしだった為、帰宅時間を気にしていた。

『進? ああ、あの子は今日友達の家に泊まるって言ってたから。』

『そか。 ……じゃあ、今夜一晩俺に付き合えよ。』

『ひひひ、一晩っっっ!?!?』

『ばか、過剰反応すんな。 まだメシも食ってねーだろ? お前。』

『あ、ああ。うん、それどころじゃなかったっていうか……。』


ーーーー て言うか、よく見てるなあ。


きゅるるるる~!!!


豪快に牧野の腹が鳴り、思わず笑みが溢れた。


『…………ぅあ。』

『クッ、』

『ほら、行くぞ。』


恥ずかしいのか、顔を少し火照らせたつくしの手を取り、司が歩きだす。


『携帯もないし皆に連絡できないね。』

『んなもん、いらねーだろ。』

『なんでよ!? 勝手に抜け出して来ちゃって……せめて、優紀には謝っときたかったんだけどな。』

『ああ、後でな。 それよりメシ、何がくいたい?』

『ん~ ラーメン?』

『却下。』

『もうっ! 美味しいのにっ!』

『じゃあ、適当に近くのお店でいいじゃん!』

『やだね。 こんな汚ねーとこ入れっか。』

『もうっ、我が儘!』

『あ、ココ! ココはっ!?』

『い……』

『ほらっ、アンタ好きでしょ!?』



「やだ。」が続く前に、腕を取られ、強引に店内へと誘われた。











「ほらっ、道明寺も食べなよ!」

「……なんだ、それ。」

「え、あんたお好み焼き、好きじゃなかったっけ??」

「お好み……。」

「お姉さんに作ってもらったことあるでしょ!? え、やだ、お好み焼きの事も記憶喪失!?」

「…………。」



ーーーー そういえば。


なかなか強烈な匂いと共に、懐かしい思い出が甦ってきた。


「……スゲー懐かしー。」

「えっ? 好きなんだよね??」

「ああ。でも食うのは……えーと、5,6年ぶりだな。」

「好きなのに、食べてないの?」

顔に思いっきり《理解不能》と書かれた牧野が目を丸くした。

「ガキの頃はまだよかったらけどな。 中等部にあがると人前では食えねーし……。 いい大人が好き嫌い出来ねーのと一緒で、企業はイメージっつー下らねえもんを大事にしたがるからよ。」

「……そっか。」


"御曹司"という生まれながらに背負った運命《さだめ》に、華やかながらも狭苦しいルールに幼い頃から強いられてきたのかと思うと、胸が傷んだ。

「その頃は作ってくれてた姉貴も忙しかったし。 んで、そのうち存在も忘れてた。」

「我が儘なあんたも、振り回されることってあったんだね……。」

「…………おい、どういう意味だ。」


しみじみと語る牧野の顔に、今度は《かわいそう》と書かれている。

ったく、この俺を可哀想がるのなんて、世界中探したってお前くらいなもんだ。


「……それに。」

「?」

「俺はお前ほど食欲旺盛でもねーし。」

意地悪気につくしの顔を覗き込んだ司の口角がにやっと歪む。

「!! しっ、失礼ねっ!」

「ほら、食おーぜ。 腹へった。」

「……え? あ、ああ。うん。」


司の、パキッ。 と割り箸を美しく割る仕草に、勢いも萎んでしまった。



ーーーー やっぱり、これまでの生き方が180度違うから、話さないと知らない事は沢山あるんだろう。

でも、これからは、たまにお好み焼きを作ってあげようかな。





******


ザアアアアアア………



「うお。すっげ。」

「…………げっ。」


すんごい、雨。

あたし達は食べ終わって店を出て直ぐに、ゲリラ豪雨に襲われた。


「どーしよ……。」

「やべぇな。 これじゃ帰れねーじゃん。」

「…………。」


土地柄か、まだ早い時間だというのに周りの店の明かりは次々と消えて行く。

コンビニもなくて、傘も買えそうにない。






どうしよう


あたしのせいだ。


こんな格好じゃ、走って行くなんてとてもじゃないけど無理……







ポンッ。


「え?」

「んな、泣きそーな顔すんな。雨くらいで。」


知らないうちに不安が顔に出ていたのだろう。気づいた道明寺が、あたしの頭をクシャリと撫でながら安心させるように、笑顔をみせた。


「暫く待ちゃ、こんな雨止むだろ。」

「そうだね……。」


道明寺の気遣いが心に染みた。

だけど、待っても一向に雨は止みそうもなくって……。


「クシュンッ」

「大丈夫か!?」

「ごめ……ちょっと、寒くなって来ちゃった。」

「お前のジャケット、薄いもんな。 ほら、着てろよ。」

バサッと道明寺が自分の上着を脱ぎ捨てて、あたしにかけた。

「い、いいよっ!」

「バカ、着てろ。」

「いい、要らないって!」


これ以上迷惑をかけたくない。

その一心で振り払った。




が。




「おまっ、危ねっ……!」

「へ。」



バッシャアーーーーン!!



「「 ……………………。」」



車道を走る大型トラックが至近距離を通りすぎ、運悪く跳び跳ねた水をモロに被ってしまう。

「ご、ごめ……。」

咄嗟に守ってくれたのだろう。寸前で道明寺が庇ってくれたお陰で、あたしはほとんど濡れなかった。

でも。

「つめてぇ……。」

庇ってくれた道明寺は頭からもろに水が滴っている。

「わわわわ、風邪引いちゃうっ!」

慌てて、唯一持っていたハンカチで拭いたけど、こんなんじゃやっぱり足りない……。

「……牧野。」

「え? なにっ?」

小さいハンカチで拭いては絞って、また拭いてを繰り返していたあたし。

「風邪、引くかもしんねえ。」

「うん、ごめんねっ?」

「いや、お前が被るよりはずっといいからいいんだよ。だから……」

「だから??」

「頼みがあんだけど。」

「なになにっ?」

「あそこ、行ってもいいか?」

「えっ……。」


道明寺が指をさす方向につられて顔を向けると、何やらきらびやかな建物が。

遠目からでもわかるアレは、きっと……。

「さすがにこれじゃ、俺もヤバイ。 風呂入りてえ。」

「…………。」


濡れたスーツを気持ち悪そうに摘まんで、顔を歪めた。

正直、怖いけど……そんなこと言ってる場合じゃないよね。










………… 頑張れ。





頑張れ、あたし。










「そ、そそそそうだね! 行こっか。」



  女は度胸だ! 牧野 つくしっ!!
すいません。。。全然纏まらなかった。。。orz土下座。
スポンサーサイト