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ライオン #28

「で、一体あたしは何をすればいいの?」

売り言葉に買い言葉。

またしても嵌められてしまったと、気づいた時には遅かった。

けど、言ってしまったものは仕方がない。前言撤回するのも何だかカッコ悪いし……。

こうなりゃ、何でもやってやろうじゃないのっ!!

爪がめり込む寸前くらいに両手を握り締めて、息を吸い込んだ。

しかし、そう意気込んだあたしに肩透かしを喰らわせる空気の読めない
奴が一名。

「別にねーよ。」

「はっ? 無いわけないでしょうが!」

「ねーもんはねえ。」

「ふっ、ふざけないで! 大会まで、あと3週間しかないんでしょう?」

「そうだな。」

「ほら、やっぱり時間ないんじゃんっ!」

どうせなら、出るからには一番を目指さなきゃ女が廃る。あたしだって、磨けばそれなりにマトモになるのよ。だから、何をしたら良いか早く教えて欲しいのに、道明寺は目線だけこっちに寄越して終始無言。

怒ってるわけでも無さそうだけど、何故かジッと見詰められて言葉を失った。

道明寺は、何を考えているんだろうか。

「お前、さ。」

「へっ?」

「踊れんのか?」

踊るって、社交ダンスの事?それなら、在学中にしこたま美作さんに練習させられたから……

「まぁ、一応。でもそれ、」

「じゃ、他には?」

道明寺はあたしに最後まで言わさず、その後も、茶は華はピアノは書道は英会話はといった矢継ぎ早な質問攻めにあうことになった。

「もう、さっきから一体何が言いたいのっ!?」

「…………お前は、ほんとにわかってねぇな。」

それだけ言って、わざとらしくため息をつく。

「ま、一応説明しといてやるよ。」

「うん。」

「クイーン オブ ジャパン っつーのは、その名の通り日本一の女を決める大会だ。」

「……ミスコンみたいなもん?」

「ああ、ほとんどな。」

「へぇ……。」

じゃ、TOJと変わらないんじゃ?

「だから、お前は何もしなくていいんだよ。」

「ハァ!?」

なんでそうなる!?

「……強いて言えば、その言葉遣いを直すこった。」

「ううう、うるさいなぁ……。」

つくしは少し赤くなって司を睨むが、当の司は楽しそうにつくしを眺めている。

「あとは、その貧相な身体をどうにかしてやんねーと。」

「!!?」

「ど、どういう意味よっ!」

「そのまんまだよ。」

司はそう言うと座っていたソファーから立ち上がり、つくしの目の前に立ち塞がると、慣れた手つきでつくしのスーツのボタンをさも
当たり前のように外し始めた。

「ちょっ、何して……!?」

「…………。」

徐に、スーツを脱がせにかかる彼をつくしは当然顔を真っ赤にして怒るが、その肝心の本人は聞こえていない筈はないのに、涼しい顔をしている。

「~~んもうっ、聞いてんのっ!?」

ブラウスのボタンを半分以上はだけさせられたところで、頭上にいる彼を力の限り睨んだが彼の瞳が恐いくらいに静かで、つくしは思わず怯んでしまった。



ーーーー あ。


この瞳は、ヤバイ。


真っ黒なのに、燃え盛る炎のように熱を持っている。



「……おとなしくしとけ。」

「俺、今、充電空っぽで死にそーなんだわ。 おとなしくしとかねーと何するかわかんねーから。」

やっと応えたと思ったら、こんなオソロシイ事を言う。

「……セクハラ上司。」

抵抗しても無駄だと悟った女は、真上に居る男をギリギリと睨んだ。

「抜かせ。」

「自分の女抱いて、何がわりーんだよ。」

「あのねっ! あたしはあんたのモノじゃないって何回言えば…………んんっ!!」

口だけでも抵抗しようと試みたものの、それもあっという間に塞がれてしまう。

息も絶え絶えに、つくしがやっとの思いで離された唇で空気を貪っていると、男は恥ずかしげもなくのたまった。

「お前が、どう言おうと……」

「お前は俺のモンだ。黙って、喰われてろ。」

「……だから、あんたは猛獣っていわれるのよ。」

「言ってろ。」


頬に手が添えられ、笑いを含んだ司の唇が再び近づいて来る。

久しぶりに触れた唇はとても熱くて、優しくて……

そのうち、苦しいくらいにあたしを抱き締める身体が、あたしの体温をもっともっと火照らせた。


******


「あ、つくしっ!」

「……滋さん!?」

「……チッ。」

数時間後、道明寺と一緒にメープルホテルを出て、夕食をとっていた所に皆が突如現れた。

「やっと会えた~!!」

「へっ?? てゆうか、皆なんでここにいるのっ!?」

「なんでって……そりゃ、ねえ?」

「そりゃ~、我らがつくしちゃんの為でしょ。」

「……あたしの為っ????」

「オイッ! お前ら邪魔すんなっ!」

「おいおい、司。 そりゃねーだろ?」

「と、とにかく皆、座って?」

急遽、二人用の席を大きなテーブルに代えて貰い、皆で席に着いた。皆なんでここにいるんだろう?

それぞれが好き勝手言っている間中、考えに考えて、ああ、そうか。と結論に至った。

「皆も、パーティに出るからここにいるの?」

そうだよ。もとはと言えばあたしもその為に香港に来たのよ。

「ん~。まっ、そんなとこだな。」

「先輩にしては、察しがいいですね。」

「やっぱり!?」

そっか、皆も同じパーティに出るんだ!

馴れないパーティで緊張するのは解りきっていたことだけど、皆も一緒だと思うと、心強い。

つくしは少し安心したように胸に手を充てて、ホッと息をつく。

「あのね~、つくし! 滋ちゃんはカメラマンしにき……モゴモゴモゴ!」

「ばっ、滋!」

「滋さんっ!」

滋さんが最後まで言い切らないうちに待ったがかかり、続きは美作さんの両の掌へと消えていった。

「……? カメラマン……?」

何やら怪しい皆の様子に、つくしは眉を潜めて視線を投げ掛けた。

「か、カメラ係! そう、カメラ係だよなあ!? あきらっ!」

「お!? おぉう、そうだよ! カメラでこの百万ドルの風景を撮るんだよ! 滋が! なっ?」

「……え~? 滋ちゃん、そんなのいやだなあ。」

ガターーーンッ!!

「滋さんっ!!」

「へっ?」

「お手洗い、付いてきて下さいっ!!」

「うん、いいけど……?」

勢いよく桜子が席を立ったと思ったら《 お手洗い 》を店中に響き渡るくらいに叫んで……淑女を自称する桜子にあるまじき行為だ。

彼女らの後ろ姿を見送ったつくしは、猜疑心で一杯になった。

「な、なんなの? 一体……。」

「き、気にすんな! 牧野っ!」

「そうだよ、飲め!ホラ!!」

ドボドボドボ~~~

「ぎゃっ、こんなに飲めるか! アホ!」

「……ワイン、グラス一杯になってるよ? 牧野。」

「知ってるわ!!」

「道明寺! 笑ってないで止めなさいよっ!」

「こんくれー、余裕だろ? ついでにもっと食っとけ。」

ポイポイポーイ

「あああああ! 増やすんじゃない! ばかっ!」

「痩せすぎなんだよ、もうちょい太って抱き心地よくしとけ。さっき触った時思ったけど、お前、さらに痩せただろ?」

「!!」

いきなり何を言うのよコイツはッ!!

「「 ……さっき?? 」」

こいつらも、食いつかなくていいから!聞き流しなさいよっ!!

「あのさ……。」

ほら、類を見習いなさい!!話をさりげなく逸らそうとしてくれるじゃないのっ!

「ななな、なになになに!?」

「首の所、キスマークついてる。」

「…………っ!!!!」

「あれ? 虫刺されだった?」

「……合ってるよ。キスマークで。」

コラーッ!道明寺ッ!肯定すんじゃないよっ!!

「……っつーか、類てめぇ。牧野の首なんか見てんじゃねーよ、イヤラシイ奴だな。」

「? イヤラシイのは、わざわざあんなバレやすい所にキスマークつける司でしょ?」

「うるせえっ!男避けだ!文句あっか!!」

「お、おいおい、お前ら止めろって……。」

~~~もうやだっ!!こいつらにはデリカシーってもんがないのっ?周りのお客さんの視線を、色んな意味で集めちゃってるじゃないっ!

いつもなら頑張ってコイツら止める所だけど、こんな好奇の目に晒されてちゃ……逃げるが勝ちってもんよ!

「あ、あたしもトイレ行ってくる!」

「……あ、おいっ! 牧野っ!?」

言い捨てて逃げたあたしを引き留める西門さんの声が聞こえたけど、聞こえないフリをして走った。


******


はぁ……。

とんでもない目に合った。

一番近くのトイレの個室に逃げ込んで、ただ時が過ぎるのをトイレの便座に座って時計とにらめっこしながら待った。

そういや、桜子と滋さんはもう戻ったのかな……。

ここのトイレには居なかったみたいだけど。

つくしがここのトイレに入って来た時は誰も居なかったが、ただ時が過ぎるのを待っていたら、当然、そのうち人は入ってくる。

それが一人なら良かったのだが、連れで入って来ると化粧台の前でお喋りを始めてしまうので、盗み聞きをしているような居心地の悪さがある。

まぁでも、ここは香港。

万が一、鉢合わせても『あたしは日本人だから、意味解んないですよ~?』的な対応で充分だろう。そう思っていた。

なのに。

「ってゆうかさっき、F4見た!?」

「見た見た~!ちょー格好良かったぁ~」

日本語が紛れ込んでいるではないか。

しかもF4の話題。心臓に悪いから、やめて欲しい。

「てゆーか、道明寺さんの隣に座ってたのって彼女だよね!?」

!!

あたしのことっ!?

「あっ、そういや居たね! あれは確かにヤバかった!!」

何が、ヤバかったんでしょうか……。

尚更このまま出ていく訳もいかず、無駄な抵抗かもしれないが、聞こえないように耳を精一杯塞いだ。


プルルル

  プルルルル


「!!」


タイミング悪く鳴った着信音に、心臓が止まりそうになる。

「え? 誰の携帯?」

「あっ、ほら、個室いっこ閉まってるじゃん。そこだよきっと。」

もちろん外の日本人にも聞こえたらしく、姿は見えてないけど、視線が突き刺さるようだ。


ああああ、もう誰よっ!?

半ば八つ当たりのように携帯に怒りの矛先を向け、着信元を見ると《 道明寺 》と書かれている。


「げっ。」


ーーーー 仕方ない。


このままおとなしく悪口聞いてるよりも、あっちの騒動に巻き込まれてた方がましかも。

そう思うやいなや、バンッ と扉を開けていた。

「あ……。」

さっきの噂話をしていたと思われる女の子二人組が、あたしを見て驚いた様子で、口をあけて固まっていた。

「あの、牧野つくしさん……ですよね?」

気にせず手を洗っていると、恐る恐る声をかけられ、

「はい。そうですけど……?」

この子達に害は無さそうだったので、あたしも戸惑いながらも、正直に応えた。

「「きゃあー! やっぱり!!」」

「……なんで、あたしの名前?」

「何でって……、何でもなにもないですよ!!」

「!!??」


ーーーー 何が!!??


「あのっ、私達、つくしさんに絶対投票しますから!!」

「「頑張ってください!」」

「はぁ……?」

「 「あ、握手してもいいですかっ!?」」

「ど、どうぞ……。」

訳がわからないまま、差し出した手を二人がかりで ぎゅむうううう~~~っ。と掴まれた。

「あいたたたた。」

新手の嫌がらせか!?

「やぁ~ん! つくしさんと握手しちゃった♪」

「皆に自慢しよっ♪」


ーーーー ヤバイ。

そうこうしてる間に、着信音がさっきから、鳴りまくってる。


「あの……、急いでいるので、もういいですか?」

「あ、ごめんなさい!」

「引き留めちゃってすいません!」

「あ。い、いいのいいの。じゃあね。」

そうして、つくしは慌ただしくトイレを出て行った。




なんか……思ったよりもいい子達だったな。


でも、


『あれは確かにヤバかった!!』


結局、何がヤバかったんだろ?
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