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記憶喪失物語。#7

「ちっ、」

また近づいて来る足音に舌打ちして、逃げ場を探す。

キョロキョロと辺りを見渡すが、何処に行ってもこの先は袋小路だ。

「しゃーねーな。シケ込むか。」

ぽつりと呟いて

ポケットにあるキーケースを取り出す。

ジャラジャラ出てきた鍵の一つを手にし、

早足で歩いて行く。

カッカッカッカッカッカッカッ

革靴の音が響く。

タッタッタッタッタッタッタッ

同じ速度で走る足音には、革靴の音に紛れて気が付かない。

(あった‥‥!)

司はその部屋に入ろうとしたが、部屋の前には先客がいた。

(待ち伏せか‥‥‥!?)

そう思って身を隠し暫く眺めていたが、どうやら違うようだ。

その女は近づいて来る足音と声に敏感に反応し、袋小路のこの状況に参って居るようだった。



(そうか、こいつがさっきから追われてんだな??)

俺は咄嗟に自体を把握し、だんだんと近づいて来る足音に背中を押され、暴れられたら面倒だとゆっくり女に近づいて。


「こっちだ。」

腕を掴んで素早く鍵を開けて、女ごと部屋に放り込んだ。



******

「あら?つくしちゃんは?」

休憩時間に現れた椿。

「いねーよ。牧野も司も。」

「やだ~っ!つくしちゃんとお昼食べようと思って来たのに。」

椿の顔が残念そうに落ち込む。

「牧野はさっきまで居たけど、飯買い行くって出て行ったよ。」

珍しく類が答える。

「そう‥‥。」

なんだかどよんとした空気。





「司は朝から見てねーな。」

「おぉ、アイツ写真嫌いだから逃げたんじゃね?」

「かもな。」




それまで真剣な顔をしていた椿が顔を上げて辺りを見渡した。












「‥‥‥そう言えば、司は?」




「「だから居ねえって!!」」







「姉ちゃん、俺らの話聞いてた?」

「実の弟より牧野かよ‥‥‥」

「さすが牧野♪」

何故か嬉しそうな類。



何だか力の抜けたあきらと総二郎だった。


******




なんつー女だ。



叫び声出されたら見つかっちまうから軽く口ふさいでたのに。

そのまま俺の手、かぶり付きやがった。

「‥‥ってえんだよ!!バカ女!!」

「テメェ助けてやったっつーのに、何しやがんだ!!」

「アンタが悪いんでしょう!?」

「声も掛けずに口ふさいで暗い部屋連れ込まれたら誰だって暴れるわよ!」

「大体、誰がいつ助けてくれって頼んだのよ!!」




‥‥かっわいくねえええええ!!!!!

この俺に助けてもらっときながら、礼のひとつも言わねえで文句タラタラ!!

こんな生意気な女初めてだ!!

「てめ、さっきから俺が誰だかわかって言ってんのか!?」

冷たい司の眼差し。

「知ってるわよ。」

「道明寺財閥のバカ坊っちゃんでしょ。」

地を這うようなつくしのドスの効いた声。

「‥‥‥ふーん。」

しかし司は気づかない。

「お前、良い度胸してんなあ?」

「それは昨日も聞いた。」

「あぁ!?」

つくしの言った言葉にイラついて、眉間を寄せて顔を覗き込んだ。

「ふざけた事ばっか言ってっと、張ったおすぞ!!」

「庶民が俺様に口聞いてんじゃねぇ!!」


そこでギロリと睨むつくしと目が合った。






「‥‥‥あ。」



(こいつは‥‥‥!)



やっと、気が付いた。





(俺んちの、ベッドで寝てた女‥‥。)









「あたしはっ!!」


つくしが、叫ぶ。


「確かに庶民だし、地位もお金も美しさも何も持って無いよ。」

ゆっくり、目を逸らすことなく、ただしっかり司の目を見て。





ーーー大きな瞳だった。








怒りの感情を露にしているのに、キラキラと輝いて。



吸い込まれてしまいそうになって、司は息を飲んだ。








「だけどね。あんたにバカにされるような生き方はしてないっ!」


ーーーもう、ダメだ。

頭の中では、もうやめておけと警報がなってるのに。


口が、止まらない。











「あんたの腐った根性叩き直してやる。」









一年前、同じ台詞を言った。


だけど、あの頃とはまるで正反対に低く、低く、怒りを閉じ込めるように。
















゛クッ゛


それまで黙っていた司の喉が鳴った。

口の端を上げて、皮肉そうに笑って。



「おもしれー。」



挑発的な野生の目が、光る。



「やってもらおーじゃん。」


つくしもキッと睨んで。


「宣戦布告よっ!」


再び、戦いのコングが鳴った。
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