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ライオン #36

「全く~記者会見やれば良かったのにさ~。」

「さっきからしつけーんだよ! 誰がやるかっっ!!」

「ま、まぁまぁ……。」


ーーーーあれから、結局。

会場にいた皆さんにお騒がせしましたの挨拶もそこそこに、慌ただしくステージを降りたあたしたち。

そして、そのまま逃げるように会場を後にし、お決まりのリムジンに乗り込んだ。

そういえば、F3と滋さんと桜子になにも言わないで出てきちゃったけどよかったのかな……。


「でもさ、つくしちゃんはアレで良かったの?」

ーーーー??

「何がですか?」

「ほら、アレ。」

つくしの反対側に座る束が、窓の外にある何かを人差し指で示した。

つくしと司はそれに釣られて窓の外を伺うと……。

「ぎゃっ!!」

「……うぉ。」

窓の外にあったのは、巨大スクリーンに映し出された数十分前のさっきの光景。

つまり、あたしが道明寺に公衆の面前でプロポーズされ、勝手に指輪を嵌めた所から抱きしめるところまでエンドレスで流されていた。

「なっ、なんであんなところにっ!?」

「う~ん? 記者は入れさせないようにしたはずなんだけどなあ……。 何でだろ?」

「まっ、これも良い経験だよ☆」

若いっていいね~なんて、おじさんは何処までもマイペースで、道明寺に至っては、最初はボーゼンとしていたのにおじさんに何か耳打ちされてからは何故か嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。

そんな呑気な道明寺にちょっとイラッとしたりもしたけど、おじさんの手前突っかかるわけもいかず、とりあえずその場はじっと堪えた。

「なぁ、親父……。」

「どうした?」

「俺さ、こいつと結婚すっから。」

「…………。」

「…………。」

おじさんの目の前でプロポーズしておきながら、今更、道明寺は何を言い出すんだろうか。

面食らってしまったあたしは言葉を失った。

「……そんなの、とっくに知ってるけど。」

おじさんもキョトンとした顔をして、道明寺を見つめていた。

「なに?急に。」

「や、一応……な。」

「こんなでも、一応俺の親だからよ。」

そう言った道明寺の表現は至って真面目で。

ふざけているわけでも、いつものように偉そうにしているわけでもなく、ただただ真摯におじさんを見つめていた。

「……僕が父親だって、今更知ったの?」

「まぁな。」

「……ふふっ。」

「んだよ、気持ちわりぃ。」

「やっと僕も、親父らしくなれたかなと思って。」

「は? なんだよそれ。」

「いや……、こっちの話。」

「意味わかんねー。」

「…………。」


それまで黙って聞いていたあたしは、ずっと二人の顔を眺めていた。

どうも腑に落ちないような道明寺とは対照的に、おじさんは満ち足りた表情をしていた。

ーーーーたぶん、おじさんは。

お金持ちの宿命か、忙しさのあまり親としての役目を果たせなかったこれまでを悔やんでいたのかもしれない。

うちのパパはロクでもない親かもしれないけど、愛情だけはたっぷり注いでくれた。

道明寺のお父さんは、幼い子供に愛を教えてあげられなかったかもしれないけど、決して、愛していないわけじゃなかった。でも、


白なら白。

黒なら黒。


いつだってはっきりした愛情や感情を求めている道明寺。

特に、幼かった頃の道明寺には、それが少し酷だったんだろう。



「!?」

「 お前まで、なに笑ってんだよ?」

「べっつにー?」


でも、不器用なカタチだって立派な愛だよね。



******


ーーーープルルル……。


その折、束の携帯に知らせのメールが一本入り、即座に確認をした。


「つくしちゃん?」

「はい。」

「今、一次審査の結果が届いたんだけど……。」

「!!」

「合格だって。」

「……っっしゃあ!!」

「一次予選突破、おめでとう。」

「牧野、やったな!!」

「よかったね。」

「あ、はい……。」


二人から祝福されて、嬉しいはずなのに実感がまるでなかった。

てゆうか正直、今の今まで大会のことなんて頭から消え去っていて、嬉しいというより一次予選突破ということは次もあるわけで……、次第に不安が拡がって来る。

二人が喜んでくれるのは嬉しいけど、"どうしよう"が強くなってしまって、とても浮かれて居られる状態ではなくなった。

そして、そんなことばかり考えていたあたしはとても喜んでいる様には見えなかったのだろう。異変に気付いた道明寺が、眉間に皺をよせて覗き込んだ。

「なんだお前、嬉しくねーのかよ?」

「う、嬉しいよ。 嬉しいけど……。」

「けど?」

「なんか、不安になって来ちゃって……。」

「…………。」

「…………。」


道明寺はそのまま目線を落としてしまい、あたしと道明寺の間に少しの沈黙が流れる。

それを見ていたおじさんが気を使ってくれたのか、優しい声であたしに尋ねてきた。


「怖い? つくしちゃん。」

「…………。」

「正直に言っていいよ?」

「……はい、少し。」


ーーーーああ、情けない。

やる前から怖気づくなんて、牧野つくしらしくない。

道明寺も、きっと呆れてるんだろうな……。


「牧野。」

「……っ!」

ビクリとつくしの肩が跳ねた。

「お前は昔っから、自分の事を全然わかっちゃいねえな。」

「!?」

「な、なによ!? それ!」

「大丈夫だ。」

「……えっ?」

てっきり、馬鹿にされると思ってたのに。

道明寺から出てきたのは、意外にも冷静な声だった。

「大丈夫って、何が……。」

「俺に任せろ。」

「?」
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