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ライオン #34

「おい、牧野っ!? 居るんなら返事しろよっ!」


突然真っ暗になった会場では、居なくなったつくしを見つけ出そうと、司が声を張り上げていた。
 

「司、だから落ち着けって!」

「この暗がりで探すのは無謀だ! どうせただの停電だろうから直ぐに回復すんだろ。大人しくしとけ!」

「くっそ……!!」

親友二人に咎められ、確かに今 無駄に歩き廻っても、とてもじゃないが見つけられそうにもない。

司は逸る気持ちを押し殺し、奥歯をギリギリと鳴らしながら電気が回復するまでジッと耐えた。


「牧野……っ!」


司が今一番気がかりなのは、つくしが今自分の父親と居ること。 

なんせ、あの男は善人面をしておきながら、あのお袋以上に幾つもの会社を潰してきた、とんでもない人物なのだ。

実際、NYに行くまで18年間 俺は何も知らなかった。

年に数回会うか会わないかの、冷え切った親子関係。

関心がなかったとも言えるが、会うたびヘラヘラ笑っているこの男の正体を誰が見破れるのだろうか?

あの忌まわしい……思い出したくもない記憶喪失事件の引き金だって、元を辿れば、親父が俺を刺した犯人の会社を無理に潰したからだ。

当時、てっきりババアのせいだと思い込んでた俺は、事実を知らされた時 それなりにショックだった。

いつもヘラヘラ笑っていた《普通》だと思っていた親父が、お袋以上に冷徹な人間だったなんて。

そう思えば、見るからに《鉄の女》なお袋はまだマシだったんだなとも思えてきたから、不思議なもんだ。

とにかく、なに考えてんのかわかりゃしねえ親父の傍に牧野を置いておけねえ。

親父自身が牧野に何かするとは思えねーが、牧野が巻き添えをくらう可能性がある。 

一刻も早く、牧野を取り戻さなければ。



******



「さあ、此処で少し待ってて。」

「…………。」


階段を上り終えてすぐ、男の手がつくしから離れた。



おじさんは、此処に何か用があるのだろう。

ガタゴトと何かを探す素振りを見せると、あたしに再度振り返った。


「危ないからね、動いちゃ駄目だよ。」

「……わかりました。」


念を押すおじさんにあたしはコクンと頷く。


「行ってくるね。」

「えっ……。」


ーーーー行ってくる?


って、ドコに?

しかし、あたしの疑念など、直ぐに打ち砕かれる事となる。




パァッ!!




「わっ、まぶし……!」



突然つけられたライト。

暗闇に慣れてしまっていた目は対応しきれなくて、瞼を反射的に閉じる。

すると、代わりに研ぎ澄まされた聴覚が、今何が起こっているのかをあたしに伝える。


「えー、皆さん。お騒がせして大変申し訳ありません。」


「……っ!?」


マイク越しのおじさんの声が耳に飛び込んできた。

ライトがついたのと、おじさんの登場で、更にざわめき出した会場のお客さん達の誰かが、何故か悲鳴を上げていた。


ーーーーこれは、おじさんの声?だよね?


「実はですね、こんな事をしましたのも……僕の息子の将来の伴侶をここでご紹介させて頂きたいと思いまして。」


ザワッ!!


会場の空気が一変した。


ーーーーああ、そう言えば、息子の彼女を紹介して貰うとか何とか言ってた気がする……。 



段々光に慣れてきたつくしは、徐々に目を開けていく。

するとまもなく、聞き慣れた肉声がつくしまで届いた。


「おいっ、ジジイ!!」

「!」


この声って、まさか……。


「一体何考えてやがる!? 牧野を返せよっ!!」


ーーーー間違いなく道明寺の声だっ!

つくしは思わず舞台袖で司の姿を確認する。

司は今にも血管が切れてしまいそうなほど青筋を幾つも立てており、それを見たつくしは青ざめた。


「道明寺……。」


ああ、やっぱり怒ってる。

だからおじさんに待ってって言ったのに。


しかし、オロオロするばかりのつくしを放って二人の会話は続く。


「ジジイって……、その口の聞き方はないんじゃない?
司。」

男は呆れたような顔で司に不満を漏らした。

「うるせえっ! 人の女かっさらっておいて口の聞き方もなにもねーだろ! 何だったら、誘拐犯って呼んでやるよっ!」



ーーーーわわわわっ、何っ!?


何でいきなり喧嘩してんのこの人達!?


「……とっ、とにかく止めなきゃ!」


二人をとめようと、つくしは舞台上に居る男に駆けて行く。



ーーーーもうッ!

おじさんってば道明寺の人間の癖に、道明寺を怒らせたらどうなるのか知らないの!?

それに道明寺も何考えてんのよっ!

いきなりおじさんに噛みつくなんて……!



ーーーーザワッ!






『あれ?』

『あの女の子、どこかで?』

『やっぱり可愛いな……』



舞台袖から突然現れたつくし。

ステージを見上げる面々は、どこか驚いた顔でつくしに釘付けになった。




「……牧野っ!?」


つくしをようやく見つけた司も思わず声を上げる。

つくしはそれに構わず男の傍に立った。


「……あ。つくしちゃん?」

「おじさん! みんなに迷惑でしょう!?」

「そーなんだよ。 司ってば、酷いんだよ。」

「あ、あいつ……じゃない。道明寺の態度がXLなのはいつもの事で……!」



ーーーーって、あれ?


つかさ……?


この人、今《司》って言った?



「つっ、司って……おじさん?」


なんだか、嫌な予感がする。


「ん?司ならそこに居るだろ?」


おじさんは道明寺に向かって人差し指をさした。


「人に指さすなっ!!」


「おーこわ。 全く、親の顔が見たいもんだよ。」


怒り心頭な道明寺をモノともせず、おじさんはおちゃらけ出した。

この態度に道明寺の怒りは当然、火に油を注ぐことになるわけで……。


「はぁっ!? てめーふざけんなっ!」


「ちょっ、ちょっと道明寺! 落ちつい……!」


「てめーが俺の親だろうがクソ親父ッ!!」




















「……………………………はい?」
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