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ライオン #35

駄目だ、頭の中が混乱してきた。

まずはこの状況を把握しないと……。

えぇっと……、まずこの隣に居る人は、あそこでキレまくってる道明寺曰わく『クソ親父』だそうだ。

つまり、このおじさんは道明寺の『クソ親父』さん。

ってことは、あたしにとってのパパと同じって事で……?


「どっ、……えぇっ!?」


このおじさんがクソ……じゃなくって!!


「ああああのっ!」

「ん?」

「もも、もしかしておじさんって、道明寺のお父さん?……だったりします?」

「あ。ついにバレちゃったか。」

「う、嘘ぉっ!?」

「あはははっ! 良いリアクションだ!」


おじさん……いや、道明寺のお父さんは、あたしがなかなか気づかないからどうしようかと思ったと暢気に笑い出した。

ーーーーって言うか、この軽いノリのおじさんが本当に道明寺のお父さんなの!?

想像と全然違うんですけどっっ!!


「……信じられない? まぁ、子供達は楓にばかり似て、僕から受け継いだのはこの黒髪くらいだからね。 無理もないかな?」

「い、いえ、そんな事はないんですけど……。」


やっとおじさんの正体を知ったつくしは、驚きを隠さずに驚いた。

対する、『クソ親父』こと 道明寺 束 は満面の笑みでつくしを見ている。


「ごめんね、騙すつもりはなかったんだけどあまりにも気づかないから、新鮮で面白くってさ。」

「……おもしろいぃ??」


この人は一体何を考えているんだ?


「じゃあ……、改めまして。あそこに居る馬鹿息子の父です。」

束はにっこりと微笑んで、つくしに握手を求めた。

「…………っ!!/////」


ーーーーは、反則だっ!!


おじさんの笑った顔が道明寺の優しい笑顔にそっくりで、思いがけず胸が高鳴ってしまった。

どうしてあたしは今の今まで、何も気づかなかったんだろう?

自分にあまり似なかったとおじさんは悲しそうに言うけれど、そんなことはない。

笑った顔や体格。

道明寺ほどでは無いけれど、おじさんの緩いパーマはお風呂上がりの道明寺の黒髪そのもの。


……うん。


間違いなく、この人は道明寺のお父さんだ。



そう確信したつくしは、道明寺父の差し出されたままだった手を慌てて握り返した。


「はっ、はじめまして! 牧野つくしですっ!」


慌てて深くお辞儀するあたしを、何故かおじさんはくつくつと笑いながら応えた。

「つくしちゃん。 ずっと、君に会いたかった。」

「……へっ?」

ーーーーなんで?

「おいっ! よりによって息子の婚約者を口説くんじゃねえっ!!」


ザワッ!!!!


「「「「 婚約者!!?? 」」」」


放置されたままの観客がどよめいた。


「牧野! そいつから離れろっ! 手なんか握る必要ねえぞっ!」

「……道明寺?」

「も~。さっきからうるさいなぁ司は。」

「牧野いいか!? そこを動くなよ!」

「え?いや何が?って、……ちょっとぉおおっ!?」




道明寺が、あたしに向かって一直線に走ってくる。

ものすごいスピードで人の波を掻き分けて、


「どけっ!」


時々、道明寺がぶつかったのだろう。

あちこちから悲鳴が上がり、あっという間にあたしとおじさんが居るステージ目前まで来たかと思ったら……



ーーーーダンッッ!!!!



「ぎゃっ! 道明寺アンタちょっと!!」

「ヒュー♪ 跳ぶねえー。」


目の前にあったテーブルを踏み台にして、信じられないくらいのジャンプ力でステージ上に上がって来てしまった。



「牧野を離せ!」


バッ!


「……うわあぁぁあっ!?」


おじさんと握手していた手をバッサリと切って、あたしは奪われるようにして道明寺の胸に押し付けられた。


「……あ、取られた。」

「とられただぁ!?」

「もともとコイツは俺のだ!! この大会が終わったら結婚も決まってる!!」


ザワッ!


「………ふがっ!?」


ーーーー何の話でしょうか!?


はじめて聞く事実に道明寺を問い詰めたくなったけれど、強く押し付けられた胸の中では息をするのも精一杯で、顔を見上げるのが精一杯だった。


「……え? やっと結婚すんの?」


ザワワッ!!!!


「はっ? 前から言ってただろうが!?」

「そうだっけ? ごめんごめん。」

「なんっつー いい加減な親なんだ……。」


ガクリと道明寺がうなだれ、幾分力が抜けた腕の中からやっとの思いで抜け出した。


「道明寺っ! いきなり何を言い出すのよっ!」

「……あ? お前まで何言ってんだ?」

道明寺の額がピキッと音を立てて、あたしは思わず怯みそうになる。

「だっ、だって! プロポーズされてないよね!?」

「? してるだろ、ほぼ毎晩。」

「ま、毎晩?? って……、あんたまさか……!?」


《あの時》

の事を言ってたりするのっ!?

いや、確かにコイツは愛してるだの一生一緒に居ようだの、こっちが恥ずかしくなる位の睦言はいっぱい言ってたけどもっ!!


「……ベッドの中でプロポーズしたの?司。」

「あぁ。 俺が愛してるっつったら、コイツも俺が好きだって言ってよく泣いてるし……」

「っぎゃああああ~~~!!!!」

「……んだよ、うるせえ奴だな。」


いきなり暴露された情事の風景に顔から火が噴き出そうになる。

そんなやりとりを呆れた顔で眺めていた束が口を挟んだ。


「……馬鹿だなぁ、司は。」

「何がだよ?」

「ベッドの中で言ったんじゃ、つくしちゃんだって信じられなくて当たり前。 そういうのは、素面の時に言わなきゃ。」

「ぐっ。 そ、それもそうか……。」

「じゃ改めて、つくしちゃんにプロポーズしたら?♪♪」

「お、おうっ! 言われなくてもな!」

「……牧野!」

「はいっ?」


くるりとあたしに向き直った道明寺。



「俺は、死ぬほどお前に惚れてる。」

「!!」

「俺にはお前しかいねえし、お前にも俺しかいねえだろ? だから結婚するぞ。」

「するぞって、アンタね……。」

「ほら、手ぇだせ。」

「あっ……!?」


道明寺の中ではすでに決定事項らしく、いつの間に用意していたのか、ポケットから指輪を取り出すとさっさとあたしの左手をとって薬指に嵌めてしまった。



「ん。」



満足げな道明寺の唇が一瞬 手の甲に触れた。



「……やっぱ、似合う。」



慈愛に満ちた瞳で、あたしの薬指に煌めくリングを道明寺が愛おしそうに撫でた。


「お前のモンだ。」


とびきりの優しい笑顔を、あたしだけに向けて。







「……っく。」


ーーーーきっと、一生に一度の体験。

なのに、どこの世界に勝手にエンゲージリングを嵌める奴がいるのよ。

あたしの意見も少しは聞きなさいっての。


「…………おい?」


本当に、バカなんだから。


「まきっ……?」


なのに、目の前が滲んでよく見えないのはなんでだろう。



「~~~っ!!」



胸がいっぱいで、言葉が出せない。


濡れた頬が、冷たいはずなのに暖かい。


気づけばあたしは、道明寺の暖かい胸に包まれていた。











「ど、みょうじ……?」

「……ん?」

「いつも、ありがとう。」

「!!」

「これも……凄い、嬉しい。」


もぞもぞと左手を道明寺の目の前に翳すと、照れくさそうな男のぶっきらぼうな返事が返ってきた。


「……あたりめーだろ?」


そしてその直後、《うおおおー》っという複数の大きな声に包まれた。







「あの~。盛り上がってる所悪いんだけど……。」

「!??」


ーーーーひぇ~~~っ! おっ、おじさんっ!!


申し訳なさそうに喋るおじさんに、我にかえったあたしは慌てて道明寺から飛び退いた。


「ここのお客さん、説明して欲しそうに皆ソワソワしてるよ?」


ーーーーしまった!

また忘れてたっ!!

てゆうか、誰のせいだ誰のッッ!!


「も~この際さ。中までは入って来てないけど、記者もホテルの入り口に集まってる事だし、そのまま記者会見開いちゃえば?」

「何言ってんだ! 牧野を見世物に出来る訳ねえだろ!?」

「え~? こんな大勢の前で公開プロポーズしときながら今更言う?」

「うっ……。」


確かに、それもそうだ。


「ジジイ、謀りやがったな……?」

「ん? 何が?」

「こぉんのクソジジイ!! さっさと隠居しろっ!」

「司がつくしちゃんを独り占めしようとするのが悪い♪」

「う、うるせえっ!!」



真っ赤な顔をして怒ってる道明寺。

てゆうかおじさんは、完っ全に道明寺で遊んでるよね……。

今日はまた、道明寺家の新たな一面を見れた気がした。
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