fc2ブログ
QLOOKアクセス解析

ライオン #38

「つくしちゃん、明日は日本に 司と一緒に戻るのよね?」

「あ、はい。」

そもそも、香港に来たのは道明寺のパーティに同伴する為。

予想外の事も起こったけど、それももう終わったので、明日は帰国日となっていた。

「じゃ、今日は疲れたでしょうし、ここに泊まってゆっくりしていってね。」

「と、泊まる??」

「あら、ホテルとってあるの?」

「え、えっと……?」

言葉に詰まったつくしは、司の言葉を思い返した。


ーーーー アイツ、何か言ってたっけ??


「部屋はいらねーよ。」

「道明寺っ!」

つくしが振り返ったすぐ後ろには、長身の男が立っていた。

「牧野の部屋は俺がとってあっからな。」

「……司。アンタまさか、仕事中もいつもそうやって つくしちゃんを振り回してるんじゃあないでしょうね??」

今からつくしと遊ぶ気満々だった椿は、つくしを取り返しに来た司を見るなり、鋭い眼光で睨みつけた。

「は? んなワケあるか。」

「牧野、帰るぞ。」

しかし 司はどこ吹く風。つくしの手を取ると、椿に背中を向けて歩き出した。

「それに、」

「?」

「……もう、用は済んだみてーだしな。」

一歩先を行く司が 一瞬つくしの顔を確認すると、ぼそりとそう呟いた。





マンションの中央出入り口を出た所で、待ち構えていた車に 道明寺は乗り込もうとしている。

ずんずん歩いて行く道明寺の腕を引き止めて、あたしはさっきから気になっていた事を 思い切って道明寺に尋ねてみた。


「あんたさ、もしかして魔女に頼んでくれたの!?」


さっきの 魔女が言ってくれた言葉。

確かに かなり嬉しくはあったけど、昔のトラウマか、時間が経つとアレは何か裏があるんじゃないかと思えてきてしまって……。


「あ? なんの話しだよ?」


だけど、あたしに振り返った道明寺は 訳がわからないという顔をしていた。


良かった。


やっぱり、嘘じゃないんだ。








「ううんっ、なんでもないっ!」

「???」

真顔で迫って来たと思えば、いきなり機嫌が良くなったあたしに道明寺は不思議がっている。

「……俺は未だに、お前が良くわかんねえ。」

「ま、いいじゃん!ねっ、それより 今度は何処に行くのっ?」

乗り込んだリムジンが 行き先も聞かずに走り出しているという事は、また何処かに連れて行かれるんだろう。

そしたら道明寺はニヤっと笑って、「いつもの。」と口パクで伝えた。




******



「香港最後の夜だからな。 パーッと派手に行こうぜっ!!」

乾杯の音頭とともに、グラスが控えめにぶつかった音が鳴った。

「……本っ当にアンタ達は、お祭り野郎よね。」

何かとこうして集まる度に、騒がなきゃ気が済まないらしい。

「まぁな。 人間、放っときゃそのうち勝手に死ぬんだよ。だったら パーッと派手にやったほうが楽しいだろ?」

なんて、自分達が正解だと言わんばかりだ。

ーーーー 派手にも、限度ってもんがあんでしょうが。

収容人数300名。香港の百万ドルの夜景を一望出来るメープルの最上階エリアを貸し切りにして、たった7名の内輪のパーティ。

ワインのボトルを振りかざしたお祭り野郎(2名)は既に出来上がっており、つくしは そんな2人を冷ややかな目で見つめていた。

「はっはっはっ! 短い人生、楽しまなきゃ損だぜソン!!」

「そうだぜ牧野っ! それこそ お前がよく言う、勿体無いってヤツだ!!」

「人生の無駄遣い反対!」

「「「はんた~い!!!!」」」

「牧野、ほら食えっ!!」

ポイッ

「もっと身体に脂肪つけろっ、出来たら胸と尻にな!!」

ポイポイポイッ

「~~~ 言われなくても食べるわよ。アンタたち、どーせほとんど食べないんだからっ。」

勝手に盛られた山盛りの牛フィレのステーキに ぐさっとフォークを突き刺した。

「え~? 滋ちゃんは食べてるよお?」

後ろからひょっこり現れた滋さんの取り皿には、唯一 料理がてんこ盛りに乗っており、それを見た桜子が 淑女にあるまじき光景だとか、どうしてそれで太らないのかとやんややんや言っている。

「ほら桜子っ!あんたも滋さんを見習いなさいっ! 食べなさいっ!!」

「先輩や滋さんと一緒にしないで下さいっ!! あたしはすぐ太っちゃうから駄目なんですって!」









「あ~も~。みんなして……。」

2時間後。

日頃の疲れが溜まっていたのか、少し飲んだだけで みんなしてソファーやら床の上やらで眠ってしまった。


「あんたらが一斉に風邪引いたら、日本経済が傾いちゃうじゃん。」


あまり飲んでいなかったあたしが ベッドルームから毛布を運んで みんなに掛けていく。すると、一番最初に寝ていた類が目を覚ました。

「……ん?」

まだまだ眠そうな表情で、ごそごそとソファーに座り直した類。

「あ、ごめんね。起こしちゃった?」

「んーん……。」

大きな欠伸をしながら頭を振る。何年経っても変わらないその仕草に 何故か嬉しくなって、笑みがこぼれた。

「まだ寝てて大丈夫だよ? みんなも寝ちゃったし。みんな、疲れてるんだねえ。」

「……牧野は?」

「や、あたしはあんまり飲まなかったからかな? まだ眠くなくて。」

「そっか。」

「うん。ね、コーヒーでも入れようか?」

「いや、また直ぐに寝るからいいよ。」

それからまた何度か欠伸をした類。

あたしをジッと見ると、何か思い付いたように口を開いた。


「……牧野。」

「ん?」








「結婚おめでとう。」







「え、な、なに? 急に……。」


唐突にそんな事を言われ、動揺したあたしは真っ赤になってしまった。


「よく考えたらさ、俺 牧野に『おめでとう』って言った事なかったなって思って。」

「そ、そうだっけ?」

「うん。」

「う~ん。……でも不思議と、そんな感じはしないなぁ。」

「そう?」

「ふふっ、なんでだろうね?」






ーーーー なんて、本当はわかってる。




言葉には出さなくても、いつもいつも あたし達を傍で見守ってくれていた人だから。

あたしが 辛い時、苦しい時に、何も言わずにただ傍に居て支えてくれた。

道明寺が 約束の4年の歳月を経て 迎えに来てくれた時も、


『良かったね。』

『おめでとう。』


って、ビー玉の瞳が 誰よりも優しく語っていた事。



ちゃんと、知ってるよ。



いつも ありがとう



大好きだよ



花沢 類。













「あっ!」

「?」

「でもあたしまだ、結婚してないや!」

「……じゃ、前払いってコトで。」

「なにそれ(笑)」

スポンサーサイト