fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

夢か現か。前編

朝。

春を感じさせる暖かな木漏れ日が、もう少し寝ていたい俺を 起こしにやってくる。

瞳を閉じていても否応なく 眩しい と感じさせるそれが忌々しい。

ーーーー頼むから、もう少し寝かせてくれ。

昨日も明け方まで仕事で帰って来れなかったんだよ……。

暫くベッドに突っ伏したままでいると、いつまでも起きて来ない俺にタマか姉ちゃんが痺れを切らしたのだろう。ドカドカという品の無い足音が俺の部屋の近くまでやって来た。


" バターンッ!!"


「…………。」


部屋をノックもせずに入って来るっつーことは、姉貴か? またウルセーのがやって来ちまった。








「…………?」


しかし、いつまで経っても相手は無反応。

すぐ傍に人の気配は感じるのに、何も言って来ねえ。

タマや姉貴ならこんなことはあり得ない。……もしかして、やべえ奴でも入ってきたのか?

少しばかり身の危険を感じ、無断で入ってきた無礼な野郎を確認しようとしたが、思った以上に体がだるくて 思うように動かない。

ーーーーマジで、やべぇかも。

どうしたものかと考えていた時、やっと口を開いた野郎の声は 意外な人物だった。


「……道明寺?」


ーーーー!?


「……どう?」

この声って……。

「もうっ、いくらアンタが底なしの体力バカでも 無茶しないでよね!」



「…………。」


その後も、なにやらうだうだと文句をたれていた。

こいつが何に腹を立てているのか 俺にはさっぱりわからなかったが、来るなり人をバカバカと 理不尽とも言える対応をされても ちっとも腹立たしく感じない。


この俺様が、何を言われても 許してしまいそうになる唯一の声の持ち主。





…………間違いない、牧野の声だ。





あぁ そうか。

ユメ 見てんのか、俺は。

「牧野……。」

薄っすらと目を開けて横目で見ると、確かに牧野の姿がそこにあった。

「っ!?」

思ったよりも顔と顔の距離が近くまで来ていて、一瞬 ドキッとしてしまう。

「まだ、熱 下がらないね。」

額に触れる 冷え性な牧野の手のひらが気持ちいい。

もっと触れて居たくて、その上から自分の手を重ねた。


ーーーー何で、牧野がここに居るんだろう。



ここは NYの道明寺邸。



まだ 約束の4年は経ってねえし、第一 いつもバイトと勉強に追われてるアイツがNYにいきなり来るなんてあり得ない。

「牧野……だよな?」

あり得ないはずのに、右手から伝わるこの体温はなんなんだろう。

「? 当たり前じゃない。」

きょとんとした表情が、リアルさを増してゆく。

「……だよな。」






「……変な道明寺。」


クスリと可笑しそうに、牧野が笑った。

幾度となく 夢でみた光景。

牧野が 俺のすぐ傍で笑っていて、いつでも触れ合える距離に居る。

これもまた 幸せなユメなのか?

儚く、今にも牧野が消えてしまいそうで。逃がさねえ様に、俺より一回り小せえ手のひらを ぎゅっと握った。

朦朧とした頭では まともに考えることも出来ず、もう ユメでもなんでもいいから、ここにいる牧野に 一秒でも長く触れていたかった。



「ちょっと、起きれる?」

「…………ん。」


言われて、ゴロンと仰向けになったまではいいが 上半身を起こす事すら満足に出来なくて。牧野に支えて貰いながらやっと起き上がると、牧野が作って持って来たのであろうボンビー食が トレーの上に乗っていた。


「お粥作ったから。 食べられる分だけで良いから、食べてね?」

「…………サンキュ。」









「はい、どうぞ。」

「……なんのつもりだ?」

しかし、レンゲを持ったまま離そうとしない牧野。

あまりにも離さないもんだから、お前が食うのかよと聞いたら、当たり前みたいな顔してのたまった。

「見たらわかるでしょ? 食べさせてあげるって言ってんの。」

「……はぁ? 誰が。」

「~~あたしが! アンタに!!」

「…………へ?」


思わず頭の中で、" 牧野に食べさせて貰う俺 " の絵面を想像してしまった。


それって……、


ギリギリセーフか?それともアウト??


いや、アウトじゃね?


「もうっ! 早くしないと冷めちゃうじゃん!」

「うっ……。」


牧野の剣幕に押され しぶしぶ口を開けて待っていると、牧野がそれを口の中まで運んできた。

「ほら、あーん。」

「…………。」

ひとくちひとくち ゆっくり、丁寧に運んで来ては、またそれを繰り返す。

その間 いつになく俺たちは終始無言。

牧野が何を考えているのかは分からなかったが、俺はというと、一生懸命粥を掬っては俺に食べさている牧野が可愛いくて、見惚れていた。


ーーーー何か ヘンだ。


何にも味がしねえボンビー食が、こんなに美味く感じるなんて。


差し出されるまま食べ進めていると、気づいた時には容器はすっかり空になっていて、それに気づいた牧野も 嬉しそうに可愛い顔して笑った。


「あっ、やった! 完食っ!!」

「……さんきゅ。 美味かった。」

「……わ。すっごい!! 今、美味しいって言った!?」

「あぁ。美味かった。」

「すごいすごい! これで2回目!!」

「……はしゃぎ過ぎだろ。」


普段 どんなプレゼントをしたってなかなか素直に喜ばねぇのに、たったこれだけの事で ガッツポーズしながらが喜んでいる牧野。

つくづく 変な女だと思う。

変過ぎて、そのストレートな感情表現が余計に可愛く感じてしまう。

俺は、そんな牧野を引き寄せて 腕の中に閉じ込めてしまおうと思った。

だが牧野は、俺ののばした腕をするりとすり抜けていってしまう。

「っと、こんな事してる場合じゃなかった!」

「……どこ行くんだよ?」

「ん?」

不機嫌な表情のまま尋ねても、牧野は大して気にも止めずに " ぴょんっ" と、ベッドから降りた。

出口までスタスタと歩いて行き、もうドアノブに手を掛けている。

「おい! 待て、お前はここに居ろ。」

「? だってお薬、もらって来ないと。」

「……んなもん、要らねえよ。」

「あっ、ちょっと!?」

ドアノブに掛けた手を上から絡めとり、空いたもう片方の腕で どこにも行かせないよう グッと腰を引き寄せる。

「行くなよ……。」

耳元で囁くと、一瞬 牧野がビクリと震えた気がした。

「……道明寺?」

恐る恐る振り向いた牧野。

どこか怯えているような顔をして、俺を見上げている。

「いいから、ここに居ろ。」

「でも、ちゃんとお薬飲まなきゃ治らないよ?」

「んじゃ、お前が治して。」

「……えっ?」



つづく。
スポンサーサイト



2 comments

非公開コメント

0 trackbacks

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)