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ライオン #29

( ……んっ?)


レストランに戻ると、他の席のお客さん皆落ち着きがなくソワソワしていて、少し違和感を感じながらも自分の席まで戻った。

すると、その中でも明らかに一番ソワソワしている女の子、約一名。


「あーーーっ!! 先輩いたっ!」

「ごめんごめん。」

「なにやってたんですか? 待ってたんですよ、もうっ。」

「……あれ? F4と滋さんは?」

「先輩が遅いから先に行っちゃいましたよ。」

「あ、そうなんだ……。」


ーーーー 皆、どこに行ったんだろう?


あたしがそう思っていると、桜子が急かすように座ったばかりのあたしの腕を掴んで立ち上がらせた。


「とにかく早く来てください! 始まっちゃいますよ!」

「…………なにが?」

「第一次審査です!」

「だから何のっ!?」

「 クイーン オブ ジャパン に決まってるじゃないですか!!」

「……ええっ!?」

「先輩も出るんでしょう!? 早く行かないと……!」


あたしの腕を掴んだまま、引き摺る勢いでズンズン歩く桜子。

……いやいやいや、なんか色々おかしくないか????


「さっ、桜子、ちょっと待って?」

「?」

「なんであたしが出場すること、あんたが知ってるのよ?」

「……え? 先輩、知らないんですか?」

「だって、先輩は道明寺会長とスミスに見初められたっていう噂ですよ。」

「スミス会長と……道明寺会長って??」

「やだ、先輩! まさか自分の会社の会長知らないなんて言いませんよねっ!?」

「………あははっ?」

「あ……、あははじゃありませんよ全くもうっ!!」

今度は、驚きと呆れがあいまったような顔になって、ようやく桜子の足が止まった。


「だだだだ、だって、会ったことないもん。」

「会ったことないのに推薦状貰えるわけないでしょうがっ!!」

「…………誰かと間違えたんだよ、きっと。」

「あのねぇ、先輩……。」


ーーーー ほんっとに、トンチンカンな人だわ。

世界に名だたるアレックス社のスミス会長と、道明寺財閥の会長が推薦人を間違えるわけないじゃないですか。


「まあ、取り合えず行きましょう?」

「で、でもっ! 大会は3週間後じゃなかった??」

「本選はね。」

「じゃ、今からするのって……。」

「パーティを兼ねた予選ですよ。今からドレスに着替えて、ドレスのデザインやスタイルやらの細かい審査があります。」

「……え? じゃじゃ、じゃあさ、今日ダメだったら優勝は出来ないって事??」

「勿論です。」

「むっ、無理無理無理!! そんな急に言われたって!」

「…………。」


焦ったつくしは顔を左右にぶんぶんっと振るい、拒否反応を起こすが、桜子の冷ややかな目線と出逢い、振動もおさまってしまう。


「じゃあ、日本に居るときに言われてたら、素直に香港に来ましたか?」

「うっ、それはもちろん……。」


ーーーーううん、絶対来なかった。


「……はぁ。 道明寺さんの言った通りですね。」

「あ! そうよアイツッ! なんで黙ってたのよっ!」

「『牧野に準備させると直ぐに逃げ出す。』」

「!!」

「そう、言ってましたよ?」


桜子はにっこり笑ってるけど、その笑顔が逆にコワイ。

まさか、こんなことになるなんて誰が予想出来たというのだ。


「さ、時間がありませんのでさっさと着替えて下さいね。」


桜子はそういうと、つくしの控え室用に用意されたホテルの一室に用意に促される。


「き、着替えるって、あたし何も用意してな……!」

「大丈夫です。 ドレスは道明寺さんが用意してくださっていますから。」

「あ、ちなみにアクセサリーやバッグもたくさん用意されていますので、ドレスにあわせてお好きなものをどうぞ?」


「……………………ありがとう。」



桜子はつくしを部屋まで案内すると、自分も着替えをしてくると言って去っていった。

玄関に向いていた身体を振り返り、予め用意されていたのであろう衣装達に目をやると、きらびやかな宝石が付いたアクセサリーが本当に沢山あり、思わずつくしは感嘆の声をあげた。



「すっご……。」


ほんっと、至れり尽くせりだ。

恐るべし。金持ちパワー。


「さて、と。 何を着ようかな……。」


つくしは用意されていた数十着のドレスの中から、本日の戦闘服を選び出す。



ーーーー うぅ~ん。


いっぱいありすぎて、どれがいいかさっぱりだな……。

ドレスの種類も、Aライン、プリンセスライン、マーメイドライン、ミニ、あとは……なんだったっけ?

まあ、とにかくいっぱい。

きっとこの一着で、今日の命運が別れる。

今日のあたしに似合うのは、どの子かな?



******



「親父っ!?」

「おお、司か。 どうしたんだ? 
大きな声を出して。」

「どうしたもこうしたもねーよ! 何、ちゃちな暴漢に襲われてんだよ!?」

「ああ……、知ってたのか?」

「あのなぁ……。俺どころか、香港中に知れ渡ってるぜ!」

「……ん? 何でだ?」

「ニュースに垂れ流しだ、あほ。」

「親に向かってアホとはなんだ、アホとは。」

「あほじゃねーか。」

「……それより司、つくしちゃんはどこだ? 居るんだろう?」

「つっ、つくっ……!?」

「居ないのか? つくしちゃん。」

「つくしちゃんつくしちゃんって、なに言ってんだ!! 会ったこともねえ癖によ!」

「司が会わせてくれないだけだろう? てゆーか、もう会ったし。」

「はっ?」

「いやー、面白い子だねえ。 彼女、とっても楽しそうにコピー取ってたよ。」

「!!??」

どういうことだ??

「牧野にいつ会ったんだよ!?」

「ん~ 割りと最近かな。 お前がこっち来てすぐ位。」

「…………まさか、牧野に余計な事言ってねえよな?」

「余計な事って?」

「いや……、何でもねえ。」

「?」

「牧野はまだ準備中だ。今、着替
えてる。 終わったら、会わせてやるよ。」

「おっ、どうしたんだ? いきなり。」

「俺に隠れてコソコソ会われるよか、ずっと良いからな。」

「はははっ。司も学習してるんだ~。」

「うるせえよ!」


そこに、会長の新しい秘書 西田 が現れた。


「会長、急がれませんと……」

「あ、そろそろだってさ。」

「あ? 西田お前、相変わらずせっかちな奴だな。」

「いいえ。これが普通というものでございます。」

「ケッ、」

「じゃあ司、後でね。」

「ああ、わかった。」

「会場で、また会おう。」


束 は 西田 と共に、一足先に会場に向かった。



******



「西田、今回の候補者のリストは?」

「こちらにございます。」

「ありがとう。」


西田から受け取ったリストを受けとると、束は苦笑を漏らした。


「やっぱり、こうなっちゃうよねえ……。」           

「?」  

「いやさ、スミスと言ってたんだよ。 今回はこの二人の一騎討ちだろうって。」 

「今から、楽しみですね。」 

「いや、それはそうなんだけどね。……つくしちゃん、耐えきれると思う?」

「…………。」


束 にそう問われた 西田 は時が止まったように固まって、暫く考えていた。

それは、大会に出場することへのプレッシャーのことを言っているのだろうか? それともまた別の……?


「……牧野様なら、きっと大丈夫かと。」

「彼女に、任せるしかない?」

「…………ですね。」

「だよねえ~。」

「とりあえずの今日の目標は、人気投票で一位になって貰うことだな。」

「はい。 私も、ご協力させていただきます。」

そう言うと、西田は微笑んで束にペコリと頭を下げた。



******



「似合ってんのかな、コレ……。」


着替えを終えたつくしは、ドレスの裾を親指と人指し指で摘まんだ。

一人首を捻って考えていると、入り口の方から コン、コン とノックがして、桜子か誰かが戻ってきたのかと思い、急いで扉を開けた。


ガチャッ


「……桜子?」


おそるおそる、ほんの少し開けた扉から覗き込む。

しかし、つくしのそんな配慮もものともせずに物凄い力でドアは開けられ、その人物の姿は現れた。


「!!」


ーーーー なんでっ!!?


「貴方が、ここに……?」


驚きの余り、それだけしか出て来なかった。


「お話があるの。 入れて……下さらない?」

「い、嫌です。」

「ほんの少しだけでいいの。」

「何よ、いきなり……。」

「お願いしますっ!!」


女はつくしに深く深く頭を下げた。


「……だって、あなたはアタシの事が嫌いなんでしょう?」


いつもと違って殊勝な彼女に調子が狂う。

でも、


『駅のホームなんかであなたも人生の最期を飾るのなんて嫌よね?』


この女は確かにこう言った。


未遂とはいえ、無関係の人も巻き込んでしまった。

殺されかけた相手に誰がおいそれと部屋に上がらせられるのか。

あたしだって、そんなに馬鹿じゃない。

ここで部屋に上げてしまったら、今度は何をされるか分かったもんじゃないわ……





つくしが意思を固めた時、後ろの方からあずみとは違う声が聞こえた。



「つくしちゃん……私からも、お願いします。」


「椿さん……!?」
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